【第22回テーマ】
「高齢者の雇用、活躍促進、戦力化」に取り組むために
~ベテランを戦力化する高島屋の再雇用制度を事例に~
2013年3月15日(金)に、第22回『日本の人事部』HRクラブを開催いたしました。今回のゲストは、株式会社高島屋 人事部 人事政策担当次長 中川 荘一郎氏。第1部の講演では、同社の再雇用制度の概要や具体的な取り組みについてご説明いただきました。続く第2部では、中川氏と参加者によるディスカッションを実施。今回も活発な議論、意見交換が行われ、たいへん充実した勉強会となりました。本レポートでは、当日の「HRクラブ」の模様をダイジェスト形式でご紹介いたします。
【第22回 開催概要】
- ■ テーマ
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「高齢者の雇用、活躍促進、戦力化」に取り組むために
~ベテランを戦力化する高島屋の再雇用制度を事例に~ - ■ 開催日時
- 2013年3月15日(金) 18:30~20:30
- ■ ゲストスピーカー
- 株式会社高島屋 人事部 人事政策担当次長 中川 荘一郎氏
<中川 荘一郎氏(なかがわ・そういちろう) プロフィール>
1991年株式会社髙島屋に入社。大宮店営業第4部(食料品)に配属後、総務部にて経理、人事、総務を担当。2000年3月百貨店事業本部関東事業部企画室にて店舗政策等を担当。2003年3月より現職。全社の人事政策(各種人事制度、要員採用計画、ワーク・ライフ・バランス等)の立案・推進を行う。社外においても「女性の活用」「パートの活用」「ワーク・ライフ・バランス」等のセミナー・フォーラムでの講演や寄稿を行う。
50歳の段階から65歳までを見据えて、ベテラン社員をサポート
講演ではまず、高島屋の「再雇用制度の導入と変遷」から説明していただきました。同社は「高齢者戦力化への取り組み」として、65歳までの再雇用を柱とした「中高年齢者支援制度」を設けています。取り組みをスタートさせたのは、2001年――当時はバブル崩壊後で景気が低迷、健康保険や企業年金などの財政悪化が進み、公的年金の受給開始年齢が引き上げられるといった大きな動きもあったため、企業として「従業員の退職後の生活への不安を払しょくし、働く場を確保する必要がある」と考えたとのこと。また、将来、定年退職者の増加によって、ノウハウやスキルの伝承に支障をきたすことを懸念し、「円滑な世代交代を進め、営業力を維持・向上させる」ことも、制度導入を決断した理由だったそうです。
同社では、再雇用制度の三つの柱として「プロセールスの雇用」「特定分野の専門人材の雇用」「働き方の多様化と個々のキャリアを捉えた雇用」を挙げ、従業員が定年後もさまざまな立場で、自己の能力を最大限に発揮できる制度を構築しています。また、60歳以降の再雇用だけを制度化するのではなく、50歳の段階から定年後までを見据え、ベテラン社員をサポートするしくみとして、再雇用制度を位置付けているとのこと。
2001年当初に導入した再雇用制度「ゴールデンエイジプラン」は、50歳からの働き方や就いていた仕事の内容によって再雇用のコースが決まるしくみで、五つのコース(スーパーセールスコース、技術・技能キャリアコース、専門嘱託員コース、グループ内再就職支援コース、ワークシェアコース)を設け、再雇用を実施したそうです。
その後、同社では、二回の制度改正が行われました。2006年は、有期契約雇用者を含めた再雇用制度に改正し、それも含めた「キャリア形成とキャリア・ライフプラン支援制度」として整理。2009年には、リーマン・ショックの影響で、ベテラン人材の雇用をいかに守るかという課題が浮上したため、多様な働き方に対応した再雇用コースの再構築を実施したとのことでした。
「私たちの経営理念は『いつも、人から。』――この考え方の下、雇用を守り、社員の生活の安定を図ることを前提にした“人”を大切にする施策を立案・推進しています」と、中川氏は言います。
高齢者を“戦力化”するための具体的な施策とは
再雇用後の従業員を“戦力化”するために、高島屋では以下の施策を講じています。一つは、2009年の制度改正から導入した「コース転換制度」。これにより、再雇用時に基準を満たせなかった場合でも、その後の努力次第で所定のコースの基準を満たせば、転換が可能になるといいます。もう一つは、半期に一回の「考課」の実施。再雇用者への考課は他社ではあまりみられませんが、同社では、この結果を賞与や昇給に反映させ、従業員の働く意欲を刺激しているとのことです。
再雇用者が高い意欲を持って仕事に取り組み、成果を上げ、企業に貢献できる環境を整えることが、“戦力化”を実現するためには重要だそうです。
次に、「キャリア形成とキャリア・ライフプラン支援制度」の全体像についてご説明いただきました。同社では、従業員が定年後までを見据えて、キャリアについて考えたり、準備したりすることが重要だとし、一人ひとりのキャリア形成が確実に図られる取り組みを行っているそうです。具体的には、40歳、50歳、55歳といった年齢の節目(年齢軸)や仕事のキャリア(進級軸)のタイミングで、セミナーやカウンセリング面談を実施し、意識啓発を行っているとのこと。こうしたきめ細やかな取り組みが、“定年後”を早くから意識する社員を増やすことにつながっているといえます。
以上で、1時間におよぶ講演は終了。同社の再雇用制度の概要や高齢者を戦力化するための具体的な施策について、大変わかりやすく、体系的にお話しいただき、参加された方々も多くの情報やノウハウを得ることができたようでした。
参加者同士で情報を共有―「高齢者の雇用、活躍促進、戦力化」に向けて
続く第2部では、中川氏と参加者によるディスカッションを実施。「高齢者の雇用・活躍促進、戦力化」に関する取り組みと課題について、話し合いました。「高齢者に期待する役割とは何か」「再雇用後の処遇や仕事の内容をどのように決めているのか」といった質問に対し、自社の考え方や具体的な取り組みを紹介するなど、参加者全員が事例をシェア。業種や規模が異なる企業同士によって行われたこともあり、参加された方たちにはそれぞれ、新たな発見があったようです。
以上で、2時間に渡る「HRクラブ」は終了。少人数による、たいへん密度の濃い勉強会となり、参加された皆さまの満足度は大変高かったようです。参加者の方々からは、下記のようなコメントをいただいています。
【参加者の声】
≪講演の感想≫
- 今回うかがった高島屋様の事例を持ち帰り、今後の会社の制度に活かしたいと思います。
(輸送機器・自動車/人事・労務・人材開発・採用、人事企画)
≪ディスカッションの感想≫
- 参加者の企業の顧客が一般消費者で自社と同じだったため、共感できる点が多くありました。
(通信/人材開発・キャリアデザイン) - 異なる業界の人事担当者の視点は、とても参考になりました。
(その他業種/人事・労務・就業管理・コンプライアンス、労使関係、安全衛生) - 少数の参加者だったため、他社の考え方や取り組みについて、じっくりとうかがうことができ、貴重な機会になりました。
(輸送機器・自動車/人事・労務・人材開発・採用、人事企画)