研修発注部門が知っておきたい「研修講師とセミナー講師」の違い
弊社のような研修会社には、多種多様な「講師」の方からの、ご面談、ご相談が舞い込みます。そこでご面談してみると、「最近は講師をめざす方が増えたな」ということと、「世の中には、色々な講師がいるんだな」という事を、実感します。
その際、強烈に感じることがあります。
「セミナー講師」と「研修講師」の”違い”が、まだあまり一般的に理解されていなのかな?という点です。
なんとなく、研修講師の方が真面目な話をしていそう、、、とか、セミナー講師の方が短い時間でやっている。あるいは、研修講師の方が地味なイメージで、セミナー講師の方が派手!そんなイメージはあるかもしれません。
講師とは一般的に「お話する」「お伝えする」ことが主な機能かと思いますが、その違いについて、今一度、内省を含めて検討してみたいと思います。
セミナー(講演)講師は、聴講者・受講生が、「主体性ある方」が大半でしょう。つまり、自主的にセミナーに参加してきた、あるいは自分自身で意思決定ができる立場の方が、セミナーに参加している、ということです。
受講生像を、具体的に言えば
・経営者
・何かのプロとして更にレベルアップを考えている方
・何かに困っている当事者
ということになるでしょう。
自分でセミナーへの参加意思決定をし、自身の課題を解決しに来ている、ということです。つまり、前向きな気持ちで参加しています。
では、どんな話の内容やスキルが求められるか、と言うと
「実際にすぐに取り掛かれる話」
「成功へのポイント」
というロジック・内容に加え、
「出来ていなかったけど、出来るようになった実話」
「色々苦労した話・事例」
など、感情に訴える点も有効です。自主的に参加しているからこそ、参加者は、話を聞く態勢はできています。いかに、論理と感情面の両方で、訴求できるスキルを持っているか、が鍵となるでしょう。
一方、研修講師はどうか。受講生は会社の社員などであることが大半です。つまり、人事部や企画部門などが企画して実施している研修に、参加している(させられている)のです。企画者と参加者が別である、これは大きな違いです。自主的に参加していない、ということは、何か受講生に対する仕掛けが必要なのです。
では、「研修講師」には、どんな話が求められるか、
「学習項目に対する意味・動機付け」
「再現性あるステップ、ポイント」
「具体的な、方法論=明日からやれること」
というロジックに基づいた再現性ある内容がまず必要でしょう。「あ、それが必要なんだ」と必要性も論理的に説明してあげる必要があります。「内容」だけでなく「必要性」や「効果」が完結明快に整理されている事です。
その上、重要なことは
「私の悩みも理解共感してくれている」という安心感の上で
「個人個人がひっかかっているボトルネック」を理解し、
「やってみよう!」という心を開かせられる
マインド・モチベーションに関わる部分に対する仕掛けが必要なのです。自主的に参加しているのではないため、この部分に対する「つかみ」「共感」「対話」といったスキルが要求されてきます。
このように、同じ「講師」という役割でも求められる機能・スキルが大きく異なるのです。同じように「話す、伝える」ことは大事なのですが、より具体的に求められているものは大きく異なるのでしょう。
昨年発刊した、拙著「研修・セミナー講師が、企業・研修会社から”選ばれる力”」にも、講演、セミナー、そして研修の違い、をまとめてみました。感じたことは、この業界で、「言葉の定義」が曖昧なことです。例えば「セミナー」に対する認識、捉え方は千差万別ですし、「講師」に対してのイメージや求めていることとなると、それこそ百人十色でしょう。
研修を企画する側、実施する側にも、この「講師に求められる”機能・役割・スキル・位置づけ”まで理解し、明示すること、そしてそれを講師に伝えて登壇してもらえるかどうか、ここが大きな鍵ではないでしょうか。
- モチベーション・組織活性化
- マネジメント
- コーチング・ファシリテーション
- ロジカルシンキング・課題解決
- 営業・接客・CS
大手企業を中心に人材育成・イノベーション開発の支援を行う。「人と組織の発酵を促す」をコンセプトに学びの設計、制度設計、アライアンス支援を行う
人材育成業界20年弱、1000名程の講師と会ってきた経験、多くの研修設計をしてきた経験から、人材育成目的ではなく、クライアントの課題解決視点での人材育成を行う。著書に「研修講師が企業・研修会社から”選ばれる力”」(同文館)がある
原 佳弘(ハラ ヨシヒロ) Brew株式会社 代表取締役 中小企業診断士/PDCFAインストラクター
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