企業のメンタルヘルス対策 ~進め方と成功させるためのポイント
前回のコラムでは、職場のメンタルヘルス対策に必要な、3つの予防と4つのケアについて解説しました。今回は、そこからさらに一歩進み、職場でのメンタルヘルス対策の具体的な進め方と、成功のポイントについてお話ししていきます。
メンタルヘルス対策の進め方
まず、会社でメンタルヘルス対策の取り組みを進めていく際の大枠の流れについてご説明します。
STEP1:メンタルヘルス対策に関する方針表明
まずは全労働者に対して、会社としてメンタルヘルス対策を推進してくことを表明します。メンタルヘルス対策に取り組むことを労働者に周知し、理解・協力を促し、組織全体でメンタルヘルス対策に取り組んでいく風土を醸成することが大切です。
STEP2:衛生委員会における調査審議
メンタルヘルス対策の推進にあたっては、会社が労働者の意見を聴き、会社の実態に即した取り組みを行うことが重要です。衛生委員会にて職場の実態や課題、メンタルヘルス対策推進の目的などを話し合いましょう。また、会社が労働者のメンタルヘルス対策のために行う教育研修などの情報提供、相談体制や職場復帰のサポートなどについて定める「心の健康づくり計画」の策定や実施体制の整備、具体的な実施方法、実施にあたって個人情報保護に関する取り決めなども衛生委員会において審議します。
STEP3:心の健康づくり計画の策定
メンタルヘルス対策は中長期的な視点で、計画的に継続して行うことが重要です。そのためには、前述した「心の健康づくり計画」を策定する必要があります。「心の健康づくり計画」の策定は、労働安全衛生法で定められた義務です。策定においては、下記の7つの事項を満たすようにします。
STEP4:取り組みの実施
計画を策定したら、3つの予防と4つのケアが適切に実行されるように各所連携しながら取り組みを実施していきましょう。実施の際の注意点が2つあります。個人情報保護への配慮と心の健康に関する情報を理由とした不利益な取り扱い(解雇、退職勧奨、不当な配置転換・職位変更など)の禁止です。
STEP5:見直し・評価
継続的に有効な取り組みを実施していくために、実施後は必ず見直しと評価をおこない、PDCAサイクルに沿って取り組みを進めていきましょう。
メンタルヘルス対策 成功のポイント
上記の流れでメンタルヘルス対策を進めていくのですが、成功させるためにはどのような注意点があるのでしょうか。ここではメンタルヘルス対策成功のための3つのポイントをご紹介します。
●取り組みは自社の課題に合っていますか?
初めてメンタルヘルス対策に取り組む会社は特に、初めはなかなか上手くいかず、思うように効果が得られないことがあるかもしれません。その原因として多いのが「取り組み内容が自社の課題に即していなかった」ということです。業種や勤務形態、就業環境、職種によってメンタルヘルスに関する問題は異なります。他社で上手くいった取り組みが自社でも上手くいくわけではありません。自社に合った取り組みを実施できるように計画・実施の前に必ず状況把握のための調査をすることが重要です。
●短期的かつ対策にかける思いにずれは起きていませんか?
メンタルヘルス対策は、目に見えてすぐに効果が出るものではありません。中長期的な視点で、計画を立てて取り組む必要があり、ステークホルダーマネジメントも求められます。
よく私が目にする光景としては、人事側ではメンタルヘルス対策に熱い想いを持っているが、経営や現場管理職と温度差が生じているというケースです。その会社の規模、人事労務部門の体制やリソース、産業保健スタッフの配置状況によってもできること/できないことは当然でてきます。調査の段階では、メンタルヘルス対策にかけられる予算、資源を設定し、それに対してまずは経営側との認識合わせをしておくことも、メンタルヘルス対策を円滑に進めるために重要なポイントです。
●3つの予防をバランスよくできていますか?
メンタルヘルス対策というと、つい二次予防(早期発見)や三次予防(復職支援)に重きを置き、取り組みが行われることが多いです。もちろん二次予防・三次予防の優先順位は高いのですが、二次予防・三次予防はあくまで対処療法です。中長期的なメンタルヘルス対策を考える上では、一次予防(未然防止)も忘れてはいけません。
まとめ
メンタルヘルス問題は、業種や勤務形態、就業環境、職種などによって状況が異なるため、自社に合った取り組みを計画・実施することが大切です。
上記の「メンタルヘルス対策 成功のポイント」を押さえ、PDCAサイクルで見直しと評価を行いながら、中長期的に取り組んでいきましょう。
- モチベーション・組織活性化
- 安全衛生・メンタルヘルス
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医療・組織・心理の専門家として「ヒトのココロの問題」から解放!前を向いて働く人が増える企業社会を目指します
私たちが目指す「働く幸せの最大化」は、これまで関わってくださった方々、そしてこれから関わっていただく方々、そのすべてが対象です。新しい価値の提供ができるプラットフォームであり続けることで「多くの方が幸せに働く社会」の実現に役立てていきます。
上村 紀夫(ウエムラ ノリオ) 代表取締役 / 産業医
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