原因療法的ハラスメント対策 ~ハラスメントタイプと性格適性~

職場ハラスメントの予防対策は、対症療法だけでなく原因療法を加えることが大切です。
職場でのハラスメント問題は、現代の企業経営において深刻な課題のひとつです。このコラムでは、企業が取り組むべきこれからのハラスメント予防対策を、ハラスメントタイプ分類と性格適性の切り口でご紹介します。
※この記事の注意点
この記事の内容は、ハラスメント関連文献と当社保有の適性検査の統計データを基として考案したものです。文中のハラスメントタイプやハラスメント性格適性の分類や項目名などは当社独自の表現方法となります。
1. これまでのハラスメントの予防対策
職場でのハラスメントの発生を防ぐためには、以下のような取り組みが重要と考えられています。
- 研修の実施:全社員にハラスメント防止研修を行う。
- 社内ルールの策定:会社として明確な行動指針を示す。
- アンケート実施:社内調査でハラスメント有無を確認。
- 相談窓口の設置:被害者が安心して相談できる体制の構築。
1-1. ハラスメント予防対策の課題
これまでのハラスメント予防対策は、以下のように全体的かつ対症療法的である課題が存在します。
- 全体研修や社内ルールだけでは当事者意識を持てない。
- 表面化しない陰湿なハラスメントに気付けない。
- 発生原因が分からず、対症療法的になっている。
- 様々なハラスメントがあり、予防対策の標準化が難しい。
2. これからのハラスメント予防対策
これまで以上にハラスメントの発生を防ぐためには、以下のような個別的かつ原因療法的な取り組みが重要です。
- ハラスメントタイプを理解:様々なハラスメント分類して特徴を捉える
- ハラスメント性格適性を理解:ハラスメントを引き起こすベースとなる性格適性を捉える
- ハラスメントと性格の因果関係を理解:発生するハラスメントと性格適性との因果関係を捉える
2-1. ハラスメントタイプを理解する
ハラスメントは主に以下の5つのタイプに分類できます。無数あるハラスメントを個別に予防対策するではなく、ハラスメントタイプに合わせて予防対策することが効果的です。
- 隠匿支配権力型:権力を使い精神的に追い詰める。時間をかけて狡猾に支配するため周りが気づきにくい。
- 例)モラハラ
- 支配権力型:権力を使って高圧的に追い詰める。長期的に屈服させる。
- 例)パワハラ
- 感情権力型:権力を使って高圧的に追い詰める。短絡的なことも多い。
- 例)セクハラ、マタハラ
- 立場利用型:自分の立場や社会的風潮を利用して相手を困らせる。
- 例)カスハラ、逆パワハラ
- 無神経型:相手の気持ちを考えずに困らせる。悪気がないことも多い。
- 例)スモハラ、スメハラ
隠匿支配権力型
普段は感じの良い人を演じますが、ターゲットの前で豹変します。自分が権力を得る(ハラスメントできる環境になる)までは鳴りを潜め、準備が整ったところで態度を急変させます。隠し持っている欲望や冷淡さは、複数回の面談でも見抜くことが難しいため、親しい人間関係まで含めた調査が必要となります。
ハラスメントを発現させないためには、必要以上の権力や裁量権を与えないこと、閉鎖的な環境に置かないことが大切になります。
支配権力型
普段から自分よりも立場が弱い人に冷たく高圧的で支配的な一面を覗かせます。さらに、自分が権力を得る(ハラスメントできる環境になる)とこれまで以上にその態度が顕著となります。ただし、面談の場ではその傾向を隠すことがあるため、数回に及ぶ掘り下げた面談や関係者へのヒアリングが必要となります。
ハラスメントを発現させないためには、必要以上の権力や裁量権を与えないこと、組織として高圧的な態度や支配を許さない姿勢が大切になります。
感情権力型
普段はその傾向を見せませんが、気持ちの油断や感情的な場面で冷たく威圧的な一面を覗かせます。さらに、自分が権力を得る(ハラスメントできる環境になる)と発生のハードルが低くなり頻度が増します。また、形式的な面談の場ではその傾向が見て取れないため、気の緩む場面や感情的になりやすい場面での確認が必要となります。
ハラスメントを発現させないためには、必要以上の権力や裁量権を与えないこと、組織としての規律と監視が大切になります。
立場利用型
普段はその傾向を見せませんが、自分が守られた環境の中で優位な立場になったときに威圧的な一面を覗かせます。また、精神的に追い込まれて感情的になったときに態度を急変させます。この傾向を面談で見抜くことは簡単ではありませんが、自己防衛的な他責傾向や非共感性の深堀りが発見のヒントとなります。
ハラスメントを発現させないためには、必要以上に閉鎖的環境での権限を与えないこと、ストレスを与えて精神的に追い込まないことが大切になります。
無神経型
普段から周りを気にせずに他人に無関心で無神経な一面を覗かせます。さらに、自分が権力を得る(ハラスメントできる環境になる)と周りが注意できない状況になり歯止めが効きません。形式的な面談の場ではその傾向を隠すことがあるため、深堀りの中で感じる他人への無関心さや非共感性の確認が必要となります。
ハラスメントを発現させないためには、組織として周りを気遣えない態度を容認しない姿勢、早期段階からの注意や指導が大切になります。
2-2. ハラスメント性格適性を理解する
ハラスメントをする人の性格(気質)には、主に以下の5つの性格特性が関与しています。加害者(加害者予備軍)への闇雲なアプローチではなく、ハラスメントを引き起こす性格要因に対して予防対策することが効果的です。
- 冷淡性:他者に共感できない冷淡性
- 無責任性:防衛的で他責思考の無責任性
- 自己愛性:優越と称賛を求める自己愛性
- 支配性:他者を操り執着する支配性
- 偽装性:狡猾で印象操作する偽装性
冷淡性
他者に共感できない冷淡性
他人の感情に流されることが少なく、自分の悲しみや悲哀の感情にもあまり浸ることがありません。他人に対する関心が薄く、物事を自分の中での合理性で考える傾向があります。相手の感情よりも理屈を重視するため、他者の苦しみに対しても冷静な姿勢を保ちます。ときに許せない相手に対しては執拗な態度を取ることがあります。また、他人に対して肯定的な感情をあまり示さず、距離を置いた冷めた態度は相手を軽視していると感じさせることがあります。
無責任性
防衛的で他責思考の無責任性
物事の責任を自分で負うよりも、周囲に委ねることが多い傾向があります。自分に向けられた批判や攻撃に対して強い警戒心を抱き、何気ない出来事であっても悪意が含まれているのではないかと考えることで、他者に対して不信感を抱くことがあります。自分の考えや価値観に執着しすぎることで、物事の善悪を自分視点で捉えてしまうことがあります。また、ストレス解消の矛先を他者に向けてしまうことで対立を生むこともあります。
自己愛性
優越と称賛を求める自己愛性
自分に対して強い自信を持ち、重要な存在であると感じる傾向があります。成功や権力を手にする未来を思い描き、その可能性に限界を設けない前向きな姿勢を持っています。また、周囲からの称賛を求めることが多く、自分の成果や成功は自らの力によるものだと考える傾向があります。他人の成功や幸福に対して強い関心と執着があり、弱者に対しては優越感を持ちやすく、成功者に対しては羨望と嫉妬から相手を一方的に敵視する感情を持つことがあります。
支配性
他者を操り執着する支配性
人間関係において自分を中心に考え、相手との関わりを戦略的に捉える傾向があります。自分の意図に沿って相手が動くことを求め、主導権を握ることに安心感を覚えます。魅力的で影響力のある人を脅威に感じ、その相手を上手くコントロールしたいと考えます。それが思い通りにならない場合にはストレスを感じ、ときに自分の前から排除したいと考えることがあります。また、期待していた相手に失望したときには、悲しみよりも怒りや不満が先に立ち、その感情が長く続くこともあります。
偽装性
狡猾で印象操作する偽装性
状況に応じて柔軟に立ち回ることが得意で、周囲からは常識的で感じの良い人物として見られることが多いです。対人関係では、実際には自分が依存していても相手が依存しているように見せたり、ときには被害者として振る舞うことで主導権を握ることがあります。自分の魅力を活かして人を引きつけ、相手に合わせて自分の印象をコントロールすることにも長けています。また、制限されたルールを巧みにすり抜けることに楽しさを感じる傾向があります。
2-3. ハラスメントと性格の因果関係を理解する
どのようなハラスメントを発生させるかは、性格(気質)を理解することで予測できます。各種ハラスメントを引き起こす要因となる性格を理解して予防改善のアプローチすることが重要です。
- 隠匿支配権力型:冷淡性、無責任性、自己愛性、支配性、偽造性 の性格適性がある
- 支配権力型 :冷淡性、無責任性、自己愛性、支配性 の性格適性がある
- 感情権力型 :冷淡性、無責任性、自己愛性 の性格適性がある
- 立場利用型 :冷淡性、無責任性 の性格適性がある
- 無神経型 :冷淡性 の性格適性がある
※例)「冷淡性」「無責任性」「自己愛性」「支配性」の性格適性あり → 支配権力型ハラスメントをする可能性あり

2-4. ハラスメント傾向チェックシートを活用する
チェックシートを活用してハラスメント傾向を認知することで、その性格傾向に合わせて予防対策をアプローチできます。ただし、ネガティブな内容の設問になるため、本人がハラスメント調査と察して嘘をつく可能性があるため、関係者によって回答するなどの工夫が必要となります。
- ハラスメントタイプや性格に基づく効果的な予防と対策が可能。
- ハラスメント傾向者を把握することで事前にトラブルを回避できる。
- 本人が嘘をつく可能性があるが、社内の関係者が回答すれば正しい結果を得られる。
- 新卒や中途採用など、入社前の段階では調査が難しい。
2-5. ハラスメント適性検査を活用する
適性検査を活用してハラスメント傾向を認知することで、その性格傾向に合わせて予防対策をアプローチできます。適性検査の内容によっては、ハラスメント調査と気づかれずに調査できるメリットがあります。
- 実施者に気づかれずにハラスメント傾向を調査できる。(適性検査の内容による)
- 管理職試験でハラスメント傾向を確認し、昇進後のトラブルを回避できる。
- 入社試験でハラスメント傾向を予測し、極端な傾向者は慎重に対応できる。
3. 最後に
昨今、働き方改革が複雑化し、それに伴いハラスメントも多様化しています。従業員と会社を守るためには、ハラスメントの適切な知識とツールによる予防と対策が欠かせません。これまでの対症療法的な施策から、新たに原因療法的な施策まで取り入れ、ハラスメントのリスクを未然に防ぎ、健全な職場環境を維持することが大切です。
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適性検査、ハラスメント傾向分析ツールの開発者
ビッグデータの統計分析、ITを活用したツール開発が得意分野
藤浦 隆雅(フジウラ タカマサ) 株式会社シャイン 取締役 ポテクト事業部長

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