無自覚なハラスメントはなぜ起きる?予防と対応を解説【後編】
職場でのハラスメントの相談数が年々増えていることをご存じですか。(※1)
ハラスメントの中には、行為者が気づいていない、無自覚なハラスメントも存在します。
無自覚なハラスメントが起きてしまう背景には個人だけではなく、組織も大きな要因となっているかもしれません。複雑な要因が混じりあって発生する無自覚なハラスメントに対し、本人にどう気づいてもらい、変化を促せば良いでしょうか。また予防や対応などはどのように進められるでしょうか。
- 一般的なハラスメントが起きる様々な要因とは?
- ハラスメントが無自覚におこなわれる理由とは?
- 無自覚なハラスメントにどう予防&対応すると良いか?
本シリーズでは上記の点について、3回に分けて解説いたします。
無自覚なハラスメントにどう予防&対応するのが良いか?
ここでは予防と対応に分けて押さえておきたいポイントと具体的な取り組みについて説明します。それぞれのポイントは以下の通りです。
現在の職場での業務状況や心境、関係性を把握することが無自覚なハラスメントを予防する上で押さえておきたい前提です。そこから意識せずにとっている自分の行動を振り返り、気づいてもらうことが重要です。ハラスメントの存在に気づいたときには適切な行動変化を実践するように促していきましょう。
【予防編】予防におけるポイントと取り組みの例とは?
ハラスメントが起きない職場づくりや予防策として、2つのポイントと施策例をご紹介します。
予防する上でのポイント
- 職場状況を定期的かつ客観的に把握する
- パワハラ等に関する個人の認知の差に気づく機会を設置する
無自覚なハラスメントを予防するためには、職場の現状を客観的に把握し、ハラスメントの危険性が潜んでいる個人の認知の差へのアプローチを職場状況に合わせて実施していきます。
施策例01|職場の全社調査
無自覚なハラスメントの実態や潜在する危険性に気づくため、職場の実態を把握することが大切な一歩となります。
全社調査によって社内全体を一斉に調査することができます。匿名性が担保されると、よりリアルな声が集まりやすくなります。定期的な実施で全社的にパワハラなどの現状を報告できる機会を増やすことも可能です。
実施する上でのポイントとしては厚生労働省のパワハラ概念をベースにしながらも、パワハラ認識の個人差も含めて測定することです。その両面を測れるような尺度を用いることで職場の実態を客観的に判断しやすくなるでしょう。
施策例02|コーチング形式の教育施策
無自覚なハラスメントへの取り組みとして、個別の教育施策も可能です。1対1で実施することにより、個人の認識に対して効果的にアプローチができます。
しかしコストと手間がかかるため、社内で並行して実施するハラスメント防止研修等との使い分けが必要です。
【対応編】対応におけるポイントと取り組みの例とは?
ハラスメントの行為が発覚した場合の対応として、2つのポイントと具体的な施策の例を紹介します。
ハラスメント事案に対応するうえでのポイント
- ハラスメントをうけた人には心理的な支援を最優先する
- ハラスメントの行為者には支援を通じて行動変容を促す
相談者と行為者それぞれの立場や状況に合わせた個別具体的なアプローチが重要になります。以下で取り組みの例を見ていきます。
施策例03|相談窓口の設置と相談者への心理的なケア
ハラスメントの早期発見、早期対応するための窓口の整備はどの企業においても求められます。ただ設置するだけではなく、相談窓口の認知向上や相談への心理的ハードルをなくすことが必要になってきます。
また、相談者のケアについては、メンタル不調やより深刻な状態につながることも考えられるため、優先度高く取り組む必要があります。
ここで大切なことは本人の気持ちを受け止めた上で、本人の今後の働き方やパフォーマンスをどう回復していくか、という建設的な対応です。ゴールは「加害者との紛争」ではなく、相談者自身の状態回復や職場環境を改善していくことです。そのゴールに向かい、必要に応じて産業医、保健師、カウンセラーなどの専門家の協力を得ながら具体的な支援をしていきます。
施策例04|専門家による行為者の行動変容支援
ハラスメントの行為者に対しては必要な処分や指導と併せて、事象の振り返りと行動変容の支援ができると、再発予防にも繋がります。この施策を進めていく上で大切なポイントは、2つあります。
1つ目は現状の職場課題やリスクを行為者自身が受け止めることです。
周囲の社員からヒアリングしたり、報告を受けているリアルな声や現場の状況について、行為者に伝えます。それによって生じる可能性のあるリスクを提示し、自身の行動変容の必要性を理解してもらうことが重要です。その現状を吟味し、本人が今後どう行動を変えるべきかを共に考える態勢を作ることにつながります。
2つ目は本人自身の行動への動機や気持ちを受け止めることです。
良かれと思ってとっていた行動だったり、熱心さが裏目に出てしまった行為の可能性もあります。感情を理解しながら、その思いを示す別の方法をともに考えていくことが重要になります。
問題行動の改善には本人が納得して取り組むための会社の枠組みや強い動機づけが必要になります。行為者の気持ちを受け止めた上で、その意義を理解してもらうことで行動の変容も促されます。
まとめ
本記事では無自覚なハラスメントが起きる要因やそれへの対策について解説しました。
ハラスメントが起きてしまう理由や背景は本人だけではなく、組織や関係性など会社での複数の要因が重なっています。無自覚なハラスメントに本人が気づくことが難しかったり、相談をすることへのハードルが高い場合もあります。
だからこそ会社全体で社内環境の現状を把握し、ハラスメントを起きにくい環境を作ることが大切です。万が一、ハラスメントが起きてしまった場合には、迅速かつ適切な対応が求められます。被害者へのケアはもちろん、再発防止の観点からは加害者の行動変容を十分に行うことが重要です。日頃からのハラスメント防止を促進する取り組みに加え、ハラスメント相談窓口の利用促進や関係する機関との連携を定期的に確認するとよいでしょう。
参考資料
※1 厚生労働省「令和2年度個別労働紛争解決制度の施行状況」
本コラムは、ピースマインドの人事・労務向けコラム『はたらくをよくするお役立ち情報』に掲載している記事を転載したものです。
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EAPコンサルタントとしての臨床業務の傍ら、研究、研修、サービス開発にも従事してきました。現在は、主にコンサルタントのマネジメントや育成支援を行っています。
後藤 麻友(ゴトウ マユ) ピースマインド株式会社 社員支援コンサルティング部 部長、EAPスーパーバイザー
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開催日:2024/04/22(月) 14:00 ~ 15:00