1.5時間の面談で「会社を辞めたい」⇒「会社貢献します!」

コンサルティング先の企業様の管理職の方が面談を申し込んでくださったのですが、
面談室に入ってきた際の表情には全く生気がなく、一目でモチベーションが下がっているのが分かりました。
しかし、面談が終わる頃には
「これまで仕事をしてきて、こんなにワクワクした気持ちになったのは初めてです。
正直、もう転職しようと思っていたのですが、頑張ります。利益を上げるために、貢献します!」
こんな宣言をして面談室を後にしていきました。
私は、その姿に感動しながら見送ると同時に
「やはり、“奇跡の面談術”は効果がある!」
と思ったのでした。
今回のコラムでは、その面談の様子を一部ご紹介できればと思っております。
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■不安や不満は全て吐き出させる
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開口一番、面談者のBさんは
「細木さんは弊社についてどう思っていますか。正直に答えてください。」
と、思い詰めたような表情で私に問いかけてきました。
その後も、
「◯◯さんについてはどう感じていますか」
「私は出世コースから外れたんですよね。可能性がないなら、転職先を探したい」
と、吐き出したいことがたくさんあったようなので、
質問に対しては丁寧に答えながら、本人が言いたいことを
全て話してもらえるよう聞くことに徹しました。
私は話を聞きながら、相手の表情をよく見るように
しているのですが、明らかに表情が明るくなった
場面があり、
「なるほど、Bさんのモチベーションのツボは『上司承認』であって、組織体制の変更で
承認が得られづらいポジションになってしまったせいでモチベーションが下がっていたのかもしれない」
と、おおよその見当をつけることができたのです。
Bさんは男性であり、次世代リーダーとして
現在のポジションについていること、さらにこれまで
関わる中で感じた本人の特性といったところからも、
モチベーションのツボの見立てはほぼ間違いないであろうと確信しました。
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■承認とアドバイスを織り交ぜる
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Bさんの働きぶりや仕事に対する考え方は
社内でも1、2を争う人材だと感じていたので、
転職を考えている、という言葉を聞いた時点で
私としても引き止めたい気持ちでいっぱいになりました。
また、Bさん自身が変わることで状況が変わる可能性も
大いにあると感じていたので、
●モチベーションを上げる:課題の認識=9:1
このくらいのイメージで面談を進めることにしました。
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モチベーションを上げる
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Bさんが所属する企業に対しては月2回の管理職研修を
実施しており、直近でお伝えしていたテーマが「影響力」でした。
その時思い出したことが、Bさんがあるテーマで
自分の考えをまとめるワークの最中、ほとんど空白のままで、
ずっと悩んでいた姿です。
私も気になっていたので、その時様々な問いかけを
してはいたものの、結局最後まで出せずに終わったのでした。
私はもう一度Bさんにこんな風に問いかけました。
「会社からBさんに与えられた事業計画のミッションで一番やりたいことは何ですか?」
すると、Bさんは即答で「企業ブランドイメージを高めたい」
と答えてくれたのです。そしてすぐに自分だったら
こんなことに取り組みたいと、次から次へと
ビジョンを語ってくださいました。
私はそれぞれのアイディアに心底感動したので、
「Bさん!本当に素晴らしいですね!」
と力強く伝えたところ、Bさんの表情がより一層輝き、
その目に本来の力が備わったように思えました。
このように、コンサルタントという立場の私からの承認では
あったものの、Bさんのモチベーションのツボである
上司承認を満たし、イキイキと仕事について語り出しました。
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■上から目線で指摘しない
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つづいて、
●モチベーションを上げる:課題の認識=9:1
この「課題の認識」を促す面談の様子について
ご紹介します。
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課題の認識
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Bさんとの面談が終盤に差し掛かった頃、
「細木さんはすごく話しやすくて、寄り添ってくれて、また相談したいと思えるんですよね」
とBさんがおっしゃったので、私はすかさず
Bさんの改善できればより良くなる点について
事例を持ち出し、以下のように触れました。
「私は女性なので、もともと柔らかい雰囲気が相談しやすいのかもしれませんが、その自分の特性を踏まえた上で、私は普段から自分の発言が上から目線の発言にならないよう、細心の注意を払うよう心がけているんですよ。
もし、私がBさんに
『こうした方がいいですよ』
『それは対応として間違っていますね』
『私だったらやりませんよ』
こんな風にアドバイスをしていたらどう思われますか?
・・ちょっと嫌な女だな、と思いますよね(笑)
ストレートな物言いが性に合っている人もいますが、
私自身を客観的に見た時、ビシバシ伝えるのではなく、寄り添って、受け止めて、
相手から答えを引き出すような接し方や伝え方が合っていることがこれまでの経験で分かっているので、この関わり方が自然にできるようになってきたという感じでしょうか」
*
いかがでしたでしょうか?御察しの通り、実はBさんは
上司に対してストレートに物言うきらいがありました。
「もう少し、言い方をかけて見ませんか?」と改善ポイントを直接本人に伝えたら、どうなるでしょうか?
・・コラムを読んでくださっている皆様でしたら、
何一ついいことが起こらない、ということはすでにお分かりのことかと思います。
よって、私は今回、事例を話す形でBさん自身が振り返って考えるきっかけが持てるよう
気づきを促すように関わりました。
これはその場で即効性を感じづらい部分はありますが、
事例で伝えることで、自分に置き換えて客観的に話を聞くことにつながりやすいので、
自然と自己反省が促される点が有効で、かつ、
言われている本人は自分が直接指摘を受けたり叱られたりするダメージを受けずに
自身の言動を見直すようになっていくので、育成する側とされる側の間に
わだかまりが残らないことがメリットだと考えています。
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■宣言することで、周囲を巻き込む
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Bさんは、管理職研修の課題である
【チームのミッションを掲げて、部下の前でビジョンを語る】
というミッションについて、
「みんなの前で夢を語るなんて恥ずかしいです・・」
と及び腰でした。
私もその気持ちはよくわかります。
企業研修や講演において、私も毎回弊社のビジョンを
受講者の皆さんの前で参考例として紹介するのですが
毎回、恥ずかしいという思いは拭いきれません。
伝えた後の反応も殆ど無いに等しいことが多いので、
拍手が少し起きたら良い方だと思うようにしています。
しかし、Bさん含めたリーダー層への管理職研修で弊社のビジョンを語った時、
目を輝かせて「おお!」と感嘆の声を上げながら拍手をしてくれたたった一人の受講者が、
Bさんだったのです。
(細木)
「私の宣言を聞いて、感動してくださったんですよね?聞いていて、いかがでしたか?」
(Bさん)
「いいえ、恥ずかしそうなんて思いもしなかったし、カッコいいと思いました!」
(細木)
「では、Bさんも部下の前で思い切って宣言したらどうなると思いますか?笑われて終わると思いますか?」
(Bさん)
「・・・部下のうち2人は、きっと賛同してくれると思います」
(細木)
「え、すでに味方が2人もいるんですか!では宣言を通して味方がもっと増えるかもしれませんね!」
このような会話のやり取りを通した結果、最終的にBさんから
「これまで仕事をしてきて、こんなにワクワクした気持ちになったのは初めてです。
正直、もう転職しようと思っていたのですが、頑張ります。利益を上げるために、貢献します!」
という冒頭でご紹介した“宣言”が飛び出したのです。
*
Bさんが面談を通して下がっていたモチベーションを取り戻し、元気な足取りで職場へ戻って行く姿を見て、私もパワーをもらい、ますますこの会社のためにできる限りの力を尽くそう、と思った次第です。
- 経営戦略・経営管理
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◆技術系企業D&I突破口となる次世代リーダー・女性管理職を育成
元NTT女性管理職10年、約500名のSE部門における人事育成担当3年の豊富な現場経験を持つ。これまでのべ5,000人以上の技術系企業のリーダー・管理職育成に携わる。専門は技術系企業に特化したD&I推進コンサルティング。
細木聡子(ホソキアキコ) 株式会社リノパートナーズ代表取締役/技術系ダイバーシティ経営コンサルタント/(公財)21世紀職業財団客員講師/中小企業診断士

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所在地 | 千代田区 |
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