退職金制度の見直しとポイント退職金制度について
退職金制度の見直しとポイント退職金制度について
退職金制度設計ポイントとメリット・デメリットについて解説
働く価値観の変化に応じた退職金制度の見直しが必要
これまでの退職金制度とポイント退職金制度について
退職金制度は日本的雇用慣行(終身雇用・年功序列・労働組合)に馴染みやすく、安定的な雇用で長期間一社で勤め上げることを前提にした年功型賃金制度や勤続年数によって積み上がる退職金制度は多くの企業で導入されてきた。世界情勢の変化やテクノロジーの急減な発展により先行きが不透明な経営環境下において年功的に積み上がる賃金制度や退職金制度は時代と不釣り合いの制度であり、退職金制度の廃止を検討する企業も増えてきている。とはいえ、退職金制度の廃止や引き下げは不利益変更(既得権・期待権)として見られることもあり、急に廃止を進めるのは難しい状況である。
そのような中で注目されているのがポイント退職金制度である。ポイント退職金は一年ごとに本人の働きぶりや成果に応じてポイントを付与し、入社から退職までに蓄積した総ポイント数に応じて退職金が決定する仕組みである。旧来型の退職金制度との違いはポイントの設定方法によってはこれまで以上に細かく本人の貢献・成果に応じて退職金が積み上がる制度として構築することができる。本コラムではポイント退職金についての設計方法について説明する。
ポイント退職金制度の設計ポイントとメリット・デメリット
ポイント退職金の設計においては、以下の2点について検討する必要がある。
1.ポイントテーブル
どのような要素でポイントを設定するかは以下の項目を参考にしていただきたい。
役割:等級や役職に基づき付与(係長:10P、課長:20P、部長:40Pなど)
評価:通期評価の結果に基づき付与(C評価:10P、B評価:15P、A評価:20Pなど)
年数:勤続年数に基づき付与(5年目~:5P、20年目~10P)
昇格:昇格時にボーナスとして一律のポイントを付与
どのような要素にポイント数を多く付与するかはポイント退職金のコンセプトと繋がる部分でもあるため、慎重に検討いただきたい。
2.ポイント単価
ポイント退職金制度において1ポイントあたりの単価について設定しておく必要がある。退職金のポイント単価を設定する理由は、ポイント単価だけを修正すれば退職金全体の水準を見直すことが出来るためであり、物価の変動などにあわせて退職金水準を変動させることが可能となる。例えば、1ポイント単価を1,000円から1,050円へ変更すれば、ポイントの積み上げ方を変更せずとも退職金を5%アップする事ができる。労使で定期的にポイント単価について議論する場を作るなどルール化しているケースもある。
ポイント退職金制度の最大のメリットは退職金算定基礎を基本給などの賃金制度と分離できることにある。
例えば、賃金制度は年齢や経験に応じて一定の配慮をするが、退職金は役職や成果(貢献度)に応じて大きく差をつけるということも可能になる。一方で最大のデメリットは社員にとって将来の退職金がどうなっていくのかイメージしづらい点にある。
いくつかのモデルパターンを示しつつ社員にある程度のイメージを持ってもらうことが必要である。
さいごに
前述している通り、働く価値観の変化に応じて退職金制度の考え方についても変わってきているが、退職後の生活を支える財源として考えている社員も多く、安易な退職金制度の見直しはエンゲージメント低下を招く可能性がある。そのため、まずは企業としての人事ポリシー(人や組織に対する考え方)について明文化し、人事制度(評価制度・賃金制度)とのバランスを踏まえた上で最適な退職金制度を設計いただくことを推奨する。
※本コラムは山中が、タナベコンサルティングの経営者・人事部門のためのHR情報サイトにて連載している記事を転載したものです。
【コンサルタント紹介】
株式会社タナベコンサルティング
HRコンサルティング事業部 チーフマネジャー
山中 惠介
総合ファッション企業で人事労務・採用・育成等のHR領域の実務経験後、当社へ入社。現場での実務経験を活かし「採用」「育成」「活躍」「定着」の4つをバランスよく取り入れた戦略人事の構築とクライアントに寄り添うコンサルティングを信条としている。社員が継続的に活躍・成長していく仕組みづくりを中心に、組織における人材育成・人材活躍も支援している。
主な実績
・大手小売業向け人事制度構築コンサルティング
・製造業向け退職金制度再構築コンサルティング
・建設業向け定年延長制度設計コンサルティング
・飲食業向け人事制度構築コンサルティング
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