社員の定着率が上がる社員育成法5つの秘策 (4/5、5/5)
社員の定着率が上がる社員育成法5つの秘策 (4/5)
④「叱る」ことで、さらに想いを伝えよう。
失敗と捉えるか、トライ&エラーと捉えるかで成長スピードは異なる
これまでのコラムで前述してきたように、認め、聴き、ほめるだけで人は成長できるのか、ですが、効果的な育成は、5:1でほめるとしかるを織り交ぜることです。当然ですが、どんな仕事でも失敗はあります。これを失敗として捉えるのか、トライ&エラーと捉えるのかで、成長スピードは大きく異なります。どんな会社でもトップと言われる優秀な社員の方々が多くいます。彼らが皆口をそろえて同じことを言います。
「人より多くの失敗をしてきたから、そこから多くのことを学んだだけだ。」
まさしくトライ&エラーです。常に成功だけをしている人はいません。その失敗した時に、上司が部下に対して、怒るのではなく、しっかり叱れるかどうか、ここが「多くの学び」を得るかどうか、の分かれ道になってきます。
社員の定着率が上がる社員育成法5つの秘策 (5/5)
⑤「任せる」ことで、成功体験を積ませよう。
自身で考えさせ、決めさせる
認める、聴く、ほめる、叱る、を繰り返しながら、部下が一人前になる少し手前で、チャレンジとして「任せる」ことをしていきましょう。任されていることで、上司に信頼してもらえている、期待してもらえていると彼らは感じます。そして必死にその期待に応えようと頑張ってくれるはずです。ですから、この任せる仕事については、彼らに任せながらも、必ず成功させてあげることが大切です。
まず、どうしたらこの仕事がうまくいくのか、彼らにしっかり考えさせて計画を立てさせてあげてください。その際には極力アドバイスをせず、彼らに考えさせ、決めさせます。なかなか彼らが考えられない場合には、聴くを繰り返し、少しずつヒントを出しながらも結論は彼らに言わせるように導いてあげてください。
また、ほとんどの部下が「かなり無茶なハードルの高い目標や計画」を立てようとします。しかしそれではなかなかその通りにはいきません。その際には、「それは無理だよ」と否定するのではなく、「他にもこの仕事もあるけれど、時間的に出来そうかな?」「これをするには、こんなスキルも必要となると思うんだけど、どうかな?」といったように、」必ず質問を投げかけ、彼らに決めさせてあげてください。
イメージさせ、大いに語らせる
ある程度の計画が出来上がったら、すぐに実施するのではなく、出来ている状態を具体的に彼らにイメージしてもらい、大いに語らせてあげてください。「この仕事が出来ている時には、○○さんは社内的にどんな風に思われているだろう?」「この商品がこれだけ売れているってことは、どんなお客様がいるかな?どんなお客様とお取引できているだろうか?」「このクラスのお客様との取引を通じて、○○さんはどんなふうになっているかな?」というように彼らがイメージできるような質問をどんどん投げかけてあげてください。
このイメージ化を行わずに、計画を立ててすぐに実行するのでほとんどのケース、うまくいかないことが多いのです。人は、自分が想像したことを実践していこうとします。そして想像通りにいこうと努力します。ですからこの「100点満点の状態」をよく深くイメージしてもらうことが大切なポイントです。
行動目標の設定
イメージが出来上がったら、再度に「行動目標」を設定していきます。「では、そうなるためには今日から具体的に何をしていこうか?」といったような質問をしてください。この際に、明日から、来月から、と言う言葉を使ってしまうと、人はその時点で「やろう」という意欲が下がります。現実的には今日からするのが不可能なことであっても「今日から」「今から」何をしようか、という言葉を使うようにしましょう。
そして、具体的な行動目標を彼らに考え決めてもらいます。多くに企業では、目標設定は上司が一方的に設定していることが多々あります。人は自分で決めたことすら、なかなか完遂出来ない生き物です。人から与えられた目標なんて出来る人は3%もいません。ですから行動目標は必ず本人に考えさせ、決めさせることが達成させる一番の近道です。
意思決定を強くさせよう
そして行動目標が出来上がったら、意思決定を強くさせてあげましょう。「月に見積書を50件提案する」という行動目標だったとします。これを義務・役割の言い方で伝えると「○○さんは毎月見積書を50件提案しなければいけない(提案すべきだ)」という言い方になります。
上司からの願望の言い方で伝えると「○○さんは毎月見積書を50件提案してください(してほしいなぁ)」という言い方になります。そして必然の言い方で伝えると「○○さんは毎月見積書を50件提案出来ているよ。(必ず出来るよ)」という言い方になります。人は一般的にどの言い方で言われると最も出来る気がするでしょうか?
それは必然ですね。「必ず出来るよ」「絶対出来ているよ」と言われることで、出来ている自分自身をイメージし、そしてそのイメージ像へと近づく努力が始まります。なかには、非常に上司と部下の信頼関係が出来ていて、部下から尊敬されている上司から言われることで、よりモチベーションが上がる人もいます。
これは部下本人の性格も「よし、絶対期待以上に応えるんだ」という想いから言動に繋がりやすい性格の部下であれば、必然の形で言うよりも、「○○さんにだから、この仕事を任せるんだ。頼むね」と上司からの願望の形で伝えてあげることも効果的です。ここはしっかりと部下との関係性、部下の性格を見てから判断してください。一般的には人は必然の形で言われる方が出来るスピードや意欲は高まります。ですから最後は「絶対できるよ。任せたね。」と言ってあげてください。
認める、聴く、ほめる、しかる、任せるの5つのステップを説明してきました。どのステップでも大切なことは、部下本人に考えさせ発言させるということです。上司からの一方的なアドバイスで成長する人はごくまれです。人が大きく成長するとき、それは自分自身で考え実行し、そして成功した時です。自分で考えて自分でやったことにしか、人は自信を持ちません。アドバイス通りにやったことには自信を持たないのです。この自信を持たせることが人を大きく成長させます。
また、今の自分よりも少しチャレンジして成功した仕事に対して、非常に高い達成感と満足感を持ちます。これがそのまま、仕事の遣り甲斐に繋がっていきます。よく陥りがちな管理職の仕事の割り振りの落とし穴として、「仕事の出来そうな人」にその仕事を任せてしまいがちです。出来る人に任せることで、管理職側としても安心ですし、その仕事は間違いなく成功するでしょう。
しかし、人を育てるという観点から見ると、これをやっていては、他の人は育ちません。少しだけチャレンジさせ、(そのためには管理職はしっかりと仕事が成功するように陰ながらサポートしていかなくてはいけませんが)成功させることで、本当の意味で成長していきます。認めてほめる、しかることももちろん大切ですが、それだけでは人は成長しないものなのです。育成において最も大事なことは「チャレンジさせ、任せ、達成感を持たせる」ことなのです。
この人を育てる5つのステップですが、順番が逆転していることが多く見られます。まず、任せる。と言ってもこの場合「丸投げ」もしくは「無茶振り」に近いケースもありますね。そして、当然ですが、出来ない、という結果になるので、叱る、がやってくるわけです。しかしそれでもなかなか出来ない、という場合は、聴くが入ってきます。この2つもしくは3つを繰り返し、仕事が出来て初めて、認める、ほめるがやってきます。
これではなかなか部下は気持ちの良いものではありませんし、結果仕事がうまくいったとしても、認めて褒めてもらうまでの間に、叱るが入っているので、自信にも繋がりにくくなります。また、なかには、認めるほめるがなく、また次の任せる、がやってくるというケースもよく聞きます。上司としては認めているつもり、ほめているつもりでも、部下にとっては、丸投げされたり、叱られたりということが先に来ると、たとえ褒められてもなかなかそれを覚えていないのです。
前述したように、働く価値観や考え方は上司と部下では大きく異なります。上司の働く価値観においては、それでも歯を食いしばり頑張ることで、自分が欲しいものが手に入ります。それは高収入や地位名誉、そしてダイレクトに出世への近道となります。しかし彼らはそんなものにはほとんど興味がありません。高収入や出世には心が躍らないのです。それよりも自分らしくあること、に力をいれます。ですから、順番を間違って指導してしまうと、「この仕事はやはり自分には向いていないのではないか?」「本来自分がしたかった仕事ではないのではないか?」とまた迷子になってしまうのです。
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山口 しのぶ(ヤマグチ シノブ) 株式会社キャリアチアーズ 代表取締役

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