サービス・小売業では何を評価するべきなのか(評価制度の着眼)
サービス業・小売業では何を評価するべきなのか?(評価制度の着眼)
わが社のビジネスモデルにおける『サービスチェーンマネジメント』を軸として成長軸を設定する
『サービスチェーンマネジメント』は"つなぎ目"を強化すること
『私の城』の中には複数のルールが走っている
サービス業・小売業におけるわかりやすい特徴として、エリア展開、店舗展開を行っていることが挙げられる。店舗拡大スピードと人材の成長スピードが合致させることが、常に経営テーマのトップ3に入る。この両方のスピードに対してダッシュボードが必要になる。この業種は中央(本社・本部)からのガバナンスを利かせることが重要である。タイトルで示したように、『店(私の城)』の中には複数のルールが走ってしまうことが、この業種には起こりやすい。つまり密室マネジメントが起こりやすい業種である。経営では、この現象を問題点と捉えるよりも前提として施策を構築し、実行したいところだ。筆者のコンサルティング経験の中で、あるエリア店舗では、経営理念よりも上位概念に"支配人ミッション"を位置づけ、社員に携行させ、唱和させていることがあった。その店舗では『経営理念が知りませんが、支配人ミッションに基づき仕事をしています』と、個別面談で社員は口にした。これではガバナンスが効かない。ガバナンスが効かないとは、経営で組み立てたビジネスモデルが、正しく顧客へ提供されないという事象を言う。
『サービスチェーンマネジメント』が切れるとき
『サービスチェーンマネジメント』は、筆者がサービス業・小売業をご支援する際、ビジネスモデル同様図示し、クライアントと共有し、『結局お客様はどこに価値を感じていただいているのか?』『その顧客直感価値を創り出しているのはどこなのか?』をディスカッションする。そしてエリア展開をする際には、立地と同じ重要度でこのサービスチェーンが途切れることはないか?、途切れるとすればどの辺りなのかを検証する。つまり、本論のテーマにおいては、アキレス腱になり得る箇所を評価できるようにしておかなければ、経営は大きな代償を追うことになる。来客数、客単価までは戦略の範疇であり、出店作戦から来客数は計算し、客単価はメニューラインとラインナップからメニューミックスを組み、作戦を立てる。ストーリー通りオペレーションが展開されれば、おおよそ狙う業績に近づくことができる。では『サービスチェーンマネジメント』が機能しなくなる時はどのような場合か?①エリアカバレッジが効かない ②マネジメント人材の成長と人数が追いつかない ③補填採用の連続になり、全員が"店を回す"という意識に陥る ④キャパシティーオーバーのスーパーバイザーとエリアマネジメント 等々。
間違った顧客第一主義を認めてはならない
密室マネジメントが横行している店舗は、曲解した顧客第一主義が蔓延していることが特徴である。ミス、間違い、経営の意図と反していると指摘された際、『お客様が望んでいたので、お客様から言われたので』という枕詞がついて、理由の説明が始める。実際には、言い訳や弁解に近い。この場面は至る所で散見される。加えるならば、この場面がない店舗や企業は、順調に顧客数を伸ばし、業績を伸ばし、成長している。小売業やサービス業の特徴で『現場は矛盾との戦いの場である』ということがある。例えば値段は安いに越したことはないという価値観がある中、値下げすれば目標未達や赤字と、自店舗と自社にマイナスになって返ってくる。曲解された顧客第一主義は、直ちに改める必要がある。日本はなぜかサービスという言葉は、安くするもしくはゼロ円という価値観がある。「サービスしてよ」は「値下げしてよ。もしくは●●を付けて」という意味でやり取りされる。しかしながら、ビジネスモデルを守る最前線にある店舗でこれをスタッフが飲み込んでしまうと、すべての設定が狂い、店舗間業績格差が生まれ、目標達成店舗は未達成店舗の損失補填のために店舗経営していることと等しくなる。
コンセプトとオペレーションのつじつまを合わせる
サービス業を志すかたは、当然顧客志向が強い。これは大変良いことであるが、収益を後から考える、もしくは"それは店長や社長が考えること"と独自な理屈を展開する方が多いことも事実である。面談や無記名アンケートを実施すると3割~4割強おられ、一大勢力となる。評価軸を展開するには慎重を期する必要がある。①理念に基づく顧客への考え方(理念実践度) ②ビジネスモデルの理解度(インナーブランディング) ③オペレーションと自身の役割の理解(業務分掌・等級別分掌) ④数字 ⑤自身のキャリアビジョン ⑥社内での表彰もしくは成果プレゼンテーション これらの6点を連動させたい。特に④の数字は正しく強化したい。来店数、来客数は単位が『人』であるので、スタッフに馴染みやすい。そしてここに連動するのが満足度である。満足度は単位設定が難しい。現場からの報告が『●●名のご来店があり、大半の方は満足して帰られました』という内容だった場合、何を判断できるのか?定性的な事象に対しても、プロジェクトやワークチーム等で自社独自の指標を設定し、全社で推進することを提言させていただく。
※本コラムは浅井が、タナベコンサルティングの経営者・人事部門のためのHR情報サイトにて連載している記事を転載したものです。
【コンサルタント紹介】
株式会社タナベコンサルティング
中部本部 本部長代理
浅井 尊行
外資系ホテル並びに外食産業で部門マネジメント、プロモーション施策、店舗統括、新店舗立上げを経験し当社へ入社。「ビジネスパートナーとしてクライアントの迷いを断ち切り、孤独感を和らげること」を信条とし、ミッション・ビジョン・中長期経営計画の構築並びに実行推進まで『コンセプト&オペレーションのマッチング』をコンセプトとしたコンサルティングを展開する。ビジョン達成に向けた社内研修も企画から携わり、推進している。
主な実績
・中長期ビジョン策定コンサルティング
・MVV推進体制構築コンサルティング
・後継体制構築コンサルティング
・経営幹部育成
・ミドルマネジメント育成
・コミュニケーション チェーン構築コンサルティング
・中期経営計画×プロモーション×オペレーション施策の合理的設計コンサルティング
・人事制度再設計コンサルティング
・人事考課制度再設計コンサルティング
・考課者訓練
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