大手・中堅企業における助成金の活用術
大手・中堅企業における助成金の活用術
助成金と補助金の違い
助成金(制度)とは、主に厚生労働省が管轄するもので、法人あるいは個人の事業主の「雇用促進」や「職場改善」などの活動を支援するために支給されるもので、返済は不要です。
これに対し、補助金(制度)とは、主に経済産業省や地方自治体が管轄するもので、特定の産業の育成、地方創生など、さまざまな目的を達成するために、「事業拡大」や「設備投資」などの活動を支援すべく支給されるものです。同じく返済は不要です。
本コラムでは、主に助成金について述べていきます。
助成金の目的
助成金(制度)の目的は、労働者の職業の安定にあります。
(1)失業の予防
(2)雇用機会の増大
(3)雇用状態の是正、労働者の能力開発
等の目的で支給されます。会社が負担する雇用保険料が財源です。
全国の会社から徴収した保険料を国が積み立て、
必要な会社が申請をして、要件を満たしている場合に支給される制度です。
そのため、事業存続が難しい、休業を余儀なくされるといった状況にある場合に、労働者の職を安定させるために支援金が出るものです。
銀行のような金融機関が行う融資と異なり、返済の必要はありません。また審査もなく、一定の要件を満たせば受給可能です。
支給のための主な要件
どの助成金を受給する際も、まずは下記の要件をすべて満たさなければなりません。
主な要件を記します。
(1)雇用保険適用事業所の事業主
雇用保険適用事業所の事業主でなければ受給できません。
助成金は企業が国に対して支払う雇用保険料が財源のため、助成金を受給するには企業が雇用保険に加入していることが必須要件です。
ただし雇用保険適用事業所でも、労働保険料を一定期間でも滞納している企業の場合、助成金を受給できません。
(2)支給のための資料提供
助成金を申請した企業には、管轄労働局による調査が行われます。
書類提出で済む場合もあれば、実地調査が必要な場合もあります。
従って、対応できるよう必要資料の準備を整えておくことが望ましいです。調査項目は以下のとおりです。
①支給または不支給の審査に必要な書類を整備・保管している
②管轄労働局の指示に従って、支給または不支給の審査に必要な書類を提出する
③管轄労働局が行う実地調査を受け入れる
(3)適正な労務管理
助成金を受給する際、労務管理の調査もあります。
たとえば必要な届出をすべて提出しているか、未払い賃金がないか、などです。
過去3年間の記録を確認し、書類に不備があると不正受給が疑われます。
過去に不正受給をした企業は、助成金を受給できません。
たとえば新規雇用に関する助成金にて、雇用直後に社員を解雇したことが発覚すると、受給は難しくなります。
助成金の申請から受給までの流れ
助成金を利用したい場合には、
まず要件を満たしているかの確認後、所定の申請フォームにより申請を行います。
申請から受給までは、以下の流れで行われます。
(1)実施計画の申請
助成金の支給要件に基づき、活動内容を示す実施計画を作り、提出します。
↓↓↓
(2)採択
助成金の場合、条件が合えばほぼ100%支給されます。
↓↓↓
(3)実施
実施計画通りに活動を実行します。
↓↓↓
(4)支給申請
活動終了後、ルールに従って支給申請します。
↓↓↓
(5)支給
支給要件を満たしていれば、助成金が支給されます。
実際に交付される時期を確認しておく必要があります。
例えば助成金は受給が決まってから1年以上かかる場合があるため、資金繰りを踏まえたスケジュール把握が必要です。
人事制度に関する助成金とは
各種助成金のうち人材確保等支援助成金は比較的メニュー(コース)の多い助成金です。
コースには以下のようなものがあります(※のあるものは、2023年度は引き続き休止予定)。
※①雇用管理制度助成コース
②介護福祉機器助成コース
③中小企業団体助成コース
※④人事評価改善等助成コース
⑤建設キャリアアップシステム等普及促進コース
⑥若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)
⑦作業員宿舎等設置助成コース(建設分野)
⑧外国人労働者就労環境整備助成コース
⑨テレワークコース
すでに2022年度以降、新規での計画受付を休止しているコースもあるため、注意が必要です。
企業が助成金や補助金を活用する際には、これまで述べた各種基本事項を事前に確認の上で申請することをお勧めします。
※本コラムは松本が、タナベコンサルティングの経営者・人事部門のためのHR情報サイトにて連載している記事を転載したものです。
【コンサルタント紹介】
株式会社タナベコンサルティング HRコンサルティング事業部
HR大阪本部 本部長代理
松本 宗家
東証一部上場の商社にて建設資材の販売、施工管理担当後、コンサルティングファームを経て、当社へ入社。ブランディング研究会、HR研究会の立ち上げに従事。クライアントの立場になって本気で現場優先のコンサルティングを実践している。企業はヒトなりの理念のもと「経営の視点から人事を診る」ことで人事を経営の根幹として体系的に構築することを得意とする。専門分野は、人事領域全般であり、組織戦略、トータル人事システム構築、人材開発プログラム構築(社内アカデミー構築支援)など。中小企業診断士。
主な実績
・上場建設業の人事制度構築支援
・上場製造業の次世代幹部育成・ジュニアボード運営支援
・中堅企業の中期ビジョン策定
・卸売業、サービス業、建設業、製造業の社内アカデミー構築& 人材育成支援
- 経営戦略・経営管理
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創業60年以上 約200業種 15,000社のコンサルティング実績
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タナベコンサルティング HRコンサルティング事業部(タナベコンサルティング コンサルティングジギョウブ) コンサルタント
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