より合理的な人材育成へ
人材レベル後進国日本
最近様々な人事に関する統計を目にします。特にショックを受けるのは他国との比較です。この30年間の中で人事のレベルは大きな向上はありませんでした。その結果給与はあがらず、生産性は下がるなど主要な指標が大きく下落しています。他国との比較においては極めて大きな差をつけられてしまいました。
日本人は勤勉であり優秀であると思っている人が多いと思います。しかしながらこれも他国と比べた人材レベルの比較では先進国では最下位、OECDの中で25位という悲惨な結果になりました。人材育成がほとんどできていないというのが現実です。これをなんとか早く改善しなければ日本の将来はないとも言えるような統計です。
現在の育成の問題1
現在行われている育成が充分でないことは明らかです。議論すべきは2つあります。
ひとつは量です。教育費投資、教育時間投資、自己教育のサポートなど量的にまったく足りないということが重要な一つのポイントです。これは経営者が教育を行っても経営の成果の向上に繋がらないと考えているからでしょう。
例えば日本企業の場合は業績が良い時に教育研修の予算は増加します。しかし業績が悪くなると教育予算を減額します。果ては無くしてしまう経営者もいます。業績が悪いというのは社員が環境にあった能力を保持していない、競合会社の人材育成が勝っているなどの要因があるでしょう。
したがって業績が悪い時ほど教育をさらに行う必要があります。減額するということ自体、人事が経営の成果と関連がないと思っていることの象徴です。
現在の育成の問題2
人材育成が上手く機能してない2つ目の問題は、教育の質が低いということにあります。人事部や能力開発部などが経営陣や事業部などから聴取した教育ニーズで教育を行うことが多くあります。
また教育の体系を作ることが重要と認識をしています。そもそも職種や等級制度が曖昧で、当然評価も適正に行われておらず、上司は正しい評価をしないような環境の中では、教育ニーズを認識することは極めて困難です。
正しい教育ニーズ把握はまず合理的でビジネスモデルに合った人事制度の下でしかできません。
仮に人事制度が適正に設計され運用されている状況では、教育ニーズの把握は極めて簡単です。職種別等級別の評価結果を集計し多くの社員が低い点数の評価項目の研修を行えば良いだけです。経営戦略、計画、職種等級構成、評価がすべて連動しているということです。エビデンスを持った教育ニーズ把握という観点では教育は評価項目に対しての教育を行うべきです。そして教育効果把握はその低かった評価項目がどの程度上がったかで測定できます。
このような環境にない教育担当者は極めて大変な苦労をしていると思います。教育ニーズ把握が口頭情報のみであり、それが正しいかどうかも判断がつかない中で教育を行わなければならないからです。
教育の量をあげるとともに計画に連動した高い品質の教育を継続して行っていけば、人事制度に定義されている優秀な社員が数多く育成されることになるでしょう。
まずは経営陣と人事部門で日本の人材レベルや教育投資の少なさのデータを共有し、人材育成への今までとは比較にならない量と経営計画に連動した質が高く効果的な教育を行うことを十分に議論していただきたいと思います。特に経営者は人材育成が企業の将来を決めるという認識を持たなくてはなりません。
*YouTube番組DigDeep人事「効果的な人材育成とは何か」を参考に執筆
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林明文(ハヤシアキブミ) 合同会社HRMテクノロジー 代表
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