【第26回テーマ】
若手リーダーの育成にいかに取り組むか
~GEの「リーダーシッププログラム」の事例に学ぶ~
2014年1月22日(水)に、第26回『日本の人事部』HRクラブを開催いたしました。今回のゲストは、日本GE株式会社 人事部 リーダーシッププログラムマネージャーの木下梨紗さん。
前半は、参加者同士の自己紹介タイムの後、今回のメインテーマである「GEのリーダーシッププログラム」について、木下さんに詳しくお話しいただきました。後半は、数名ずつのグループに分かれ、ワークを実施。グループ内で出た疑問を木下さんに質問する場が設けられるなど、活発な意見交換が行われました。若手リーダーの育成を、人事としてどのように考え、支援していけば良いのかについて、深く話し合うことができた今回のHRクラブ。当日の模様をダイジェストでご紹介いたします。
【第26回 開催概要】
- ■ テーマ
- 若手リーダーの育成にいかに取り組むか
~GEの「リーダーシッププログラム」の事例に学ぶ~ - ■ 開催日時
- 2014年1月22日(水) 18:30~20:30
- ■ ゲストスピーカー
- 日本GE株式会社 人事部 リーダーシッププログラムマネージャー 木下梨紗氏
- <木下梨紗(キノシタ・リサ) プロフィール>
- HR Organization training and development team Leadership Program manager
外資系企業・内資系企業にて、採用・C&B・人材育成開発マネジャーの経験を経て、2012年より現職就任。
聞いただけで終わりにしない、「実」のある勉強会に
最初に、木下さんから「ただ事例を話して終わり、という勉強会にはしたくない。GEの事例を知り、自社に役立つトピックスを必ず一つは持ち帰ることを目的にしてほしい」とのお話がありました。事例を聞いて納得しても、社風が違うので自社で実践するのは難しいと考えるのではなく、「このポイントは活用できそうだ」「ここは、自分の会社とうまく親和性があるかもしれない」というところを意識してもらいながら一緒に学んでいきたいという木下さん。
続いて、参加者同士の自己紹介(セルフイントロダクション)が行われました。紙に名字、会社名のほか、「今最も熱中していること」「他に経験している人が少ないような経験」を表す「絵」を描き、その説明とともに自分を紹介。言葉で書くより、絵で描いた方が“お互いの記憶に残る”自己紹介ができると木下さんが言う通り、遊び心が取り入れられた自己紹介タイムは、大変盛り上がりました。
高い専門性と、人を巻き込む力を育てる「GEのリーダーシッププログラム」
GEのリーダー育成方法として広く知られているものの中に、アメリカ初の企業内大学である「クロトンビル」の研修プログラムと、今回のテーマである「リーダーシッププログラム」があります。
「リーダーシッププログラム」は、2年間の若手育成プログラムです。最も古いものは、今から遡る事100年。企業の要である経理財務の専門性と、リーダーシップを兼ねそろえた強いリーダーを育成しようとして新設された「FMP(ファイナンシャルマネジメントプログラム)」です。以降、「ITLP(インフォメーション・テクノロジー・リーダーシップ・プログラム)」「HRLP(ヒューマン・リソース・リーダーシップ・プログラム)」「ECLP(エクスペリエンスト・コマーシャル・リーダーシップ・プログラム)など、さまざまな種類のリーダーシッププログラムが登場し、これらの卒業生から優秀なマネジャーが生まれているといいます。
次に、FMPを例にとって「リーダーシッププログラム」の具体的な内容について、説明いただきました。同プログラムでは、「経理・財務の専門性に軸足を置いたジョブローテーション」「経理・財務の専門知識を学ぶコースワーク」の二つに重点をおき、2年間のプログラムが構成されています。プログラム生は、2年の間に経理・財務系の部門を半年×4回ローテーションすることにより、どんな環境でも即座に状況をキャッチアップし、結果を出せる力を養うと同時に、コースワークにより経理・財務の専門性を身に付けます。これに加え、リーダーとのラウンドテーブルや、上司やチームメンバーからの頻繁なフィードバック。社内のさまざまなアクティビティやプロジェクトを運営する経験を積むことで、主体性をもって、問題を解決できる専門性の高い人材が育つといいます。
リーダーシップ施策に向き合う、現場人事のワーク
後半は、4~5人ずつのグループによるワークを実施したほか、木下さんへの質問コーナーが設けられました。グループワークでは、前半の話を受け、自社で同様のプログラムを実施する場合に懸念される事項や、木下さんに質問したい項目を、一人ひとりがポストイットに記入。グループごとに模造紙に張り、グルーピングしていきました。「リーダーの定義をどのように決めるか」「選抜方法はどうするか」「評価基準をどうやって設計するか」などさまざまな項目が挙がり、その後の発表では「プログラム全体をうまく運営していくための体制作りが難しい。人事だけで頑張っても、現場のコンセンサスを得なければ歯車がかみ合わない」といった意見が出るなど、各社の実態や問題点も合わせて、熱いディスカッションが行われました。
続く木下さんへの質問コーナーでは、「研修の重要性を理解してもらうためのアプローチ」「リーダーに選抜されなかった人へのフォロー」「一人当たりの研修費」など、GEのリーダーシッププログラムから何かしらのヒントを得ようと、次々に参加者の手が上がる光景が見られました。木下さんは、一人ひとりの質問に対して明確かつ丁寧に回答し、参加者の方々も熱心に耳を傾けていました。
若手に「機会(チャンス)」を与えているか
最後に、木下さんがGEに転職し、リーダーシッププログラムに携わった中で、GEの大きな強みであり、プログラムが良く機能している要因についてお話しいただきました。それは、GEという企業が、新卒を含めた全ての社員に大きな「機会(チャンス)」を与えることができる組織であり、カルチャーがあるということ。人が成長するために必要な要素は三つ。「スキル・知識」を得、それを発揮する「機会」があり、発揮したことでうまくいった点・いかなかった点を「振り返る」ことだそうです。しかし、「機会(チャンス)」を与えることは同時に大きなリスクも伴い、また階層ごとの役割分担が明確なピラミッド型の組織構造の中では機能することが非常に難しく、実現することが最も難しいのだそうです。スキルと知識を“実践する場”があれば、何がうまくいったのか、何がうまくいかなかったのかを振り返ることができ、うまくいかなかったものを補うために、何が必要なのかを学ぶことができる――「スキル・知識」「機会(チャンス)」「振り返り」の三つのステップを高速でグルグル回転させていくことで初めて、飛躍的な成長が実現されるとのこと。「『機会(チャンス)』の場があるかないかで、その後の成長の度合いが、まったく異なってくる。GEのリーダーシッププログラムがうまく機能している理由はここにある」と、木下さんは言います。
最後に、「実際の企業の中では、それぞれ業務を抱えているので、+αの仕事を行うのは難しい実情もあるが、例えば、研修で学んだ『スキル・知識』を使うような、小さなプロジェクトを若手に実践させる機会を与え、フィードバックを丁寧に行っていけば、若手がリーダーとして育つ要素が増えていくのではないか」というアドバイスがあり、今回の「HRクラブ」は終了しました。
「GEで学んでいることを、惜しみなく皆さんにシェアし、伝えていきたい」という熱い思いを持った木下さん。その高いファシリテーション力で全員を巻き込み、充実したワークや対話が行われたことで、参加された皆さまも、多くの発見や学びを得ることができたようです。
以下、参加者の方々からは、下記のようなコメントをいただいています。
【参加者の声】
≪講演の感想≫
- 自己紹介で絵を使うのはよかったです。プレゼン内容すべてが素晴らしかったです。とても感銘を受けたことは「対話重視」ですべてが組み立てられていること。木下さんが徹底して一人ひとりと話すことから今何が起きているのか、どう改善するのかを考え実行している点です。(一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会/江上 尚様)
- 若手に限らない貴重なお話をありがとうございました。自分視点ではない幅広い見方を学べました。(プレミアファイナンシャルサービス株式会社/田中真琴様)
- 実情を伺うことができ、大変勉強になりました。当社で同様にというのは難しいですが、アプローチとして学ぶところが多かったです。(通信/人事・労務・人材開発担当)
- 人材開発に対する考え方、取り組みを学ぶことができました。(石油・ゴム・ガラス・セメント・セラミック/人材開発・キャリアデザイン担当)
- 知識の整理につながりました。インタラクティブに行えたことも含めて聞きたい点や疑問点を確認できました。(情報処理・ソフトウェア/人事企画・制度構築担当)
- 取り組み方の基本的な考え方がわかりました。(商社(専門)/人事企画・制度構築担当)
- 現場のリアルなお話を伺えて良かったです。具体的な事例を交えたご説明で理解が深まりました。一つひとつの質問に丁寧に答えていただきありがとうございました。わかりやすかったです。(情報サービス・インターネット関連/人材開発・キャリアデザイン担当)
- 今まさに当社の課題としている内容だったので、大変参考になりました。カルチャーが違うのでそのまま当社に流用することは難しいですが、活用できそうなヒントをいただけました。(旅行・ホテル/人材開発・キャリアデザイン担当)
- もともとGEの人材育成について興味がありましたが、具体的な話をたくさん聞けたので大変参考になりました。(建設・設備・プラント/キャリアデザイン担当)
- 非常に細部までよく練られている。いかに浸透させていくのかという仕組みを作ることの大切さを再実感しました。自分たちの会社に落とし込んだ時にどのようなことをしなければいけないのかをイメージできる質疑応答の時間がプログラム構成としてよくできていたと思います。(人事BPOサービス/人事・労務・人材開発担当)
- リーダー育成に関して、会社の本気度が必須であると改めて実感しました。(商社(専門)/人材開発、人事企画・制度構築担当)
- 最後にお話しいただいたフレームワークは、持ち帰って実践したいと思います。スキルフォーカスに走ってしまいがちなので機会をどう結び付けていくか考えたいと思います。(保険/制度構築、採用・雇用担当)
≪ディスカッションの感想≫
- Q&A方式ですっきりしました。事例を話していただけたこと、また誠実に話していただけたことで参考になりました。(セコム株式会社/植村哲也様)
- 現在、教育制度の見直しをしています。会社規模は異なりますが逆に100年間で完成されてきた取り組みと事例をうかがうことで、さまざまなことがすっきりしました。明確な答えで非常に満足度の高い内容でした。(株式会社 ビームス/原田謙太郎様)
- Q&Aの時間が長く深く聞くことができました。具体的な話が多く良かったです。(情報処理・ソフトウェア/人事・労務・人材開発担当)
- 参加者同士でディスカッションをした上でのFAQという流れだったので、理解が深まりました。(情報サービス・インターネット関連/採用担当)
- 先進的な企業であるGEの実例を聞ける貴重な機会でした。質問することでさらに深く伺うことができたと思います。さまざまな事例をケースに他社の方と話せる良い機会でした。(販売・小売/人事・労務・人材開発・総務・採用担当)
- 当然のことながら意義、目指すものをはっきりさせて取り組むことの大切さに気付かされました。ディスカッションでは、さまざまな角度の話が聞けて参考になりました。(運輸・倉庫・輸送/福利厚生、労使関係、安全衛生担当)
- 質問タイムがたっぷりあり、かつ木下さんが惜しみなく回答してくださったのでとても濃い時間を共有でき充実した勉強会でした。GEの取り組みはとてもまねできませんが、エッセンスを持ち帰って何かしらに応用したいと思います。(旅行・ホテル/人事・労務・人材開発・総務・採用、人材開発・キャリアデザイン担当)