マネジメント経験が乏しい経営者を、組織外から支える

私がコンサルティングで関わらせていただいている
企業経営者の皆様は、会社をより良い組織にしよう、
社員を育成して会社成長に繋げよう、と高い志を持って
経営に取り組んでおり、同じ経営者として刺激を受けています。

一方で、組織の外から関わるからこそ見えてくる、
経営者と現場社員との意識の差、伝わらない想いがあることを
感じずにはいられません。

 

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
■社員を活かす具体的手法を知らない経営者
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

会社成長は、経営者や管理者という立場の方が、
いかに社員の能力を引き出し、活かせるかという
手腕にかかっていると言っても過言ではないと思います。

小さな規模から経営をスタートさせて、
会社発展を遂げた企業も多々ある中、
私が中小企業診断士として相談を受けることが多い
中小企業やベンチャー企業、2代目経営者の企業においては、

「会社貢献できる人材育成の具体的な方法」

についてのスキル・知識不足によって引き起こされている
進まない組織改革、浸透しない新たな社内制度、
溜まって行く古参社員のフラストレーション、
そして会社全体のモチベーションの低下・・・
といった非常に残念なことになっているのが現状です。

経営者として組織拡大に伴う改革や新たな仕組みの導入など、
方向性は合っていて、良質なものを取り入れようと
しているにも関わらず、です。

組織外からサポートしている私から見えるのは、
組織の経営者やリーダークラスの方々の
マネジメントや人材育成のスキルに課題があると
感じています。

さらに突っ込んで言ってしまうと、知識やスキルはあっても、
経験値が乏しく、具体的にどうやって人材育成を
進めるかが分からない、ということが多いように思うのです。

 

┏━━━━━━━━━━━━━━━┓
■マネジメント経験が乏しい経営者
┗━━━━━━━━━━━━━━━┛

私は元NTT出身という経歴もあって、企業コンサルティングとして
サポートに入るきっかけはシステム導入が多いのですが、
先日もこんなことがありました。

社内制度を抜本的に改革して、会社を成長させようと
3年の間に人事評価システムを導入し、業務改革ととして
完全ペーパーレスに向けたIT化等を積極的に取り入れたという
中小企業経営者の方が相談にやってきて、

「現場社員が使いやすい、易しいシステムを導入したい」

とおっしゃいました。
システムを段階を追って複数導入したものの、
現場社員が「どうやって使うのか分からない」と
フラストレーションを抱えてしまい、その都度使い方を
レクチャーする勉強会を複数回開催したが、結局全てのシステムが
活用しきれていないとのこと。

話を聞くと、システム導入の際には全社員に向けて
説明をした、その時はみんなも納得していたのに何故だろう、
とおっしゃっていたので、私は後日、人事評価シートの
一部を見せてもらうことにしました。

ある一人の社員が書いた自己評価および部下評価のコメント欄を
見て、私は即座に

「人事評価システム導入の意義を理解していない」

と思いました。他の社員の方のデータをざっとチェックしても
同じように理解しきれていない状態だったのです。

私は、経営者の方が大手企業に所属して、営業として
高い能力を発揮していたものの、管理職としての経験がないまま
独立した背景を知って、経営者におけるマネジメント力向上が
急務であると感じたのでした。

 

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━
■経営層のマネジメント力強化の必要性
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

以前このコラムでご紹介した稲盛和夫氏の著書
「心」においても、
会社を成長させる時も、会社を立て直す時も、
最初にやるのは人の成長である
と書かれていました。

同様に、私が前述の企業において、経営者を含め、
そこで働くひとりひとりの成長・スキルや知識を身につける
必要があると考えた理由は以下のようなことからです。

------------------------------------------------
経営者の成長がもたらすもの
------------------------------------------------

経営者は、システム導入について社員に説明したと
話してくれましたが、残念ながらただ説明しただけでは
人は動きません。

社員の立場に立ち、モチベーション高く仕事に
取り組めるよう、なぜ社内システムを導入したのか、
その背景や理由を社員が腹落ちするまで丁寧に説明する
必要性に気づくに至らないということは、経営者自身の
マネジメント経験不足に他ならないと私は考えます。

だから、経営者には社員の力を引き出すマネジメントを学び、
具体的な手段をとって推進力を発揮する経験を重ねて、
社員を活かす視点を醸成する必要があるのです。

------------------------------------------------
社員の成長がもたらすもの
------------------------------------------------

経営者の思いを受け取り、自発的に会社貢献しようという
モチベーションのベースには、そもそも会社が何のために
存続しているのか、経営理念は何か、自分の仕事は
社会にどのように役に立っているのか等の理解が不可欠です。

「そこまで会社が教えないといけないのか」
「パートやアルバイトは関係ないでしょう」

といった考えもあるかもしれません。

しかし、これは私の実体験なのですが、
連日遅刻・ミス連発の女性パート社員に対して
「こんな風に彼女へ声をかけてください」と彼女を雇っている
経営者にアドバイスしたところ、その翌日から遅刻がなくなり、
別人のように活き活きと働き出した、という類の出来事は
一度や二度のことではないのです。

経営者といった影響力のある人からの適切な
マネジメント・関わり合い、さらに教育・育成
によって、会社の一員であることの意識が高まり、
貢献する意義を自ら見出せるようになれば、
社員であろうがなかろうが、経営者の思いを受け取って、
自立的に成長し続ける人材になっていけると
私は考えています。

***

これから規模拡大していこうとする中小企業は、
経営者だけ意気込んで突っ走る構図となって
うまくいかない、と見えがちかもしれませんが、
経営者自身の成長、そして社員の成長によって
障壁と思われた状況も、すんなりと乗り越えていける、
これが私の経験から感じているところです。

 

┏━━━━━━━━━━━━━━━┓
■社員と経営者をつなぐ「架け橋」
┗━━━━━━━━━━━━━━━┛

私がコンサルタントとして企業サポートをするきっかけは
何であれ、最終的には「人材育成」「マネジメント」という
分野においてその価値を感じて継続してくださる理由が
だんだんと明確になりつつあります。

冒頭でお伝えした通り、会社成長に欠かせないのは
社員の成長であり、その成長を促す影響力を持つのは、
中小企業やベンチャーという小規模な組織であれば
経営者であることに間違いありません。

私はサポートする企業の経営に直接関わることはありませんが、
経営者と社員の乖離を見極めて、それぞれが
教育を受け、少しずつ歩み寄る姿勢をとることから生まれる
相乗効果によって、会社成長につながっていくための、
「架け橋」の役割を担っていると思うのです。

今後、私のような組織外から経営者のマネジメント力を
支えるアプローチが、特に中小企業の成長にどのように
役立てられるかについて、更に考えを深めて行こうと思います。

  • 経営戦略・経営管理
  • モチベーション・組織活性化
  • キャリア開発
  • リーダーシップ
  • マネジメント

◆技術系企業D&I突破口となる次世代リーダー・女性管理職を育成

元NTT女性管理職10年、約500名のSE部門における人事育成担当3年の豊富な現場経験を持つ。これまでのべ5,000人以上の技術系企業のリーダー・管理職育成に携わる。専門は技術系企業に特化したD&I推進コンサルティング。

細木聡子(ホソキアキコ) 株式会社リノパートナーズ代表取締役/技術系ダイバーシティ経営コンサルタント/(公財)21世紀職業財団客員講師/中小企業診断士

細木聡子
対応エリア 全国
所在地 千代田区

このプロフェッショナルのコラム(テーマ)

プロフェッショナルコラム

職場に笑顔の革命を! │科学が証明する成功の連鎖反応

坂田 和則(株式会社ナレッジリーン(旧 知識経営研究所) マネジメントコンサルティング2部 部長 改善ファシリテーター・マスタートレーナー)

さて、ここであなたに質問です。 ・あなたの職場は、笑顔があふれていますか? ・会議で笑いが出る環境になっていますか?...

2025/03/17 ID:CA-0005919 コミュニケーション