同一労働同一賃金と無期転換の矛盾
同一労働同一賃金の「同一」であるか否かは、一体誰と誰を比較するのでしょうか。大抵の人は「正社員」と「非正規社員」と答えるかもしれませんが、それは正しくもあり、誤りでもあります。今回のコラムでは、同一労働同一賃金と無期転換者の関係を考察してみます。
そもそも「正社員」と「非正規社員」という用語は法令には存在しません。来年度から改正施行されるパートタイム・有期雇用労働法では「通常の労働者」と「短時間・有期雇用労働者」と定義されています。これを分かりやすく言えば、「無期フルタイム」と「それ以外」という区分となります。通常は「正社員=無期フルタイム」ですから、正社員と非正規社員と置き換えたとしても、あながち間違いではありません。
ところで、今回の法改正では、無期フルタイム間(正社員同士)の待遇格差は規制対象になっていません。ここで問題となるのが、2018年4月以降に実質スタートした無期転換ルールです。もともと有期フルタイムであった契約社員が無期転換した場合、法的には契約期間のみを無期化すればいいわけですから、待遇は契約社員のまま、ということが多いはずです。ところが、転換後は「無期フルタイム」という身分になるため、同一労働同一賃金法制の下では保護対象外となります。
結果として、改正後は有期契約社員の待遇が正社員に近づき、無期転換した契約社員の待遇は従前のまま、という現象が起こり得るのです。つまり、無期転換者の待遇が相対的に最も低くなっても、法的には問題ないということになります。ただ、理屈の上では許されても、そのようなアンバランスは全社的な人事管理という面で現実的ではありません。
冒頭で問題提起したように、「正社員」と「非正規社員」という構図で捉えてしまうと、このような盲点を見過ごしてしまいます。同一労働同一賃金への実務対応には、無期転換ルールとの関係も考慮しながら、待遇バランスの改善に対処していく必要があるでしょう。
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宮川 淳(ミヤカワ アツシ) アクタスHRコンサルティング㈱/アクタス社会保険労務士法人 シニア人事コンサルタント
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