派遣社員の就業評価~キャリア形成支援との連携で本質的な運用を
このコラムのサマリー
- 派遣社員の評価は「自己評価」「派遣先評価」「派遣元評価」そして「フィードバック」の 4 ステップが必要
- 評価には派遣先の協力が不可欠。法制化をチャンスととらえ、より協力を得やすい運用を目指したい
- 評価運用を通じて人を活かす。「評価」は人材ビジネスの根幹である
派遣社員の同一労働同一賃金が法制化され、労使協定方式を採択する派遣会社に対して「派遣社員の評価」が義務付けられました。労使協定には、「賃金の決定に当たっての評価」について明記する必要があります。 派遣社員の待遇決定については、派遣元労使協定方式を採用する派遣会社が約 9 割を占めています(事業報告書(労使協定書)のサンプル調査厚生労働省より)。派遣社員は派遣先で働くというその特徴から、公正かつ適正な評価運用は正社員以上に難しいと言ってもいいでしょう。派遣社員の処遇改善やキャリア形成支援を実施する際のよりどころとして、今後ますますその重要性を増すと考えられる「派遣社員の評価」。どのような点に留意して評価の仕組みを整えればいいかをお伝えします。
ーー派遣社員の就業評価は4つのステップで
2020年4月の派遣法改正によって、派遣社員の就業評価が義務付けられました。しかし、同じ職場で働いている正社員の評価もなかなか容易なことではありません。ましてや派遣社員は派遣先という別の職場で働くため、その評価はより難しくなります。 評価は、働く人のモチベーションを上げ、成長を促すために大変重要な要素です。派遣社員にとって納得感のある、今後につながる評価を行おうと考えたときには、「派遣先評価(就業状況評価)」が特に重要です。派遣社員にとって同じ職場で直に働きぶりを見ている「派遣先の評価」が気になるのは当然のこと。「派遣元」が一方的に評価するのでは、評価される派遣社員にとって納得のいく結果にはなり得ないでしょう。 派遣社員の評価には、以下の4つのステップが重要です。
- 派遣社員本人の自己評価、業務の振り返り
- 派遣先評価、就業状況のヒアリング
- 1.2.を踏まえた派遣元の評価
- 派遣社員への評価結果のフィードバック
この一連の評価フローが今後のスタンダードになるのは間違いないと思われます。
ーー評価の目的は人材育成。派遣社員のキャリア形成支援につなげ長期・安定就業を目指す
法制化から1年が経過しましたが、まだまだ形式的な運用に留まる派遣会社もあるのではないでしょうか。 評価の目的は人材育成にあると言っていいでしょう。評価の運用を派遣社員の「キャリア形成支援」「処遇改善」につなげられるかどうかが大きなポイントです。
派遣就業という特殊な構造を踏まえれば、自己評価と派遣先評価があって初めて適正な評価となります。正しいステップを踏んで行った評価なら、派遣社員に結果をフィードバックしたときに「また頑張ろう」「次はこうしよう」という意欲を生み出し、長期・安定就業につなげることが可能です。すなわち、「派遣社員の評価」は派遣会社の業績にも影響する重要なテーマでもあるといえます。
派遣社員の評価を語る際に注意したいのは、「評価をしたから時給が上がる」という単純なものではない、ということです。キャリアアップして時給を上げたい人、同じ職場で安定的に仕事をしたい人、派遣社員それぞれに働き方の希望があります。その希望を叶えるためにはどのような評価が必要か、そのためにはどう努力してもらうべきか。評価は、結果を導くまでのこのような「対話」や「理解」、「共感」といったプロセスがとても重要です。対話があれば、結果のフィードバックも納得感をもって受け入れられ、モチベーションもあがるはずです。年に一度、評価をするために状況を聞きに行く、派遣先に評価を依頼するという「形式的な評価」から、半期評価や四半期評価など、より頻度を上げて評価機会を持ち、キャリア形成支援と連動させる「本質的な評価」への転換が求められています。
ーー派遣先企業の負担を軽減し協力してもらいやすい評価運用に
派遣社員の評価が困難なのは「目の前にいない」ことともう一つ、「派遣先がさまざまだ」という点です。
評価項目については、「派遣先によって異なる内容」でないのが望ましいです。その派遣先でだけ求められる能力だという可能性が高いからです。本人の希望に沿って、高めたい能力を高めさせてあげる、ということは必要ですが、派遣先での職務の中で、必要とされるスキルが先方の期待通りなのか足りないのか、貢献度はどうなのかというところが評価では重要です。「業務の正確性」「業務の処理量」「スピード」「納期管理」など、職務給で働く派遣社員が派遣先に関わらず必ず求められる内容をベースにするべきでしょう。派遣社員がそばにいないため派遣先の評価が必要、さらにその派遣先がさまざまなので、本人の納得感や社内の公平性を保つためにも、十分留意した評価項目が必要です。
「派遣元によって評価項目も依頼内容もバラバラで大変だ」という派遣先担当者の声をよく聞きます。複数の派遣会社の派遣社員が働く職場では特にそうでしょう。例えば上記の「業務の正確性」「業務の処理量」「スピード」「納期管理」などをベースとした、派遣業界で共通した評価の考え方ができるといいと思います。派遣先も協力しやすいだろうし、出てきた評価結果も、派遣会社を問わず業界全体で理解できるようなものになるでしょう。派遣社員にとっても、自分のよい評価が、派遣元・派遣先を超えて持ち運べるようなものになればより受け入れやすいものになると思います。
派遣社員の同一労働同一賃金も「働き方改革関連法案」のひとつ。「働き方改革は『働きがい改革』であるべき」というのが私の持論です。公正で適正な就業評価は働きがいにつながり、働く人のモチベーションに直結するものだと考えています。派遣法によって派遣会社に求められることは増えていますが、中でも「評価」は特別です。人材に関わる業界である以上「評価」に力を入れるべき、正しい評価運用で人を活かすべきだと思います。
前職の大手派遣会社では、法改正を見据えて何年もかけて評価運用の準備を整えていましたが、派遣社員の評価は特定の会社や大手数社だけが独自に取り組むのではなく派遣業界全体が協働していくべきテーマだと考えます。ベースの仕組みを共有化しつつ実際のキャリア支援や処遇改善などの対人業務の分野で各社が切磋琢磨するのが理想です。正しく派遣社員を評価できる派遣会社かどうかが、派遣社員の派遣会社選びにとっても重要になってくると思います。
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Life Ship(株)は国内初の派遣社員評価システムと個人時代の福利厚生の提供を通じて、働きがいを創造します。
大手派遣会社で20年の勤務経験から多くの派遣社員、派遣先企業様の生の声を聞いて参りました。個人の働きがいと組織の生産性を共に向上させる評価システムをご提供します。
田形 正広(タガタ マサヒロ) Life Ship株式会社 代表取締役
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