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Case_11 従業員の変調に気づく方法

当社では、管理職を対象にメンタルヘルス研修を何度か企画してきましたが、目に見えない心に関することですので、すぐに成果を得られるとは考えていませんでした。けれども今回、ある管理職が部下のちょっとした変化に気づいたことから、メンタル不調者を出さずにすんだのかも、と実感した出来事がありました。
営業部のAさんは快活で、当社若手のなかでも有望株です。主任として、店舗開発と既存店舗へのアドバイス等、毎日精力的に業務をこなしていました。そうした忙しい中でもAさんは身だしなみに気をつかい、清潔感のある服装で、いつもピカピカに磨かれた靴を履いているということでした。


繁忙が続いたある社内会議の席で、Aさんの上司であるBさんは、いつもピカピカだったAさんの靴が汚れているのに気がついたそうです。今朝は忙しかったのかな・・・と最初はなんとなく思っただけでしたが、会議中よく見ていると、発言も少なく、そういえば頼んでいた資料の1つが未提出のままだったことにも気がついたといいます。

気になったBさんは会議終了後、Aさんに声をかけて、それとなく話を聞いてみたところ、顧客とのトラブルを抱え、なんとか収拾しようとしているところだということがわかりました。Bさんは、「自分に相談してくれればさほど無理なく解決できることだ」と思ったそうですが、Aさんとしては迷惑をかけまいと必死で、身だしなみに気を使う余裕を失っていたようです。その後、BさんのサポートによりAさんの抱えていた問題は無事解決し、今また彼はピカピカに磨いた靴を履いて、元気に仕事をしているそうです。


この報告を受けて、つくづく感じたのは、日頃、部下とともに過ごす時間が長い現場の管理職が、より早い段階で部下の変化に気づけるということが、いかに大切かということでした。メンタルヘルス研修はぜひ今後も続けていきたいと考えているのですが、上司のBさんのような管理職を増やしていくためにはどんな内容の研修にすればよいのでしょうか。

 

■こころの声■

  • あっぱれ!Bさんは本当にいいセンスをお持ちですね。うちの管理職連中では到底無理です。
  • 効果のあるメンタルヘルス研修ならうちもやりたいけれど、どうやって業者を選んだらいいのか・・・難しいですよね。

 

【対応の考え方】

「常態からのズレ」「集団からのズレ」に気づく

Aさんが大事に至らなくて本当によかったですね。おっしゃるとおり、従業員の不調に気づくには、日頃、部下とともに過ごす時間が長い現場管理職の対応が鍵となります。

部下の変調を早期発見するには、Bさんがやっていたように、「いつもの彼と何か違う」「他のメンバーとどこか違う」に気づくことが大切です。そのためには「いつもの彼」を知っている必要があります。日頃のその人の、人となりを知る、つまり普段のコミュニケーションが大切ということです。上司のBさんは、Aさんがいつもは服装に気をつかい、靴の手入れもしっかりし、普段は他のメンバー同様、活発に発言するということを知っていたので、Aさんの変化に「おや?」と気づけたわけです。

このほか、客観的に把握できることをあげると、遅刻、早退、欠勤などの勤怠面や、残業や休日出勤が多いわりに成果が伴っていない、ミスが増えたり、報告や相談をあまりしてこなくなったり、などがあります。また、例えば、挨拶をしなくなった、これまでは同僚とランチへ出かけていたのに、ある時から一緒に行かなくなった、など、仕事以外の場面でも“部下の変調に気づくポイント”はいくつかあります。

とはいえ、いつも監視しているわけにはいきませんから、“気づく”というのは、なかなか難しいことでもあります。しかしこうした部下の変調は、メンタル不調に限ったことではなく、プライベートで心配事があって仕事に身が入らない、仕事のトラブルがあって一人で悩んでいたなど、なんらかの困難な状況があるときに起こりやすいものです。そうしたことから考えても、前述の“部下の変化に気づくポイント”を念頭に置き、管理職は部下に対して常に感度よくアンテナを張ることが、業務管理上も大切です。

 

<気づく、聴く、つなぐ>

部下の変調に対応する際にポイントとなるのは、①変調に気づき、②状況を把握するために声をかけて話を聴く、③心配がある場合は専門家へ連携する、の3ステップです。私たちは、日頃一緒に過ごしている職場のメンバーのことを、いつも見ているつもりでも、意外に気づいていないことが多いものです。この事例では幸いにも早期発見できましたが、実際には部下が欠勤や休職になってから、「そう言えばあの時、靴が汚れていたな・・・」と思い返すケースが多いのではないでしょうか。しかしその時点では、管理職は、休んでいる部下の仕事をカバーすることに奮闘せざるを得なくなります。管理職の皆さんには、そうなる前の予防策をぜひ知っておいていただきたいと思います。

メンタルヘルス研修はその内容が浸透していくまでに多少時間がかかりますし、本来の成果という点では中長期的に取り組んでいく必要があります。継続的に取り組んでいただくためにも、研修を企画する際には、この3ステップもその1つですが、すぐ役立ちそう、ちょっと意識してやってみよう、と思えるような内容を盛り込み、少しづつスキルアップしていけるよう、計画していくことをおすすめします。

 

文責:保健同人社EAPコンサルタント

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保健同人フロンティアEAPコンサルタント(ホケンドウジンフロンティアイーエーピーコンサルタント) 臨床心理士、保健師、管理栄養士他

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