インセンティブ制度のメリット・デメリットとは?
人事制度におけるインセンティブ制度のメリット・デメリットとは?
インセンティブ制度の見直・導入を検討している企業に対して、メリット・デメリットを解説
月給・賞与・インセンティブのバランスを踏まえた賃金設計が重要である
インセンティブとは
インセンティブ(incentive)とは直訳すると「刺激」、「動機」、「誘因」などを意味する。企業においては社員の成果に応じて支給する報奨制度を意味する場合が多い。インセンティブ制度を導入している業界は個人の成果や貢献度合いが分かりやすい「不動産業」、「小売り・販売業」、「保険業」に多く、特に営業職の場合は個人売上、成約件数、訪問件数、生産性など個人の成果が可視化しやすいため、導入している企業も多く見られる。
また、賞与制度・ボーナスとの違いとして、賞与制度・ボーナスは金銭的な報酬に限るが、インセンティブ制度は金銭的な報酬に限らず「表彰制度」、「報奨旅行」などもインセンティブの一種として捉えることもできる。
インセンティブ制度のメリット・デメリット
1.メリット
(1)社員のモチベーションを上げる即効性が高い
インセンティブ制度の内容によっては短期間での成果をもとに報酬を得ることが出来るため、業績と連動するボーナスよりも、短いスパンで社員のやる気を刺激することが可能となる。
自分が生み出した成果が報酬として還元されることが実感しやすいため、モチベーション向上に繋がりやすい。
(2)やるべきことが明確になる
インセンティブ制度において評価する行動や具体的な指標(成果)を決めるため、目標達成のために取るべき行動が明確になる。
また設定する指標を会社の方針やビジョンと連動させることにより、企業の成長スピードを加速させることも考えられる。
(3)賃金の変動費化
人事評価や勤続年数により毎年一定額昇給するような仕組みだとなかなか減額することが難しいが、インセンティブは成果に応じた一時的な支給であり、固定費ではなく変動費として扱うことができるため、経営リスクの軽減へと繋がる。
2.デメリット
(1)インセンティブを受け取れる社員が一部に偏る
目標達成した社員を明確に評価できる一方で、成果を上げられない社員はインセンティブを受け取ることができないため
評価されなかった社員は仕事への意欲を失い、組織への帰属意識が希薄になる恐れがある。
(2)チームワークを阻害する可能性がある
個々の成果に応じてインセンティブを支給する制度を導入した場合、過度な競争意識が働く可能性があり、業務のノウハウ共有や人材育成の時間を取らず個人最適へと繋がる。
個人だけではなくチームの成果も指標も入れておくことも必要である。
(3)仕事の視野が狭くなる
評価される指標や目先の利益にばかり目が向き、仕事全体を俯瞰する視野を持てなくなる可能性がある。
経営理念やビジョンに基づいた行動や組織最適な行動が取れず、他の社員との連携が希薄になってしまうケースも考えられる。
導入の検討ポイント
インセンティブ制度の導入を検討する際には月給・賞与・インセンティブとのバランスを踏まえた制度設計をしていただきたい。例えば、インセンティブが個人に恒久的に支給されており、支給額が大きい場合には、成果を落とすことの恐れから不正やコンプライアンス違反に繋がることも考えられる。また、人事評価において評価している内容とインセンティブとして評価する内容が同じであり、同じ成果にも関わらず二重で報いているケースも多く見られる。
インセンティブ制度の導入を検討している場合は、今一度賃金制度に対するコンセプトの明文化から進めていただき、適切な評価に基づく支給になっているのか、適切な賃金支給バランスになっているのかを確認した上で制度設計していただきたい。
※本コラムは山中が、タナベコンサルティングの経営者・人事部門のためのHR情報サイトにて連載している記事を転載したものです。
【コンサルタント紹介】
株式会社タナベコンサルティング
HRコンサルティング事業部 チーフマネジャー
山中 惠介
総合ファッション企業で人事労務・採用・育成等のHR領域の実務経験後、当社へ入社。現場での実務経験を活かし「採用」「育成」「活躍」「定着」の4つをバランスよく取り入れた戦略人事の構築とクライアントに寄り添うコンサルティングを信条としている。社員が継続的に活躍・成長していく仕組みづくりを中心に、組織における人材育成・人材活躍も支援している。
主な実績
・大手小売業向け人事制度構築コンサルティング
・製造業向け退職金制度再構築コンサルティング
・建設業向け定年延長制度設計コンサルティング
・飲食業向け人事制度構築コンサルティング
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