VUCAの時代に対応する人事制度構築の新しい形
近年の技術革新のスピード感は目を見張るものがあります。AI、RPA、VRなどの浸透や発展によりビジネスはより加速度を増し、省人化に向けた動きが世界中で起きています。VUCAの時代(「Volatility(激動)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(不透明性)」という言葉に象徴されるように、ヒット商品を打ち出しても数年後にはすでに時代遅れ、という事態や小さなトラブルが大きな問題に発展し事業存続そのものを脅かしてしまうことも珍しくない時代に突入しています。
つまり、激動する時代の流れに応じてもしくは先取りして、事業戦略は刻々と変化することが求められます。事業戦略を変更するということは、それに合わせて組織戦略も柔軟に変化させる必要があり、ひいては社員一人ひとりがその流れに素早く適応することが必要といえます。組織・社員がついてこなければ事業戦略を柔軟に変化させても、それを実現することは困難になります。
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社員一人ひとりが事業戦略に柔軟に対応するようになるためには何をすればよいのでしょうか。メイン事業の最前線に立つ社員は世の中の流れの速さを身に染みて感じているかもしれませんし、管理部門の社員はこれまでの仕事のやり方を是として変化への抵抗があるかもしれません。世の中の変化に対して会社や社員一人ひとりが変化しなければならない、という点を全社へ浸透させるためには以下の手順が必要であると考えます。
① 経営層が変化の必要性を熱く訴え続ける
② 社員の行動変化を起こすような仕組みを発動する
③ 社員の変化を評価し処遇する
経営層と現場レベルでは事業や事業環境に対する捉え方に大きな差があります。経営層は会社を永続的に存続させ、社会に求められる存在意義を持つこと、結果として社員に相応の報いを示すことです。社員にとっては会社での就業は食べていくため、自分のキャリアアップの糧、と考えます。つまり社員一人ひとりが変化していくためには、会社の向いている方向と社員の目線を合わせる必要があります。目線を合わせた上で、その成果をどのように評価するのかという仕組みと、評価結果をどのように処遇へ反映するのかという仕組みを明確にすることが重要です。このような活動がVUCA社会で会社が強く存続するために欠かせないことだと考えます。
「経営層が熱く訴え続ける」という前提がある上で、社員一人ひとりの行動が変化する仕組みをどのように策定していけばいいのでしょうか。今回は数ある施策の中で、社員の処遇決定に関わる人事制度について考えてみたいと思います。
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人事制度構築の一般的な方法は、現状分析(課題の洗い出し)、概要設計(あるべき人材像の明確化とそれに合った制度の大枠決定)、等級制度設計、評価制度設計、報酬制度設計、制度導入の順番で行います。あるべき人材像を持つ社員を増やすために、計画立てて制度設計を行います。現行人事制度で発生している弊害や社員の受け止め方も考慮しながら約10か月間かけて設計した上で導入します。導入後に発見される不具合については情報収集を行い、一評価サイクルが完了したタイミングで調整するなど、社員に対して混乱を招かないような工夫をします。多くの企業やコンサルティング会社ではこのような制度構築方法を採っています。この手法はすでに人事制度を運用している会社や製造業のように納品先や納品量が決まっている場合などには有効な手法といえます。
一方でIT業などのように技術革新のスピードが速く常に時流に対応している企業や、スタートアップ企業のように事業情勢が刻一刻と変化するケースでは、事業戦略のスピードと人事制度構築スピードにミスマッチが生じることが想定されます。そこで新しい人事制度構築の形(アジャイル型人事制度構築)を提起したいと思います。ポイントは以下の通りです。
【スピード感ある人事制度構築(アジャイル型人事制度構築)のポイント】
① 会社の目指している方向に合った人事制度プロトタイプを1か月で固める
② 人事制度プロトタイプを1か月~2か月単位に分けて詳細設計し、即導入する
③ 1か月~2か月単位に分けて導入した制度は運用しながら不具合を発見し、都度調整する
※人事制度運用で重要なポイントの1つである目標設定はプロトタイプ完了と同時に運用する
アジャイル型人事制度も構築完了までは1年近くかかると想定されますが、1か月~2か月単位の制度はすぐに運用することで不具合を都度調整するため、2年目には人事制度と組織がかなりフィットした状態になっています。また1年間の人事制度運用を通じて全社員に仕組みの変化を感じてもらうことで、変化に対する免疫力が向上し、結果として事業戦略の変更への柔軟性向上にも寄与するものと考えます。
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アジャイル型人事制度は一部の制度構築後にすぐ運用に入ることから、人事担当者の負荷が大きくなる、既存の人事制度との整合が取りにくいといったデメリットもあります。以下のような観点から、アジャイル型人事制度と一般的な人事制度構築のどちらの手法を採用するか決定されてはいかがでしょうか。
アジャイル型人事制度が合うケース
・初めて人事制度を構築する企業
・なるべく早く人事制度を運用したい企業
・社員に変化を感じてもらいたい企業
一般的な人事制度構築が合うケース
・現行の人事制度の再構築をしたい企業
・オリジナリティの高い人事制度を導入したい企業
・企業規模が大きくプロトタイプではカバーしきれない企業
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株式会社アクティブ アンド カンパニー 代表取締役社長 兼 CEO
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大野順也(オオノジュンヤ) 株式会社アクティブアンドカンパニー 代表取締役社長 兼 CEO
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