現場の反発をどう乗り越えるのか〜新制度導入時の障壁

2020年のオリンピック・パラリンピック開催に向けて
テレワークやフレックスタイムなどの試験導入が各企業で
実施されています。
女性活躍推進2.0実態調査においても、
テレワーク導入に対するアンケートを盛り込んでいたのですが、
寄せられたコメントには現場で働く人々の怒りに満ちた声も
多く含まれていました。
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■新しい取り組みを導入するための秘訣
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もし、経営者からのトップダウンという形で
「働き方改革!残業ゼロを目指そう!」となれば、
とにかく実施しなければなりません。
その実施に向けた周知や行動を起こすのは
やはり人事部などの管理部門が率先してやることが多いと思います。
一方、現場の社員たちは、
「残業するな?現場のことをまるで分かっていない!」
「時間外のお客様対応は?できるわけないじゃない」
「業務の性質上、試しに実施することも不可能です」
などと、当然のごとくハレーションが起きます。
人事担当者としてこの障壁を乗り越え、実行に移すため、
もっとも重要なことが【推進力】がであると私は考えます。
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■率先して見本行動を取る
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ここでの推進力とは、率先して見本行動を取る、
ということです。この方法でテレワーク試験導入を
成功させた事例をご紹介したいと思います。
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残業ゼロの試験運用を全部門で実施
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顧客は外食産業という営業部門において、
1週間残業ゼロにする取り組みを1週間だけ
試すことになりました。
現場では顧客に迷惑がかかる、不可能だとブーイングの嵐・・。
そこでまず立ち上がったのが、管理部門である人事部でした。
自分たちができないことを、他部署にやらせるなんて
説得力がないのでは?という、人事担当者全員の一致した
意見のもと、実行されたのです。
もちろん、残業ゼロを実行するには
従来の仕事の進め方では到底実現しません。
管理部門が残業ゼロになっても周囲に迷惑がかからぬよう、
業務改善を話し合うところからスタートしました。
手始めに、部長クラスの会議時間を仕事の
ゴールデンタイムだった午後13時から、
就業時間前の午前中に設定。
これは、部下が部長へ報告・連絡・相談をしたいときに
部長クラスが会議で数時間不在になってしまうと、
その時間部下の仕事はストップしてしまうという状況を
改善するためのアイデアでした。
社員が出社する前に会議を終えることで、
日中は管理職がそれぞれの現場にいることができます。
それが結果的に社員全員が時間内に働きやすくなることに
つながると考えたのです。
他にも、人事部への報告書といったものは
極力削減するなど、自ら率先して残業ゼロを実現しました。
これを見た営業部門、その他の部門も残業ゼロに向けて
現場でどのような工夫ができるか話し合いがもたらされ、
その後半年の間に全部書が試験導入を実施することに
成功しています。
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■部下の反発を丁寧に扱う
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「定年間近の部下なんですけど、
“テレワークは不要だ、なぜ無理やりやらされるんだ!”
と頑なな態度に対応に困り果てています・・」
こんなリアルな悩みが寄せられています。
女性管理職で、年上異性部下の対応となると
言葉では言い表せないモヤモヤがそこにあるものです。
この場合、「できない!」と言ってきた人に対しては、
丁寧に事情を聞く必要があると思います。
その人の気持ちを一旦受け止めた上で、
反対意見を細かくヒアリングするのですが、
全てに同調しなくてOKです。
「そうなんですね、お気持ち分かります」
と伝えながら寄り添えば、相手は少しずつ苛立った気持ちが
静まって、必ず落ち着きを取り戻します。
(※適当な相槌では相手の落ち着きは訪れにくいのでどうか「傾聴」をお忘れなく)
落ち着きを取り戻せたら、こちらの話も幾分受け止めやすく
なりますので、「じゃあ例えば実行するとしたら、どんな
取り組みができますかね・・」と相談しながら一緒に考える
スタンスを取れば、互いに納得した話し合いがもたらされるでしょう。

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■ボトムアップの働きから生まれる真の改革
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新しい取り組みをトップダウンで行うものの
現実には思うように事は進まないのが常。
それは、実際に実現するのは現場の人々である以上、
ボトムアップの動きは不可欠です。
経営者の思いと、現場の思いを繋ぐのは、
(殊にそれが人事施策の制度となれば)
人事の役割ではないかと私は思います。
女性活躍推進も同様のことが言えるのですが、
本当の意味で成果を出すのであれば、
所属する現部署の女性たちを活躍させることから
始める必要があるのではないでしょうか。
私自身も、5年以上前の話にさかのぼりますが、
女性活躍を推進するため、手始めに時間短縮勤務だった
女性部下に対して
「私は働く時間で評価はしません。
生産性高く働き、成果を出した人を評価します」
と宣言し、この意思を彼女以外の部下全員に伝えました。
結果として得られた「残業ゼロで前年度比2倍」という結果を
事例として、周囲の部署へ紹介して回り、草の根運動を
地道に行ってきた経験があります。
当時の部下たちは
「他の人が残業なしで仕事をしているので、時短を理由に出来なくなった」
「時短であれだけパフォーマンスを出しているなら、自分ももっと生産性高く仕事ができるかも」
と話してくれたことを思うと、それぞれが
仕事に対する意識が高まり、互いに良い影響を
与えることにつながっていたと確信しています。
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■現場の人しかアイデアを出せない
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結局、経営者は実態の業務を知らないものです。
実態に即した考え方・やり方で変革するために
必要なアイデアを出せるのは、現場の人たちしかいません。
だから、ボトムアップでアイデアを出さざるを得ないのです。
それを現場の人が理解してくれたら、真の意味で効果的で
持続的な取り組みなります。
働き方改革でよくある、「残業ゼロになったけど
みんな持ち帰って仕事していますよ」なんていうことは
決して起こり得ないのです。
本当の意味での働き方改革は、お客様がどんな時間に、
どんな対応を求めているのか知っている現場の担当者からしか
始まらないとしたら、彼らが働き方改革の意義を見出し、
率先して取り組めるような気持ちを醸成するような関わりを
人事部が本気で動いていかねばならないと思います。
それが、【推進力】だと私は考えます。
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■即効力と持続性、両方の側面を活かして
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トップダウンには力があるので、即効性があります。
しかし、持続的な取り組みとして、職場の風土として
浸透させるには、ボトムアップが必要不可欠です。
女性活躍推進、ダイバーシティ経営・・・
ただでさえうまく行かないこれらのことを、
関わる部署が率先して取り組まないことには
決してうまくいかないと思うのはその理由からです。
トップダウンとボトムアップ、双方の特性を活かして
相乗効果をもたらすような行動を人事部から発信し続けるため、
これからも研修やセミナー・講演など様々な場面で
お伝えし続けていければと思っています。
- 経営戦略・経営管理
- モチベーション・組織活性化
- キャリア開発
- リーダーシップ
- マネジメント
◆技術系企業D&I突破口となる次世代リーダー・女性管理職を育成
元NTT女性管理職10年、約500名のSE部門における人事育成担当3年の豊富な現場経験を持つ。これまでのべ5,000人以上の技術系企業のリーダー・管理職育成に携わる。専門は技術系企業に特化したD&I推進コンサルティング。
細木聡子(ホソキアキコ) 株式会社リノパートナーズ代表取締役/技術系ダイバーシティ経営コンサルタント/(公財)21世紀職業財団客員講師/中小企業診断士

対応エリア | 全国 |
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所在地 | 千代田区 |
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