【暗黙知】の【形式知化】。ソニーの井出伸之氏の暗黙知
突然、元ソニーの出井伸之様の訃報が飛び込んできて、愕然とした。
出井様とは、2年前、取締役のWinterSeminarで同じグループになり、日本をよくするためのテーマで、グループワークをした。「発表は任せるから、あなたがしなさい!」と言われて、素直に、ちょっと過激な発言をした。もちろん、【暗黙知】についてだ。実は、【暗黙知】は、今しきりに取り上げられている、人的資本・知的資本の源泉だが、ハイコンテクスト文化の日本では、それらが【形式知化】できていない。出井様は、腕組みをして、「いいね!」と言ってくださった。
「秘書の〇〇に連絡して」と、メッセージをもらって、赤坂のクオンタムリーブへ。私が、【暗黙知】について説明すると、ゆっくり頷きながら、聞いている。
出井様のような、鋭い閃きを持つ経営者の【暗黙知】を、【形式知化】する方法は、いくつかある。例えば、【暗黙知】を、独自のオリジナルメソッドやTheoryとして、講座化する方法。経営やオープンイノベーション等にテーマを絞って読み物化したり、自分史的な、企業案内等の冊子にすることもある。
また、ご自身の企業の次世代人材を育成する、『サクセッションプラン』として、ご自身の事業に対する思いや、判断軸、決断時の迷いの払拭等を、プログラムとして【形式知化】しておけば、企業に脈々と受け継がれる、企業独自のポリシー(Vision、Mission、CoreValueなどにも)として、言葉でなく物語を交えて、永遠に繋ぐことができる。
出井様の講演やセミナーで、【暗黙知】が共有できるかと言えば、実は、この方法は、限りなく無理に近い。
なぜなら、武勇伝を聞いても、「あの人だからできる=自分にはできない」と思う人がほとんどで、「今日は、いい話をお聞きました!」「勇気をもらいました!」と言ってはいるが、一週間も経てば、忘れてしまうからだ。
武勇伝を、自分にも落とし込んで、応用・活用できるように、【暗黙知】を取り出し、なんらかの【形式知】にしなければ、できるようにはならない。
2回目に、出井様にお会いしたのは、昨年の12月だった、ちょうど新しいご著書『個のイノベーションー対談集』を出版なさったばかりだった。冨山和彦氏から、YOSHIKOまで、多様な方々との対談が綴られていた。
少しお疲れの様子が見えて、心配だった。
「素晴らしいご著書ですね!【暗黙知】がいっぱい詰まっています。」とお伝えした。「有難う!」と、出井様。
会話を通して見えてくる、出井様の判断軸、何を見て、どう判断しているかが透けて見える。
現在の「今ココ」を見ていない。時間軸が、遠い未来に向けられており、驚くばかり深い階層の情報・状況を、独自の視点で読み込み、お話しされているのだ。
「今度は、出井様のお話しを、もっとお聞きしたいです!」
「秘書の〇〇に連絡して!」
それが最後のメッセージ。
出井様、あなたの【暗黙知】は、本当に素晴らしかった。
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全能連マネジメントアワード「コンサルタント・オブ・ザ・イヤー」を受賞!暗黙知を形式知化するナレッジマネジメントで計1500社の人材育成に貢献
ジョブ制・テレワーク導入が急速に進ぬ中、人材のノウハウ・ナレッジの見える化・企業や組織での共有化・蓄積は必須です。
仕事ができる人材の思考プロセスを見える化・形式知化し、人・チームの育成に活用即戦力化します。特許庁、経済産業省の業務も受託。
田原 祐子(タハラ ユウコ) 株式会社ベーシック代表取締役(社会構想大学院大学教授)上場企業社外取締役監査等委員
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