【第10回テーマ】
スタッフのやる気を上げる、正・非社員でないロフト社員という考え方
~ロフトの人事制度・評価制度について~
【第10回テーマ】
スタッフのやる気を上げる、正・非社員でないロフト社員という考え方
~ロフトの人事制度・評価制度について~
『日本の人事部』は、2011年4月22日(金)に、第10回「HRクラブ」を開催いたしました。
今回のゲストは、株式会社ロフト 人事部 人事課長の川名友彦氏。
第1部の講演では、ロフトが行った人事制度改革のポイントのほか、リーダーとなる中堅人材の活性化のための施策について、解説していただきました。続く第2部では、川名氏がファシリテーターとなり、参加者同士によるディスカッションを実施。本レポートでは、当日の「HRクラブ」の模様を、ダイジェスト形式でご紹介いたします。
【第10回 開催概要】
- ■ テーマ
- スタッフのやる気を上げる、正・非社員でないロフト社員という考え方
~ロフトの人事制度・評価制度について~ - ■ 開催日時
- 2011年4月22日(金)18:30~20:30
- ■ ゲストスピーカー
- 株式会社ロフト 人事部 人事課長 川名友彦氏
<川名 友彦氏 プロフィール>(かわな ともひこ)1990年西武百貨店入社。梅田ロフトに配属。1996年ロフト分社化にともない株式会社ロフトに転籍。以降、渋谷・池袋・吉祥寺・広島等、ロフトの店舗にて勤務。店舗ではチーフ・係長・店舗バイヤー・次長等営業系の業務を経験。2006年人事部にスタッフとして異動。担当業務は採用及び人件費管理。新人事プロジェクトメンバーとして、2008年春にスタートした新人事制度の制度設計から携わる。2010年9月人事課長に任命される。
なぜロフトは新たな人事制度を導入したのか
ロフトの人事制度について具体的にご説明いただく前に、まずは同社の概要からお話しいただきました。FCを含めて、全国に59店舗を展開している同社ですが、「ゆるやかなチェーンオペレーション」という特長があるそうです。どの店舗も同じように見えますが、実は基本を共有しつつ、各店舗に権限が委譲されているのです。
同社では55万にも及ぶ商品を扱っていますが、商品の回転は他の小売業と比べて高いそうです。また、生活雑貨を扱っているため、新しい商品をどんどん取り入れる必要があるなど、業務には大変な手間がかかります。そういった同社ならではのビジネスを支えているのが、店頭で働く現場のスタッフたち。彼らが自発的に動かなければ、それだけの商品を回していくことはできないそうです。
しかし、かつての同社には、入社した社員がすぐに退職していく傾向がありました。2006~2007年には、入社後1年未満の退職率が約71%、2年未満を含めると約87%だったとのこと。当時の旧人事制度では、「パートタイムオペレーション」を行い、効率化を重視していました。それは、仕事を細分化し、「あなたはこの仕事だけをしてください」というようなもの。効率化は実現できましたが、一方で、人材の育成は期待できないという状況でした。従業員からすれば、今後のステップアップが不明確であり、雇用も不安定。それが原因で、すぐに辞めていく従業員が後を絶たず、人事制度の見直しが、大きな課題となっていたそうです。
そこで2008年、同社は新人事制度を導入します。従来のように、契約期間を「無期」「1年」「半年」などと分けることなく、全て「無期契約」に変更。安定した雇用を実現することで、働く人たちのモチベーション向上を目指しました。また、これまでの「本社員」「契約社員」「パートタイム社員」などの分類も撤廃。「ロフト社員」として一本化しました。(2ヵ月契約の「アシスト社員」も、一部存在します)。同社は、全ての従業員が「能力の下で平等に処遇される」人事制度へと、大きく舵を切っていったのです。
この新制度によって、退職率は大幅に改善。2010年には、23.9%にまで減少したそうです。また、社員のモチベーションは高まり、職場も活性化したといいます。また、懸案となっていた人材のスキル向上も実現。店頭の販売力を高めていくことにも繋がっていったそうです。
中堅人材をいかに活性化していくのか
同社には、もともと「リーダー」という職務がありませんでしたが、2009年、売上向上を目的として、店頭の販売員をまとめる存在としてのリーダーを設けました。同社においてリーダーとは、管理職へのスタートライン。また、現場のスタッフにとっては、最も身近な「目標」としての存在でもあるそうです。
リーダーは単一の店舗に留まらず、社内の他店舗に「国内留学」したり、ローテーション的に勤務したりすることで、経験値を積み上げていきます。店舗が変わると、お客様の傾向や、店舗内の人間関係も当然変わります。新店舗で働くことは、大変勉強になり、大きくステップアップすることができるとのこと。今後も、リーダーの国内留学という仕組みは、継続していくそうです。
実務担当者同士で、人事制度について考察
続く第2部では、3~4人ずつのチームに分かれてディスカッションを実施。川名氏には、ファシリテーターとしてご参加いただきました。ディスカッションのテーマは「貴社の社員やスタッフ、アルバイトには、働き方やモチベーション、生産性、環境などで、どのような課題がありますか」と、「貴社では、社員やスタッフ、アルバイトに、主体性を持ってモチベーション高く、元気に働いてもらうためにどのような工夫をしていますか」の二つ。
実際のディスカッションでは、「評価制度」や「研修」に関する議論が、活発に行なわれたようです。ディスカッション後は、チームごとにディスカッションの内容について発表していただきました。
(以下、発表の内容から一部抜粋)
「ディスカッションを行なったグループの全員が、『評価制度に問題がある』と考えていた。考課者によって評価にばらつきがあり、不透明であることが問題だ。かといって、数量や金額などの『定量評価』だけでも問題がある。考課者によって差が生じない、『定性評価』を確立していく必要があると思う」
「社内の人材は職種がばらばらであり、求められている能力も異なる。そういった環境下で、透明性があり明確な評価制度を確立することは難しい」
「弊社では、ほぼ全員がキャリア採用。同じグレードに属する社員でも、年齢層は幅広い。階層別研修を行なうという文化はなかったが、先日初めて実施。リスクも懸念したが、大きな問題も起きることなく、むしろ、予想以上の効果を上げることができた」
「弊社では階層別に合宿研修を行なっているが、それぞれの立場ならではの悩みを共有でき、連帯感が生まれちる。『自分ひとりではない』と認識することができるので、やる気も向上しているようだ。同行している社長から見ても、社員が変わっていく様子がわかるとのこと。正確にデータをとってはいないが、費用対効果は高いといっていいと思う」
以上で、2時間に渡る「HRクラブ」は終了。参加された皆さんはそれぞれ、業界も人事としてのキャリアも異なりますが、今回も積極的なディスカッションが行なわれました。終了後は、もはや恒例となった、居酒屋での懇親会を実施。引き続き、参加者同士による情報交換が行なわれました。
【参加者の声】
≪講演の感想≫
- 自社の制度を考えていく上でのヒントをいただきました。ありがとうございます。
(ヒューマンリソシア株式会社/緒方佐喜子様) - 他社の成功事例をお聞きする機会はなかなかないので、感謝しています。評価についても、もっと詳しく聞いてみたかったです(教育事業/人事課 マネジャー)
- 弊社と同じ、小売・チェーンオペレーションを展開されているロフトさんのお話しをうかがえて、大変参考になりました。(アパレル/採用担当)
≪ディスカッションの感想≫
- いろいろなご意見や悩みが聞けたことで、自分の励みにもなりました。もう少し時間があれば良かったと思います。(ヒューマンリソシア株式会社/緒方佐喜子様)
- これまでに何回も参加していますが、目標や課題が明確な参加者に恵まれると、対話が活発になり、勉強になることを今回も感じました。(医薬品/人材育成担当)