社長はつらいよ 人事労務問題篇
最近、社長は大変な仕事だとつくづく感じています。もちろん、世の中に様々な仕事がある中で、楽な仕事など存在しないのですが、社会的な責任の重さと、企業内のすべてをマネジメントする難しさを考えると、経営者というのは最も大変な仕事の1つだと思います。
特に、私がお付き合いをさせて頂いている中小企業の社長の多くは、人事労務関連で何らかの問題を抱えています。
経営環境の急激な変化によって、やむを得ず社員をリストラせざるを得ない社長メンタルヘルス不全によって急に出社しなくなった社員に対応している社長退職した社員から、在籍中に叱責したことに対しパワハラで賠償を求められた社長など。
どの社長も、社員のことを非常に大事にされている方です。それにもかかわらず、「人」に関する問題が発生してしまいます。特に中小企業の場合は、社長と各社員の間の人間関係が強いので、社員一人ひとりの様々な感情と直接対峙しなければならない社長の心の負担は相当大きいはずです。
「人」の問題に関する直接的な原因は個別のケースによって異なりますが、そこには「雇用」という会社(社長)と社員との関係に、もともと内在する共通の背景があります。
それは、「雇用」という関係を結んだ瞬間、会社(社長)と社員は互いに簡単には別れられない関係になってしまうということです。
もし、雇用関係ではなく、会社(社長)と個人事業主(フリーランサー)との業務委託契約の関係だったら、会社(社長)側からすれば不況で仕事がなくなったり、個人事業主が病気で仕事ができなくなったりしたら業務委託をやめればいいし、個人事業主側からすれば、その会社(社長)と付き合うのが嫌なら無理して仕事を受ける必要はありません。
業務を委託する側(会社)と、業務を受託する側(個人事業主)がいわば相思相愛でなければ成立せず、両者の関係はあっさりと解消されます。
そして、業務の委託側と受託側がくっついたり、離れたりを繰り返すことで、常に相思相愛の仕事集団が実現できるのです。
このような関係であれば、雇用関係に見られる「人」の問題の多くは発生しません。
IT関係などの知的労働については、個人事業主として活動する方が結構いらっしゃいます。また、こうした個人事業主が仕事場所を特定せず、カフェや共同オフィスなど、状況に応じて場所を変えて仕事をする「ノマドワーキング」という形態が増加しています。
ところが、こうした形態は、特に個人事業主に高い自立意識が求められるため、誰でも簡単に実現できるというわけではありません。また、そもそもそのような形態を望んでいない人も多く存在します。
そのため、現実的にはある程度の期間継続する「雇用」関係を締結して、社員は会社に労働を提供し、会社はその対価として社員に賃金を支払うという形態が主流であり、今後もそれは続くでしょう。
私は、社長が「人」の問題で悩まなくていいようにする方法はないだろうかと考えています。雇用という形態をとりながら、業務委託契約のメリットを会社(社長)と社員の両方が受けられるような仕組みを探しています。
これに対する明確な答えはまだ出ていないのですが、1つ言えるのは、社長は常に社員の自立意識を高める工夫をする必要があるだろうということです。
つまり、ある程度真面目に仕事をこなしていれば賃金をもらえるのではなく、仕事を通じてその会社に貢献し、かつそれが会社に認められてはじめて賃金をもらえるのだという意識を社員に持ってもらうことです。
さらに、「いざとなったらこの会社以外でも自分が必要とされるところを見つけ、生活していくことができる」という意識を社員一人ひとりに日頃から持たせるということです。
そのためには、社員がスキルアップできる環境を用意しておく必要があります。
これが実現できれば、社長にとっても社員にとっても、望ましい関係になると思います。
では、これらを具体的にどうやって実現するか。
月並みですが、経営理念、経営計画、目標管理、人事ポリシー、人事評価制度、賃金制度、教育研修制度、などを互いに連動させながら構築し、地道に運用していくことです。
その際、重要なのは、「魂を込める」ということです。社長の思いがそれらに凝縮されているようなものでなくてはなりません。各制度の根底に一貫して流れる社長の思いに日々触れることによって、社員の意識が作られ、会社の風土として定着していくのです。
私は、そのお手伝いをすることで、会社(社長)と社員が良好な関係を築き、社長が「人」の問題で悩まなくてもいいような環境づくりに少しでも貢献したいと考えています。
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「人事評価問題」「未払い残業問題」「パワハラ問題」「労働組合問題」を専門とする中小企業診断士・社会保険労務士です。
人事制度(等級制度・評価制度・報酬制度)改革や、目標管理制度を絡めた経営計画策定支援、就業規則等の各種規程作成支援等を通じて、労務トラブルを未然に防止し、経営者と従業員の双方が気持ちよく働ける環境づくりを支援します。
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