マクドナルドの定年制度復活は残念
先日、マクドナルドが、過去に廃止した定年制度を再び復活させるということを発表しました。定年制の復活と同時に65歳までの再雇用制度を導入し、雇用継続を希望する社員の健康や能力を判断して年間契約で雇用するとのことです。
つまり、多くの企業と同じ仕組みに「逆戻り」するということになります。
定年制の廃止によって、経験豊かなベテラン社員が自身の成果をあげることを優先してしまい、若手社員の育成が疎かになってしまったので、定年制度を復活させ、人を育てていく企業文化を再度築き上げるということです。
このニュースを見て、私は非常に残念でした。私は日本の企業から定年制度がなくなればいいと考えていますが、それがいかに難しいかを知ったからです。
マクドナルドが発表した定年制度復活の理由は、あくまで建前だと思います。
ベテラン社員が若手社員を育成する企業文化を築き上げたいなら、定年制度を復活させなくても、ベテラン社員の人事評価項目に人材育成の観点を盛り込めばよいからです。
定年制度復活の本当の理由は、日本の場合、定年制度があった方が人件費を削減できるからだと思います。
定年制度を廃止すると、60歳を過ぎた段階で一律大幅に給料を下げることは困難です。しかし、定年制度があれば、60歳以降は年契約の嘱託社員として再雇用すれば、大幅に給料を減らすことができます。それが可能なのは、雇用保険に高年齢雇用継続給付基本給付金という仕組みがあるからです。
高年齢雇用継続給付基本給付金とは、60歳以上65歳以下の賃金月額が、60歳到達時の賃金月額の75%未満に低下した場合について、最大で賃金月額の15%相当額が支給されるという制度です。
企業側からすると、60歳以上の社員の給料を雇用保険が一部肩代わりしてくれるということなので、非常にありがたい仕組みです。一方、60歳以上の社員にとっても、雇用保険がある程度補填してくれるので、嘱託社員で給料が下がったとしても、まあいいだろうということになります。
こうして、企業側、社員側ともに、定年制度があった方がメリットを享受できることになります。マクドナルドは定年制度を復活させることで、再びこのメリットを享受する方が、経営的に望ましいと判断したのだろうと思います。
高年齢雇用継続給付金の趣旨は、「給付金を出すから、企業は60歳以降も継続して雇用できるようにして下さいね」ということですが、一方で「60歳以降も正社員としてそれまでと変わらずに雇用するよりも、いったん退職させて嘱託社員として雇用した方が経営的なメリットがある」という状態になってしまっているのです。
最近は、少子高齢化に対応するためには、女性や高年齢者が活躍できる場を増やす必要があると叫ばれていますが、この高年齢雇用継続給付金が、それを阻害する要因の1つになっていると思います。
私は、自営業者と同じく企業等に雇用される人も、いつ仕事を引退するかは自分が決められるようになるのが理想だと思います。働くことは人生の生きがいの1つでもあるからです。その機会を60歳や65歳という年齢で一律に奪ってしまう定年制度は、なくした方がいいと考えています。
ところが、国の制度自体が定年制を前提に作られているという現状を、今回のマクドナルドの定年制復活というニュースであらためて実感しました。マクドナルドは、将来的に定年制の廃止を目指していることには変わりがないということなので、その日を待ちたいと思います。
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