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ISO30414の活用を(第95期 人事部長クラブ3月例会)

日本生産性本部は2023年3月22日、第95期「人事部長クラブ」の3月例会を都内で開催(オンライン併用)した。当日は「人的資本の情報開示とISO30414~国内外の最新動向」をテーマに保坂駿介・HCプロデュース代表取締役が講演した。

保坂氏は、人的資本の情報開示が企業に求められている背景として、投資家がこれまで以上に、付加価値を生み出す人材の採用や育成に注目し始めていることや、米国証券取引委員会(SEC)が2020年8月に、人的資本に関する重要な情報の開示を義務化したこと、日本国内でも2021年6月にコーポレートガバナンス・コードが改定され、人的資本の開示が実質義務化されたこと、各省庁でも「『人的資本可視化指針』の公表」「有価証券報告書での非財務情報の開示」「女性活躍推進法の改正による『男女の賃金の差異』の公表義務化」「育児・介護休業法の改正による育児休業等の取得割合の公表義務化」といった人的資本情報開示に関する動きが見られることなどを挙げた。

ISO30414は、国際標準化機構(ISO)のマネジメントシステム規格の一つ。11項目(倫理とコンプライアンス、コスト、ダイバーシティ、リーダーシップ、組織風土、健康・安全・幸福、生産性、採用・異動・離職、スキルと能力、後継者計画、労働力)と58指標によって構成され、人的資本を網羅的・体系的に示すガイドラインとなっている。

日本人第1号のISO30414コンサルタントである保坂氏は、「経営者は人的資本に適切な投資ができているかを測る〝ものさし〟を得られる。人事部は様々な指標を定量化、見える化でき、人事政策の改善につなげられる。人事の、経営に対する貢献度合いも見やすくなる。従業員はよりよい待遇や職場環境を期待できる。採用強化を図る非上場企業や中小企業にも関心を持たれている」と、企業がISO30414を活用するメリットは多岐にわたると強調した。

人的資本の情報開示をめぐる国内外の動向では、ドイツ銀行の子会社が2021年1月に世界初のISO30414認証取得企業になるなど、ドイツ企業が先行してISO30414の認証取得を始めていることや、SECルールの発動後、アメリカの上場企業も人的資本の情報開示を拡大し始めていること、国内でもISO30414の導入や認証取得を目指す企業が増えており、ISO30414のコンサルティングが実施可能な、HCプロデュースの公式パートナー企業(日本生産性本部を含む)も増えていることなどにふれた。

ISO30414を導入する際の日本企業の課題については、「日本企業は欧米とは労働慣行が異なる。例えば、58指標の中には『採用にかかる平均日数』があるが、新卒一括採用が中心の日本では就職活動の解禁日から内定日までの日数は各社とも同じような日数になってしまい、企業ごとに実態に合わせて変えていかないと、意味のあるデータがとれない。そのままISO30414の計算式を導入することの難しさがある」ことや、従業員満足度などの社内サーベイの仕組みを持っていない会社、『重要ポスト』を定義していない会社、『後継者計画』のない会社など、そもそもの仕組みを持っていない会社は指標の数値が取れないことなどを指摘した。

ただ、「『重要ポスト』や『後継者計画』は暗黙知として持っている会社は多い。それらを定義することは暗黙知を形式知化することであり、日本企業はやろうと思えばできるが、それを社内外に開示するかどうかは別問題であり、人事や経営においてだけ定義し共有して、人材を育成、選抜していくという取り組みも考えられる」と説明した。

最後に保坂氏は、「ISO30414は認証取得自体を目的としなくても、改善ツールとしての利用価値も高い。例えば、『離職が増えている』といった抽象的な議論ではなく、離職に関してどれだけのコストがかかっているかをISO30414の考え方を使って計測することによって、人事施策の改善のきっかけづくりになる。各社の人的資本の取り組みはいろいろあると思う。日本企業の独自の取り組みを積極的に対外的に発信する機会にもなる」と述べた。

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