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なぜ「正論」は嫌われる?ロジカルシンキングを補うアサーション

0.本記事のまとめ

  • 客観的な正しさ(ロジカルシンキング)と、自分も相手も尊重する表現(アサーション)は相反するものではなく、ビジネスで成果を出すために「両立」させるべきものです。

  • 論理的に正しくても相手への尊重を欠いた「正論」は、相手を疲弊させ離職や意欲低下を招きます。組織の成果という視点では、正論をふりかざすことは「独りよがり」になりかねません。

  • 納得を得るには理屈と感情の両面が重要です。ロジカルに「何を・なぜ」伝えるかを整理し、アサーションで「どのように」伝えるかを工夫することで、相手が自発的に動きやすくなります。

  • 感謝や敬意をまず伝えつつ、改善が必要な理由を論理的に説明し、相手を助ける姿勢(協働)を示すことで、人間関係を損なわず円滑に業務を進められます。

 

1.ふたつのコミュニケーション手法

ビジネスにおけるコミュニケーションに必要な要素として、ロジカルシンキングやアサーションが挙げられることがあります。主観ではなく根拠に基づいて主張を構築するロジカルシンキングと、相手と自分の両方を尊重し思いやるアサーション。これらには、ともするとドライとウェットという、相反するようなイメージを持つ人もいるかもしれません。

実際、弊社には、「正論をふりかざてしまう人がいるため、アサーションを身につけさせたい」という人材育成のご要望が寄せられることがあります。

本来ロジカルシンキングは、客観的に正しい主張を作る考え方に過ぎませんが、「正論」が、「正しい」という意味を超えて、相手を非難するようなものとしてイメージされることがあるようです。

ビジネスにおいて必要とされながら、そのような好ましくない捉え方もされかねないロジカルシンキングは、アサーションと相反するものなのでしょうか?両者は使い分けるべきものなのか、それとも両立を目指すべきものなのか。この記事では、これらの取り扱い方について、弊社なりの見解を示していきます。

ロジカルシンキングとは?

ロジカルシンキングとは、客観的に正しいと言える主張の構築を目指し、主張を支える根拠となる事実情報(ファクト)を過不足なくそろえて、主張とのつながりを整理する考え方です。ピラミッド構造とよばれる図式を用いて考える方法が有名です。

ピラミッド構造とは

ビジネスにおいては、提案を通すために相手に納得してもらわなければならない場面が少なくなく、客観的に正しい主張を構築するロジカルシンキングが必要とされます。
例えば、職場に新しく「〜を導入すべき」と主張する時、その主張だけを主観的に述べても説得力がありませんので、求める性能が十分にある、といった根拠を、客観的なファクトを用いて示す必要があります。また、性能が十分でもコストが高過ぎれば導入すべきと言えないように、根拠は複数の観点で過不足なく揃えることが必要です。このような検討を行う頭の使い方を、ロジカルシンキングと呼びます。

アサーションとは?

アサーションとは、自分と相手のどちらも尊重するような主張の表現を指します。そのような主張の表現をすることにより、自己を犠牲にすることなく、かつ、相手に受け入れてもらえるようなコミュニケーションを目指せます。

ビジネスにおいても、職場の人間関係を円滑にしたり、言うべきだが言いづらいことをきちんと言えるようにするためなどに求められ、トレーニングするための研修が行われることがあります。

アサーションについて詳しく知りたい方は、ぜひこちらの記事を参照してみてください。

2.ロジカルシンキングに伴う問題 ー なぜ、「正論」は嫌われるのか?

ここで、冒頭の「正論」について考えてみたいと思います。正論、すなわち正しい主張は、提案などの場面で求められる一方で、「正論をふりかざす」という言い方に見られるように、人の気持ちを考えずに一方的に相手を非難するもの、といった捉え方がなされる場合があります。

例えば、他者がよかれと思ってやっていることについて、その意図を考慮することなく「あなたはこうすべきではない、なぜならばー」といった主張が述べられたならば、好ましくない印象を与えてしまいかねないでしょう。たとえその主張が客観的に正しかったとしても、聞き入れられなかったり、不要なストレスを与えてしまいかねません。

「正しい=言っていい」という勘違い

主張をする側としては、「正しいのだから言ってもいい」という思い込みがあるかもしれません。しかし、正しいからといって、言っていいかというと、どのような観点でよしとするかによって変わってきます。

例えば、冒頭で述べた「正論をふりかざてしまう人がいるため、アサーションを身につけさせたい」といった組織においては、先輩社員が正論をふりかざしてしまうため、若手が疲弊して離職してしまうという問題がありました。

正論をふりかざし、それを通せたとしても、受け取る側が疲弊し、離職してしまったならば、組織にとっての損害が発生します。したがって、組織として成果を出すという観点では「正しいのだから言ってもいい」とは言えないのです。厳しい言い方をするのならば、「正しいのだから言ってもいい」は「独りよがり」な考え方と言えるでしょう。

「ロジカルシンキング=悪」という勘違い

では、ロジカルシンキングは悪なのかというと、そうとも言えないはずです。多くの企業でビジネスコミュニケーションの基礎として求められており、ロジカルシンキングの研修が行われています。

前述のように、ロジカルシンキングとは主張を組み立てる際の考え方に過ぎません。これ自体に良し悪しがあるのではなく、使われ方次第で、ポジティブな効果を発揮したり、ネガティブな効果を産んだりするだけなのです。

ロジカルシンキングを悪いものとして見てしまう方々は、ネガティブな効果にさらされてしまった結果、そのような印象をもってしまったのかもしれませんが、あくまでもロジカルシンキング自体は、考え方にすぎません。

問題は、表現の仕方にある

同じような主張であっても、伝え方によって大きく印象は変わってきます。例えば、会議に報告するための後輩の資料に誤りがあり、そのことを指摘する場合。

伝え方その1
「資料のここ、全然ダメだから直しておいて。まず、この前の会議の結果が反映されていないよね。なんでそんなこともできていないんだ?基本だろ?あと、データが文字でごちゃごちゃ書かれていてめちゃくちゃ分かりづらい。ちゃんとグラフにしろよ。そこが伝わらないと俺の責任になるのわかってる?ちゃんとしろよな」

伝え方その2
「資料つくってくれてありがとう。他は大丈夫なんだけど、ここだけ直してくれるかな?この前の会議の結果が反映されていないけど、次の会議で必要な情報だから反映してもらえるかな?それから、データの量が多いから、理解してもらえやすいようにグラフにしてもらえる?最後は自分が責任を取るから、そこだけ直して伝わるようにしてもらえると助かるよ。よろしくね」

これらの主張は、ほとんど同じことを主張しています。資料を修正してほしいこと、具体的には、先日の会議の結果を反映することと、データをグラフで示すこと。会議で伝わるようにする責任が自分にあること、です。主張の骨子をピラミッド構造で図式化すると、次のような形になります。

伝えている骨子はほぼ同じ

同じ主張を伝えているにもかかわらず、印象は大きく異なるのではないでしょうか?前者と違い、後者の表現には相手を尊重する姿勢が伺えます。相手を尊重しているかどうかの表現によって、伝わる印象が変わってくるわけです。

 

3.アサーションという表現の仕方

アサーションとは、自分と相手のどちらも尊重するような主張の表現を指します。また、そのような表現を目指すスタンスをアサーティブと呼びます。アサーティブなスタンスで主張を表現をすることにより、自己を犠牲にすることなく、かつ、相手に受け入れてもらえるようなコミュニケーションを目指せるものです。

自分と相手がいる場合の主張の表現は、次のように分類することができます。

・自分を尊重せず、相手も尊重しない
・自分を尊重するが、相手は尊重しない
・自分を尊重せず、相手は尊重する
・自分を尊重し、相手も尊重する

アサーションとは

この分類において「自分を尊重し、相手も尊重する」主張の表現が、アサーションです。この分類の軸に、主張がロジカルであるかどうか自体は問われていません。先ほどの例でも見たように、ロジカルでも相手を尊重している表現もあれば、そうでない表現もあります。正論は、自分の主張を通すという意味で、自分は尊重できていても、相手を尊重できていない場合があるため、問題となるのです。

一方、相手を尊重する表現ではあっても、ロジカルではないせいで、相手が困ってしまう伝え方もあります。例えば、次のような具合です。

「資料作ってくれてありがとうね。すごくがんばってくれたのはわかる。だけどもう少しだけ直してもらえると助かるよ。Aくんならできる。信頼してるよ、よろしくね!」

資料を修正してほしいという主張は伝わりますが、なぜ修正する必要があるのかまったくわかりません。表現は相手を尊重していても、伝えられたAさんは対応に困ってしまうことでしょう。先輩が思っていたところとは違うところを修正してくる可能性もあります。相手を尊重する表現をしていればよい、ということでもないことがわかると思います。

4.ロジカルシンキングとアサーションで理感一致を目指す

これまで見てきたように、ビジネスにおけるコミュニケーションでは、ロジカルさが欠けていても、アサーティブさが欠けていても、人に納得してもらい、成果につなげるためには不十分となる可能性があります。

主張そのものが正しくなければ、情報が正しく伝わらなかったり、間違って受けとめられたりしかねません。一方で、主張そのものとしては正しくとも、その表現が相手を尊重していなければ、受け入れてもらえなかったり、不必要にストレスを与えてしまいかねません。

理感一致という言葉があります。人が動くには理屈だけでは不十分で、感情への考慮も必要であるということを意味します。理と感は、両立すべきものであるということです。ロジカルシンキングによって理屈を担保し、アサーションによって感情を考慮することができます。

具体的なケースで、この両立を目指して考えてみましょう。あなたならどう伝えますか?考えながら読んでみると、参考になるかもしれません。

ケース1:部下の提案内容に抜け漏れがあり、上司として修正を求める場面

部下のBさんが作成した新商品の販促提案に、重要な市場調査データが反映されていないことに気づきました。このままでは説得力に欠け、社内の承認が得られないリスクがあります。しかし、Bさんはこの提案作成にかなりの時間を費やしており、単に指摘するだけではモチベーションを下げてしまう恐れもあります。

この場面で、ロジカルシンキングとアサーションを両立させた伝え方を考えてみましょう。まずはロジカルシンキングの観点から、次のように整理できます。

主張:「提案内容に市場調査データを反映する必要がある」

根拠1:「市場調査データは、新商品がターゲットに受け入れられる可能性を示す重要な裏付け資料である」

根拠2:「社内の承認プロセスでは、エビデンスのある提案が求められている」

これを踏まえたうえで、アサーションの視点を取り入れて、Bさんを尊重しながら伝えると、次のような表現になります。

「Bさん、提案書をここまでまとめてくれて本当にありがとう。とてもわかりやすく整理されていて、商品の魅力がよく伝わってくるよ。1点だけ追加をお願いしたいんだけど、今回のターゲット市場に関する調査データも一緒に盛り込んでもらえるかな?会社の承認プロセスでは、エビデンスがあるとより通りやすくなるし、Bさんの提案がさらに強く響くと思う。もしデータ探しやまとめ方でサポートが必要なら、遠慮なく相談してね。楽しみにしてるよ!」

このように、努力への感謝をまず伝えたうえで、修正理由をロジカルに説明し、支援する姿勢も示すことで、Bさんの尊厳を守りつつ、提案の改善を促すことができます。

ロジカルシンキングで「何を」「なぜ」伝えるかを整理し、アサーションで「どのように」伝えるかを工夫する。これが、理感一致を実現するためのコミュニケーションです。別のケースも見てみましょう。

ケース2:年上の部下に業務改善を依頼する場面

あなたは30代のチームリーダー。担当プロジェクトで、50代の部下Cさんが進める作業の進め方に非効率な点があり、結果として納期が遅れがちになっています。改善をお願いしたいものの、Cさんは経験もプライドも高く、単なる指摘だと反発されるリスクもあります。

このような場面でも、ロジカルシンキングとアサーションの両立が重要になります。

まず、ロジカルシンキングで整理すると次のようになります。

主張:「作業手順を見直し、効率化を図る必要がある」

根拠1:「現状の進め方では、作業時間が想定よりオーバーしており、プロジェクト全体の進捗に影響が出ている」

根拠2:「一部の作業はツールの活用によって短縮できることが確認されている」

これを踏まえ、アサーションを意識した表現を考えます。

「Cさん、いつもチームを支えてくださって本当にありがとうございます。Cさんの細かい確認作業のおかげで、大きなミスが防げていると感じています。ひとつ相談なんですが、いま進めている作業について、実は少しだけ見直せるところがありそうなんです。最近導入したツールを使えば、Cさんがやってくださっている確認作業をもう少し短縮できて、プロジェクトの進捗も円滑になりそうなんです。もしよければ、一度一緒に見直して、Cさんの負担も減らせたらと思うのですが、どうでしょうか?」

このように、日頃の貢献への敬意をまず伝え、「改善=批判」ではなく「提案」だと位置づけ、本人のメリット(負担軽減)にも触れながら協働姿勢を示すことで、よりスムーズに受け入れてもらえる可能性が高まるでしょう。

年齢や立場に関係なく、相手を尊重し、納得感を持って動いてもらうために、ロジカルシンキングとアサーションの両輪を意識することが大切です。

5.「正論をふりかざしてきたかも?」と思うあなたへ

ロジカルに考え、アサーティブに伝える。この両方を意識して「理」と「感」を一致させたコミュニケーションを取ることで、より相手との信頼関係を損なうことなく、組織の成果にもつなげていくことができます。

「正論をふりかざしてきたのかも?」と思う方も、正しさを担保するロジカルな力が備わっているだけに、アサーティブな表現力が加われば、伝える力が飛躍的に向上するでしょう。

自分が正しいという思いから、つい感情のままに正論をふりかざしてしまうという方は、マインドフルネスという、自分を客観視し、冷静さを保つ効果のある手法が有用です。前述のアサーションの記事にその解説もありますので、ぜひ参考にしてみてください。

最後は受け止める相手次第です。相手を尊重したつもりでもうまくいかないこともあるでしょう。ただ、それでも自分なりに考えて進歩していくしかありません。本記事で示したような考え方が、参考になれば幸いです。

このコラムを書いたプロフェッショナル

長峰 悠介

長峰 悠介
株式会社働きごこち研究所 代表取締役

日本電気株式会社を経て、株式会社プレセナ・ストラテジック・パートナーズやメンタルヘルス関連サービス企業でのマインドフルネス講師、法人研修開発に従事。
現職でも、大手メーカーなどに向けたレジリエンス/アサーション研修に多く登壇。

日本電気株式会社を経て、株式会社プレセナ・ストラテジック・パートナーズやメンタルヘルス関連サービス企業でのマインドフルネス講師、法人研修開発に従事。
現職でも、大手メーカーなどに向けたレジリエンス/アサーション研修に多く登壇。

得意分野 モチベーション・組織活性化、安全衛生・メンタルヘルス、コーチング・ファシリテーション、コミュニケーション、ロジカルシンキング・課題解決
対応エリア 全国
所在地 千代田区
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