【第23回テーマ】
“人間のプロ”として、人事はどうあるべきか?
~今、求められる「戦略人事」の実現に向けて
2013年6月18日(火)に、第23回『日本の人事部』HRクラブを開催しました。今回のゲストは、昨年初開催となった、日本の人事部「HRアワード2012」で「企業人事部門個人の部 最優秀賞」を受賞された、株式会社LIXILグループ 執行役副社長 人事総務・法務担当の八木洋介さん。 第一部の講演では、「人事は何のためにあるのか」「人事のプロはどうあるべきなのか」というテーマで、人事部・人事責任者に期待される役割と戦略について、八木さんにお話しいただきました。続く第二部では、参加者の皆さんが数人ずつのチームに分かれてディスカッションを実施。八木さんが各グループに随時参加しながら、活発な議論、情報交換が行われました。本レポートでは、当日の模様をダイジェストでご紹介いたします。
【第23回 開催概要】
- ■ テーマ
- “人間のプロ”として、人事はどうあるべきか? ~今、求められる「戦略人事」の実現に向けて
- ■ 開催日時
- 2013年6月18日(火)18:30~21:00
- ■ ゲストスピーカー
- 株式会社LIXILグループ 執行役副社長 人事総務・法務担当 八木 洋介氏
- <八木 洋介氏(やぎ・ようすけ) プロフィール>
- 1955年京都府生まれ。1980年京都大学経済学部卒業後、NKKに入社、主に人事マネージャーとして経験を積む。1999年よりGEに勤務、GE Medical Systems Asia、GE Money Asia、日本GEでシニアHRマネージャーを務める。2012年より現職。著書に『戦略人事のビジョン 制度で縛るな、ストーリーを語れ』(光文社新書・ 共著)がある。
「戦略人事」とは何か
今回のテーマは「戦略人事」ですが、八木さんは難しく考える必要はないと言います。「戦略人事とは、人と組織を活用して、会社を『勝ち』に導くことです。そのためには、人事が人材の最高のパフォーマンスを引き出さなければなりません。これまで人事は制度やルールばかりを作ってきましたが、どんどん変わっていかなければいけない。従来のような『マネジメント』ではなく、戦略型・変化型『リーダーシップ』が求められているのです」
八木さんはこれまでのご自身のキャリアを紹介しながら、日本企業の「良さ」と「課題」について考えを述べていきます。「日本には良い会社やリーダーは多いが、強くはありません。私のミッションは、良いリーダーを強いリーダーにすること。そうしなければ、ビジネスで勝つことができないからです。日本企業には、世界最高のフォロワーが存在しますから、強いリーダーさえいれば、世界で勝つことができます」
戦略人事を実現していく上での人事の役割について、八木さんは下記の項目を上げます。
- Top Leaderを育てる
- Mission,Vision,Goal ……「勝ち」を徹底する
- Strategy ……普通の社員の心にしみるものがたり
- Operation ……潜在力を引き出す、手を抜かせない
- Talent
- Stretch、適材適所
- Diversity,Equal Opportunity,Meritocracy
- リーダーの育成
- Culture/Discipline
- Engagement
「戦略人事とは、最高のパフォーマンスを出すことであり、これらの項目が全てです。特にTop Leader、つまり次の社長を社内に育てていくことは、人事にとって重要な課題です。今持っている人事の仕組みで社長が育てられるのかを、自ら問うてみるべきです」。また、これに加えて「勝ち」に向けて人を動かしていくことも、人事の大きな役割だと言います。
この後はLIXILの人事として目指していることや、LIXILが求めるリーダー像について、詳しく解説。講演の最後には、八木さんの考える「人事のあるべき姿」について、お話しいただきました。人事とは、自らがリーダーとして変革の担い手になるべきであること、「会社が」「誰かが」ではなく、自らが行動すべきであることなど、八木さんの熱い言葉の数々に、参加者の皆さんも熱心に聞き入っていました。
人事のプロとして、どうあるべきか
続く第2部は、4~6人ずつのグループに分かれて、ディスカッションを実施。「社員を活かし、最高のパフォーマンスを引き出すために、人事は何をすべきか」「(それを実現する上で)妨げになっているものはあるか。何が問題なのか」というテーマで、活発な意見交換が行われました。各グループのディスカッションには、八木さんも数分ずつ参加し、皆さんからの質問に答えたり、アドバイスをされたりしていました。
ディスカッション後は、各グループの代表が話し合った内容について報告。最後は八木さんから、参加者の皆さまに向けてメッセージが送られました。
「人事は、当たり前のことや正しいことを、気づいたタイミングでやらなければいけません。その際、“人事として”などと大げさに考える必要はありません。そうではなくて“自分で”やるのです。自分が正しいと思うことを、自分の意思でやってみることが大事なんですね。例えば、社内で悩んでいそうな人を見かけたら、『おはよう』と声をかけることから始めればいい。落ち込んでいる人を救ってあげるには、人事のプロが必要なんです。
私は、1日のうち、仕事の時間は12時間までと決めています。生きるために仕事をするのであり、仕事のために生きるのではないからです。ただし、その12時間は常にベストを尽くします。クタクタになるまで頑張って翌日に疲れや悩みを持ち越すのでなく、ベストを尽くした、『これでいいのだ』と考えます。確かに一日だけならもっと頑張れるのかもしれませんが、長期に渡って最高の状態に自分を保つには心身共に健全でなくてはならないし、どこかで自分を認めることが必要です。悩んで暗い顔をしているよりも、自分をしっかり持っていて、いろんな人のことに気づき、何より元気である。人事のプロとは、そうあるべきだと思っていますし、そのことを私は『これでいいのだ』精神と言っています」
八木さんからの熱いメッセージで、2時間30分に渡る「HRクラブ」は終了。しかし、終了後も八木さんに個別に質問したり、直接お話をされたりする方は多く、八木さんの前には長蛇の列ができていました。八木さんのお話を聴いたことで、「がんばろうという気持ちになった」「元気が出た」という方は多く、満足度はとても高かったようです。参加された皆さんからは、下記のようなコメントをいただいています。
【参加者の声】
≪講演の感想≫
- 一つひとつの言葉がまっすぐで、八木さんの考えや思いがとてもよく伝わってきました。「当たり前のことをきちんとやる」「自分が正しいとおもった事をやる」という言葉が一番残りました。(ナイフィックス株式会社/清水彰人様)
- 軸を見つけて働くことの大切さを、社員に伝えたいと思いました。(株式会社日経リサーチ/石橋康範様)
- いろいろと、大きな気づきがありました。やる気に火をつけてくださる八木さんは、やっぱりプロだと思いました。ありがとうございます。(株式会社CDG/小西菜摘様)
- 八木さんの熱意が伝わってきました。人事は強く想いを伝えることが重要で、それを実践している方なので、大変説得力がありました(株式会社イーウェル/川崎雄介様)
- 人事に配属されて1年足らずで知識不足でしたが、とてもわかりやすく、共感できることもあり、自信がつきました。(新潟原動機株式会社/小林 基様)
- 人事としてだけでなく、自分自身のあり方を考えるきっかけになりました。軸を持って行動したいと思います。(株式会社ミクシィ/田中高志様)
- 今後の方向性が少し見えてきました。内容も素晴らしかったですが、パワーをいただいたので、明日からがんばれそうです。(ラムリサーチ株式会社/横邊美香様)
- 個人の強みを存分に発揮でき、会社に来ることがHappyと思ってもらえるような会社の空気をつくっていきたいと思いました。(保険/人事企画・制度構築、採用・雇用担当)
- 仕事について自分が難しく考えすぎていたんだなと思いました。「組織として」「人事として」ではなく「自分が」というところが刺さりました。実際に、弊社でもリーダー育成を急務で行わなければならないとも思いました。(旅行・ホテル/人事企画・制度構築、人材開発・キャリアデザイン担当)
- 正しいこと、当たり前のことをやることの大切さ、人に伝える時の熱意の重要さを再認識する機会になりました。(銀行業/人事企画・制度構築、賃金・社会保険担当)
- 八木さんの体験を基にあるべき姿を語っていただいたので、とてもインスパイアされました。正しいことは今やる姿勢でいきたいと思います。(信販・クレジット/人材開発・キャリアデザイン担当)
- 「人事は活力」という言葉に、強く共感しました。多くの人たちに活力を与えていける人事になっていきたいと思います。そのためにも、まずは自分の軸を改めて考えます!(商社/人材開発・キャリアデザイン担当)
- 人事としてのみならずリーダーとしても考えさせられ、また、“やる気スイッチ”も押していただいて、大変有意義な時間でした。(旅行・ホテル/人事企画・制度構築、人材開発・キャリアデザイン担当)
- 人事の面白さ、やりがいをあらためて感じることができました。会社を勝たせる人事になりたいと思いました。(スポーツ施設/人事企画・制度構築、採用担当)
≪ディスカッションの感想≫
- インプットが素晴らしいのか、かなり良質な話し合いができました。短い時間ながら、お互いの問題点を深く話しあえました(三幸製菓株式会社/杉浦二郎様)
- さまざまな会社の人事の方が、それぞれの立場で悩みながら、日々の仕事に向き合っていることを確認でき、自分もがんばろうと思いました。(ナイフィックス株式会社/清水彰人様)
- 他の企業の人事の方との交流の機会は本当にありがたいと思います。また、情報交換の中からヒントを得ることもでき、いろいろな気づきがありました。(新潟原動機株式会社/小林 基様)
- 企業の背景、現状の異なる皆さんと語り合うことができ、大変貴重な時間でした。(株式会社サンゲツ/岡崎真理子様)
- 人事としての考え、行動には、決して一つの正解があるわけではなく、さまざまなスタイルがあると感じました。(情報処理・ソフトウェア/人事担当)
- 思ったこと、感じたことを言葉にすることで、自分の考えを固められました。また、他の方の意見でたくさんの気づきがありました。(旅行・ホテル/人事企画・制度構築、人材開発・キャリアデザイン担当)
- ディスカッションの内容について八木さんから直接アドバイスをいただくことができて、とても良かったです。(医薬品/採用担当)
- まったく違う業界でも同じような問題があることに共感するとともに、自分の会社のことを客観的に見ることができて、新鮮でした。(スポーツ施設/人事企画・制度構築、採用担当)
今後も日本の人事部「HRクラブ」では、人事・人材開発担当の皆さまにとって注目すべきさまざまなテーマを取り上げ、開催していく予定です。次回は、2013年7月26日(金)に開催。皆さまのご参加をお待ちしております!
【第24回『日本の人事部』HRクラブ 開催のご案内】
第24回は、2013年7月26日(金)18:30から、ゲストに株式会社サイバーエージェント 人事本部 採用育成部長 膽畑匡志(いはた まさし)氏 をお迎えして開催する予定です。テーマは「『経営人材』を生み出すために人事部門は何をすべきか~サイバーエージェント流“人材の成長を促す”人事制度とは~」。参加ご希望の方は、下記から開催概要をご確認の上、お申込みください。