脱却できるか「長時間労働」~トップの経営決断が必要~

新聞紙上で働き方について賑やかである。

その1つが「長時間労働」について。

「日本は終身雇用制度で、会社がずっと社員の身分保障をしてくれるので、そのお返しとしての忠誠心の表れか長時間労働を厭わない」という文化があるとの指摘もある。確かにそう思う殊勝な人もいなくはないだろうが、現実は違うと思う。

全部が全部ではないかもしれないが、「忠誠心ではなく、現実のメリット・デメリットの計算」に基づくと思う。

■残業をする理由
(1)評価につながる。「残業を厭わず、ヤツは頑張っている」という評価をする人は少なくない。
(2)上司であれば、「残業をしている自分の部署は頑張っている」という雰囲気を演出でき、それを期待する。
(3)管理職未満であれば、「残業代」が稼げる。
(4)家に早い時間に帰りたくない。

■残業に対する疑問
(1)自由な時間が短い。ワークライフバランスに支障がある。
(2)長時間労働の効率が必ずしも高いとは言えない。

女性活躍推進の議論では、残業を会社がどうするかという点が外せない。
女性活躍推進ではなく「働き方」という点だけでも、長時間労働をどうするかという会社の考え方が重要になってくる。

昭和の時代は、「休日が欲しければ管理職を辞めろ」というタイトルの本をとても有名な経営者が書いた。
今、そんなことを言ったら、ブラック企業と言われて、新卒が入ってこない。

学生は、「四季報」だけを見て受けたい会社を探すのであろうか。
ネットで検索して貰えばわかるが、次のようなサイトがある。このようなランキングも参考にしているようだ。

■優良企業ランキング
■潰れない会社ランキング
■優良ホワイト企業ランキング
■ブラック企業ランキング
■女子学生のための企業ランキング
■ずっと働きたい中小企業ランキング

学生ばかりではない。就職率を上げるため、良い会社で活躍する卒業生を増やすために、大学も企業を選んでおり、HPに公表しているところもある。
「昭和女子大 企業選び」で検索すると出てくるのがこういうもの。

■女子学生のためのホワイト企業ランキング
■「優良企業ランキング」

さて、話は戻って、残業。会社として、残業をどう位置付けるか、例えば是とするか非とするか、トップの判断が必要である。会社の最高意思決定機関である取締役会の決議が一番いい。

何も指示をせず暗黙知に頼り、判断を現場の長に任せてしまうと、
昭和の価値観が滲み出し、冒頭のような「残業をする理由」に帰結してしまう。

残業の位置付けについて会社の統一判断基準が必要である。
1、残業を非とする
2、残業を是とする
3、残業を最小限にする
4、残業代は支払うが「評価基準」には加えない(もしくは加える)

上記のどの位置付けをするかは、それぞれの会社判断であるが、どれとするかは明確にしておきたい。
それは、トップや役員会が最終的に判断するしかない。

それと残業を減らすと「売上」も減るかもしれないという考えがある。
限りある人的資源を朝から晩までフル稼働したほうが、確かに売上は伸びるかもしれない。
ただし、長時間労働は効率が必ずしも上がるとは言えない。

売上が下がるリスクは、いくらでもある。
製品やサービスの劣化、オペレーション効率の低下、コニュニケーション能力低下、マーケティングの失敗など
たくさんのリスクがある。だから、残業しないで頑張れば売上は保てるという考えはほんの一部の要因であり、
残業だけにフォーカスするのもおかしい。

繰り返しだが、長時間労働の会社方針を持たずに「取締役や本部長にお任せ」では、
「女性活躍推進」や「働き方改革」は機能しない。
すなわち、少子高齢化の問題にきちんと向かい合わず昨日まではちゃんと就活生が採用できていたという前提で、昭和の価値観を持って残業の是非を判断するのは、それこそ企業にとって大きなリスクである。

これまでのメルマガで紹介してきたように、これからの日本企業はグローバルでの戦っていかなければならないので「生産性の高い」国にすることが必要である。日本企業が生産性を語るには「残業」に目を背けていては、前に進まない。
トップの決断が必要である。

 

 

 
 

 

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雑誌掲載・著書多数!女性活躍の男性推進サポーター兼「立志塾」塾長。経営的観点から、ジェンダー×ダイバーシティの意義と実践をお伝えします。

ホリプロ経営企画室長時代、多くの名もなき女性たちがプロのタレントとして輝きを放つ瞬間を見てきました。何故無名の新人が大女優になるのか?―才能を見つけ、引き出し、磨き、演出する。企業における人材育成、殊、女性育成でも根幹は同じかもしれません。

椎川 乃雅(シイカワ ノア) 一般社団法人彩志義塾 代表理事

椎川 乃雅
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