職場のメンタルヘルス対策 3つの予防と4つのケアとは
「メンタルヘルス対策をしたいけど進め方が分からない」「今の施策の方向性が合っているか自信がない」そんなお悩みはありませんか。
そこで今回は、メンタルヘルス対策を取り組む会社向けに、必ず知っておいてほしい『3つの予防』と『4つのケア』について解説していきます。
国の取り組みと参考指針を確認
厚生労働省では、国、会社、労働者をはじめとする関係者が一体となって労働者の安全と健康を守り、労災防止に取り組むように、労働安全衛生法の規定に基づいて『労働災害防止計画』というものを策定しています。その計画において重点施策をいくつか定めており、そのうちの1つに「メンタルヘルス対策の推進」が挙げられています。
厚労省はメンタルヘルス対策の推進のために、「労働者の心の健康の保持増進のための指針(メンタルヘルス指針)」を策定し、職場において実施すべき主な取り組みを示しています。
職場におけるメンタルヘルス対策の取り組みは、目的や実施主体によって分類されています。まず、目的による分類として『3つの予防』があります。次に実施主体による分類として『4つのケア』があります。この、『3つの予防』と『4つのケア』はメンタルヘルス対策の基本的な考えとなりますので、しっかり押さえておきましょう。
『3つの予防』とは?
職場のメンタルヘルス対策は、目的によって一次予防・二次予防・三次予防の3段階に分かれます。それぞれの予防の内容と具体例について確認していきましょう。
●一次予防(健康増進・予防)
一次予防は、ストレスチェック制度の活用や職場環境等の改善を通じて、メンタルヘルス不調を未然に防止する取り組みです。対象としては、健康な労働者も含む全労働者です。
<一次予防:具体的な取り組み例>
・労働者によるセルフケア
・管理監督者によるラインケア
・ストレスチェックの実施
・職場環境の改善(適正な業務配分、人材配置、指揮命令系統の明確化、室温や照明など作業環境の改善など)
●二次予防(早期発見・対処)
二次予防は、メンタルヘルス不調を早期に発見し、適切な措置を行う取り組みです。対象は発症の疑いがある労働者やハイリスクな労働者です。
<二次予防:具体的な取り組み例>
・相談窓口の設置
・メンタル不調疑いの人への産業医面談
・過重労働面談
●三次予防(治療・復職支援・再発防止)
三次予防は、メンタルヘルス不調となった労働者の職場復帰支援等を行う取り組みです。対象はメンタル不調者や不調から回復して職場復帰をする労働者です。
<三次予防:具体的な取り組み例>
・復職後のフォローアップ体制の整備
・管理監督者に対する復職者への対応方法の教育
『4つのケア』とは?
上記3つの予防に加えて、『4つのケア』を計画的に継続して実施していくことが重要です。この『4つのケア』はメンタルヘルス対策の実施主体によって分類されており、厚労省の指針(「労働者の心の健康の保持増進のための指針」)でも示されています。職場のメンタルヘルス対策において軸となる活動であるため『4つのケア』の内容についても確実に押さえておきましょう。
●セルフケア
労働者自らが行うケアです。事業者は労働者のセルフケア能力を高めるための支援を行いましょう。例えば、ストレスやメンタルヘルスに対する正しい理解を促すための教育研修やストレス対処法を身に着ける研修、ストレスチェックの実施による自身のストレスへの気づきを促すことなどが重要です。
●ラインケア
部下を持つ管理監督者が行うケアです。職場環境の改善、部下の不調を早期に発見・対処できるようにするためのラインケア研修の実施、職場復帰支援などがあります。
●事業場内の産業保健スタッフによるケア
自社にいる産業医や保健師、カウンセラーなど産業保健スタッフによるケアです。産業保健スタッフはセルフケアやラインケアが効果的に実施されるように労働者や管理監督者の支援を行ったり、人事総務担当と連携して、会社のメンタルヘルス対策の立案・実施をします。
●事業場外資源によるケア
自社外の専門家によるケアです。メンタルヘルス対策は専門知識を有することも多いため、専門家のサポートを取り入れると、より安全で効果的な取り組みが行えます。会社は専門家から情報提供や助言を受けるなど外部サービスを活用したり、外部専門家とのネットワークを形成したりします。
まとめ
メンタルヘルス問題は、労働者だけでなく、職場全体にも大きな影響を及ぼします。メンタルヘルス不調を単に個人の問題とするのではなく、職場全体でもメンタルヘルス対策に取り組むことが重要です。初めてメンタルヘルス対策に取り組む会社は、まずは基本の『3つの予防』と『4つのケア』をしっかり押さえておきましょう。
次回は、職場のメンタルヘルス対策の進め方についてご説明します。
- モチベーション・組織活性化
- 安全衛生・メンタルヘルス
- リスクマネジメント・情報管理
医療・組織・心理の専門家として「ヒトのココロの問題」から解放!前を向いて働く人が増える企業社会を目指します
私たちが目指す「働く幸せの最大化」は、これまで関わってくださった方々、そしてこれから関わっていただく方々、そのすべてが対象です。新しい価値の提供ができるプラットフォームであり続けることで「多くの方が幸せに働く社会」の実現に役立てていきます。
上村 紀夫(ウエムラ ノリオ) 代表取締役 / 産業医
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