新人・若手のメンタルダウン予防に必要な関わり

2024年度入社 新入社員が入社して約1か月。新入社員の皆様のご様子はいかがでしょうか。
既に配属されたところ、配属はもう少し経ってからのところもあることでしょう。

入社後すぐに転職サービスサイトに情報登録すると言われる新人・若手世代。離職も気になるところですが、現実的に増加傾向にあるのが、新人・若手世代のメンタルダウン。

そこで今回は、2024年度入社時研修で接して感じた新入社員世代の思考や行動傾向を紹介することで、思考や行動特性をふまえた関わりにより、メンタルの安定と成長しやすい環境づくりについて考えてみたいと思います。


2024年度入社新入社員の印象
入社時研修では複数の講師が、数百人の新入社員の皆様に接しました。各講師にヒアリングしたところ、素直で真面目、集中力もあり研修中に学んだことの習得度合いも大変優れているという点が共通していました。中でも、グループワークなどはとても楽しそうに取り組む姿が印象的だった語っていました。私もほぼ同様の印象を得ています。

一方で「素直で真面目だからこそ、メンタル面が気になるね。いい環境に配属されるといいけれど…」
という見解も一致していました。

では、彼らの素直さ、真面目さがなぜメンタルに影響してしまうのでしょうか。

先般、東京商工会議所様にて2024年度入社新入社員(約1000人)の意識調査が公表され、その一部に興味深い結果が出ておりましたので共有させていただきます。


▼2024年度 新入社員意識調査 (東京商工会議所実施)の一部項目を紹介▼
本調査は、毎年、東京商工会議所主催の新入社員研修を受講された新入社員を対象に行っているアンケート調査です。

本年度の実施期間は4月2日~5日、約1000人を対象に実施されました。
その調査項目に「社会人生活で不安に感じること」(複数回答)があり、次の項目は、新入社員の二人に一人が不安に感じているという結果でした。

【社会人生活で不安に感じること】アンケート番号9
仕事が自分の能力や適性に合っているか・・・48.9%
上司・先輩・同僚とうまくやっていけるか・・・・・42.8%
仕事と私生活のバランスがとれるか・・・・・・・・40.3%

入社時研修で「レジリエンス」や「メンタルヘルスセルフケア(メンタルタフネス)」などのプログラムを導入されているところも多い昨今ですが、それと合わせ、次の2つの点は、職場で実際に指導にあたるOJT担当者と連携を図っていただくとよいように感じています。

配属後の職場指導にあたりOJT担当者と連携しておきたいこと
1つ目は、仕事の見通しを先に伝えておく
2つ目は、コミュニケーションのタイミングを予め決めておく

1)仕事の見通しを先に伝えておく
ここで少し入社時研修で、講師が意識していることをご紹介します。
入社直後は大きな環境変化でストレス度合いの高い時期です。また近年は、入社前に見聞きする「ハラスメント」などの情報により、無意識に「自分は大丈夫だろうか」と不安を感じている人が増えています。
その上に今年は、自然災害や寒暖差が大きいなど、これから一人暮らしをする人は特に、不安が増す要素が重なっています。
数年前までは「新生活にワクワクする」という人の割合が多かったものですが、コロナ以降は特に、「ワクワクと不安が入り混じる」気持ちが強くなっています。


以上のような心理面を考慮し、入社時研修では、目的とゴールと合わせて、意識的に1日のタイムスケジュールを明確に伝えます。そうすることで、新入社員の立場に立ってみると頑張りどころ(自分でコントロールできそうな余地)が見え、精神的なゆとりが生まれる効果があると考えるためです。

では、タイムスケジュールを伝えないとどうなるかというと、一定時間を経過すると、一人、二人とそわそわとし始め、全体的に集中力が低下し、パフォーマンスが落ちます。パフォーマンスの低下は、本人たちの不満因子となり、研修を提供する側との信頼関係が崩れることにつながります。

1日のタイムスケジュールなど、ささいなことのように感じますが、自分でコントロールできることが少ない、立場の弱い新入社員だからこそ、コントロールできる余地を残しておくことに効果があります。

このことは、職場配属後により顕著で、1日(あるいは、週間、月間)の見通しがある職場と、そうでない職場では、モチベーションやストレス度合いに大きな違いとなって現れます。

配属後の職場が場当たり的であるとストレス度合いが強くなるので、この点は職場の受け入れ態勢確認時のポイントとなるでしょう。


2)コミュニケーションのタイミングを予め決めておく
入社時研修では、報告・連絡・相談など、コミュニケーションのトレーニングを多くの組織で取り入れられていると思います。しかし、自分から働きかけてくるメンバーは(トレーニングをしても)限られていたのではないでしょうか。

素直で真面目な新入社員世代は、上司や先輩の忙しさの度合いに敏感で、迷惑をかけたくないという気持ちが強く、自分から働きかけることをためらう傾向があるようです。

そこで、上司や先輩の側から、報告・連絡・相談、確認のタイミングを予め決めておいていただけると、彼らも、そのタイミングに合わせて確認事項をまとめておけるので、安心してコミュニケーションが取れ、前向きな意欲が持続しやすくなります。

本来は、主体的に新入社員の側から働きかけてほしいところではありますが、近年の新入社員は、新型コロナウィルス感染症の影響で、クラブやサークル、アルバイトなどの社会的経験機会が限定的にならざるをえませんでした。

そのような背景から、組織活動そのものに慣れるのに少し余裕が必要といえます。一つの目安として入社時から、3カ月~半年程度は「組織活動に慣れる」ことも含め、彼らの側に立った施策を講じておくことが必要なようです。

以上のことから、「仕事の見通しを伝える」、「コミュニケーションのタイミングを予め決めておく」

この2点は、入社から年次の浅い社員が安心して業務を身に付けていく上で必要な環境といえるでしょう。その環境をつくることができると、メンタルダウンの予防のみならず、離職問題の低減にもなると思います。
是非、実際のOJT指導担当者に現状を確認いただき、
行われていないようでしたら、上記2点を意識的に行っていただくよう、促がしてみてはいかがでしょうか。

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原田 由美子(ハラダ ユミコ) 代表取締役(人材育成コンサルタント、キャリアコンサルタント/国家資格)

原田 由美子
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