懸念される介護離職の増加
現在、家族の介護を理由とする離職(以下、介護離職)は、大きな割合を占めるわけではありません。
しかし、2020年代前半ごろから大幅に介護離職者が増加する懸念があります。
当社のライフプランセミナーを受講された方の中には、サードライフという言葉を覚えていらっしゃる方もいるでしょう。サードライフとはつまり、介護期のことです。75歳になると何らかの介護サービスを受ける可能性が年齢を取るごとに高くなっていきます。現在でも75~79歳の人口のうち、10%以上の方が公的介護サービスを受けていると言われています。また、WHO(世界保健機構)では日本人の健康寿命を男性73歳、女性78歳としています。健康寿命とは、自立した生活が出来る寿命年齢という事なので、それらの年齢に達すると、何らかの公的介護サービスを受ける可能性が高くなると考えた方がいいでしょう。
2020年前半ごろから、介護離職者が大幅に増加するという懸念があると書きました。これはつまり、団塊世代が75歳に到達し、要介護者の急増が予想されるという事です。さらに、その子ども世代である団塊ジュニアは未婚率が高く、兄弟姉妹数も少ないため、家族内での介護の分担が難しくなるであろうことも大きく寄与する要因です。
介護が必要になる一番の原因は脳卒中であることからもわかる通り、「介護」は突然やってきます。
企業が「どの労働者に」「いつ」家族の介護問題が発生するかを予測することは難しく、またすでに介護問題を抱える労働者の状況を把握することも容易ではありません。潜在する介護離職問題は、企業にとっても人材が突発的に流出するリスクを持っています。また、労働者の立場からも、離職期間が長期化すれば、新たに安定した雇用機会を得ることが難しくなることも予想されますし、今後人口減による労働力人口が減少する日本社会全体においても、間違いなくマイナスです。つまり、介護離職は、企業、労働者、社会の「三方損」となります。
家族に介護が必要になった場合、私たちは退職を考えてしまうかもしれません。しかし、介護離職をして介護に専念するというのは私たちの想像以上に大変なことのようです。
平成24年の厚生労働省委託調査「仕事と介護の両立に関する労働者アンケート調査」では、介護離職をされた方のほとんどが、経済面・肉体面・精神面のどの面でも負担が増したと回答しています。
日本人はまじめな性格の方が多く、民間サービスはおろか公的サービスでさえも受けずに自分でしようと考えられる方もいらっしゃるとか。その結果介護に行き詰まり、介護うつや介護虐待、介護心中などといった社会問題に発展することにもなりかねません。もし、そういう問題に直面した場合、自治体をはじめとする公的サービスや会社のサポート制度に何があるかをしっかりと調べ、出来るだけ仕事をしながら介護をするという方法を模索しなければいけません。
また、社会や企業にも、いろいろな介護者に対応できるような柔軟な制度や福利厚生を構築していただきたいと思います。
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塩見 太郎(シオミ タロウ) 株式会社FPコンサルティング 広報企画部長
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