人材マネジメントの転換期に向けて対応とは
昨今の働き方改革やAIの浸透により、企業における人材マネジメントは大きな転換期を迎えたと言えます。
働き方改革とは、生産性向上であり、生産性が上がるということは、より少ない人員・労働時間で効果を生み出すことです。
また、AIによるシステムの浸透は、これまで完全に定型化された単純作業に限定されていたものが、ある程度複雑な作業も対応できるようになり、これにより、少ない人員・労働時間で効果を生み出すことが出来るようになりました。
一方で、電通事件以来、労働行政はますます強化されてきており、特に時間外労働の「手続き」の取締り件数は、近年急速に増加してきています。しかし一方で進めるべき柔軟な解雇における法整備は遅々として進んでいません。
本来、時間外労働を減らすということは、その分、人員を抱える必要があり、労働時間が減る分、時間外労働ではなく、人員調整という手段を講じなければ辻褄があわなくなります。
業務の繁忙に応じて、時間が増やさずに、人員を最大限活用しなければならないという必要が出てきますが、それが柔軟にできない法律となっています。
以上のようなことから、より少ない人員・労働時間で同じ効果を得ることは勿論ですが、作業的な仕事ではなく、企画的な仕事を中心により裁量に合わせた業務を進めていくことができるように振り向ける必要があります。つまり、企業における人材の高度化はますます促進していかなければならないということが言えます。
それでは具体的にどのようにすれば良いのでしょうか。
従業員の区分けを等級や役職で区分している企業が多いと思われますが、根底から見直すことが求められます。役割や役職、職務等で構成している場合も多くなりましたが、実質的には職能資格制度という実質年齢給で運用されている企業がほとんどだと思います。
それを役割及び役職(実際のラインマネジメントの有無)で区分することが望ましいと思われます。その区分け方として、大きなイメージを捉えるために、労働時間制に当てはめて説明したいと思います。
労働時間制とは、本来、3通りあります。
1.管理監督者
2.みなし労働時間制(=裁量労働時間制)
3.上記2つに該当しない人
1.管理監督者とは、所謂、経営と一体となっている管理者のことを指します。厳格に運用するとすれば、経営者に近い存在であると言えます。企業・拠点をマネジメントすることが求められます。
次に、2.みなし労働時間制(この場合、裁量労働に限定)とは、業務の進め方を従業員に一任することが望ましい(しなければならない)業務に従事している人が適用されます。所謂、機械等に代替できない高度な専門職であると言えます(一部例外はあります)。
そして、3.それ以外の人、については、業務の効率化を考え、AIを使うスキルが求められる人と、そうでない人に分けられます。
基本的には上記の考え方に基づきますが、それらの要素を踏まえて、キャリアパスの設計をも必要になってきます。
これまでの人材マネジメントは、単一ラインが基本でした。総合職・一般職と言う区分けはありましたが、大企業を始めごく一部の企業でしか採用されていない、仮に採用されていたとしても、総合職という括りは非常に大きすぎて、人材の区分けが適切にできていない場合が多々ありました。また、一般職との厳格な区分は、多様な人材の活用という意味においては、望ましくない状態だと言えます。
そして、もう一つ重要な要素があります。それは、会社・業務に対して、やりがいがあるかどうかです。バブル崩壊以後、働く人の価値観は大きく変わっています。正確には、変わった人が多くなったという表現が的確でしょうか。
バブル崩壊後、正社員として就職できなかった人が多くなりました。その結果、非正規社員・派遣社員にならざるを得えず、さらにリーマンショック以後、その人たちを中心に、大規模なリストラが行われたことが原因であると言えます。「一生懸命仕事をやったとしても、会社は裏切るもの・会社は搾取しようとするもの」、などの先入観が出てきたと考えています。
元々、仕事に対してもそれほどのやる気がなかった人が、このような社会情勢を背景に、仕事に一生懸命にならないことは恥ずかしいことでない、むしろ、プライベートがなく、恥ずかしいことだということを主張できる社会になりました。
また、一方で、長時間労働が「美徳」だとしてる世代は多く存在しています。感覚的ではありますが、バブル崩壊の以前から就労している人は、潜在的にこのような考えを持っている方が多いように思えます。バブル以前、団塊ジュニア世代、2000年以降からリーマンショック、リーマンショック以降と、単純に分けても4つの価値観が混在している、その価値観は背反することにもなっています。
共通の価値観が崩壊した中、多様な価値観を踏まえた上での人材マネジメントが必要になってきます。
役割の厳格な区分と、会社・業務に対するやりがい、この2つを上手く区分し、AIの活用や生産性向上をもたらし、少ない人員・労働時間で効果を生み出し、法的にも、人材の活性化的にも、充実した組織になり、結果として、企業の業績向上の一助にして頂ければ幸いです。
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