トヨタ流「全員活躍」の推進
日本生産性本部は2024年4月19日、第97期「人事部長クラブ」の4月例会を都内で開催(オンライン併用)した。当日は「モビリティカンパニーへの変革に向けた『全員活躍』の推進」をテーマに、トヨタ自動車人事部長の南井正之氏が講演した。
冒頭、南井氏は、トヨタは自社を「自動車会社」から、モビリティに関わるあらゆるサービスを提供し多様なニーズに応えられる「モビリティカンパニー」に再定義していると説明したうえで、人材に対する考え方のキーワードとして、「幸せを量産する」ことを挙げ、「私たちの使命は世界中の幸せになるモノやサービスを提供し、『幸せを量産する』ことであり、従業員も同様にトヨタで働くことを通して幸せであってほしい」という思いで、様々な取り組みを展開していると述べた。
また、「人に対する基盤は労使関係にあると思っている」と、トヨタの労使関係について触れ、従業員の25%の1500人を人員整理した1950年の大争議を原点として、「対立的な労使関係は労使ともに不幸になる」ことを地道に引き継いできたことや、労使関係は職場の「人間関係の総和」であり、各職場における良好かつ健全な人間関係がトヨタの競争力の源泉であること、2020年の労使協議会から開催方式を変更し、トヨタが抱える課題について、トップ・組合員・マネジメントが参加し、本気で本音の議論を行うことを重視していることなどを説明した。
全員活躍の推進のうえで重要となる幹部層については、「周囲から『支えてもらえる・選んでもらえる』姿勢・行動に見直す必要がある」として、「人間力の強化」と「公正な評価の徹底」に取り組み、幹部層の評価基準を、従来の実行力に偏った評価から、「人間力」と「実行力」を兼ね備えた人材を評価することに変更し、評価項目に「人間力」を入れたことや、幹部層の資格の大括り化を行い、「人間力」と「実行力」を兼ね備えた人材をタイムリーに登用できる仕組みをつくったことを紹介した
さらに、人間力の継続的な向上に向けた取り組みとして、ウェルビーイングサーベイを行い、従業員の働きがいや幸福度を可視化していることや、感謝と思いやりにあふれたコミュニケーションを体得し、メンバーが幸福感を抱いて人生を過ごせるような職場をつくることを目的に、OC(思いやり・コミュニケーション)研修を年1回、幹部層を対象に実施していることなどにも触れた。
直近では、「多様性(自分らしい人生を)」「成長(挑戦と失敗を財産に)」「貢献(産業の未来のために)」を3本柱に、全員活躍に向けた取り組みを進めている。
多様性では、パートナーの育休取得100%を目指す取り組みを行っていることや、入社3年目までの若手社員を対象に社内FA制度を新設したこと、成長では、「脱機能・脱個社」を目指し、出向や研修などを強化していること、貢献では、グループ・仕入れ先との人材交流・マッチングの強化を図っていることなどを説明した。
2024年の労使協議会で話し合われた「人への投資」については、「働きやすいものづくり環境の整備」(トイレやロッカーの更新・新設などの工場の環境整備、寮のリニューアル、定年後再雇用者の処遇向上など)や、「『自らやりがいをつかみとる』仕組みづくり」(全職種を対象とした職種変更、マネジメントの役割定義・育成・評価の見直し、資格・職種・職場を問わず選択可能な選択型研修の強化など)に現在、取り組んでいると述べた。
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