社内講師の力量が露呈する「発問スタンス」
細谷です。教え方・学ばせ方が上手な社内講師や社内インストラクターの特徴にはいくつかありますが、私が企業内の社内講師の方をアセスメントするときは、その講師の「発問」に着目しています。
発問とは講義や研修内で受講者の理解や学びを促進することを目的に講師が投げかける「問いかけ」のことをいい、似た意味での「質問」とはその性質が大きく異なります。
質問は、コーチングで扱われるように「答えは相手の中にある」というのが特徴ですが、一方で発問は、教育手法のひとつで「答えは教える側の中にある」というのが私たちの解釈です。
アセスメントで社内講師の方たちの発問を観察していると、よくあるのが、その場の全員が知っていることをわざわざ問うような、単なる「確認」になる場面を見かけます。また、発問であっても「みなさんはどうですか?」といった何を考えさせたいのかがはっきりしないものや、特定の知識や記憶を問うなど、知らなければ答えようのない発問も多く見られます。
特に私が気になるのが、講師の都合で相手に問う「質(たち)の悪い」発問です。それは例えば、講師が思考プロセスをほとんど示した上での「誘導的な発問」だったり、発問を思考手段としない、思いつきで、まるで合いの手の代わりのように展開する「恣意的な発問」です。これらの背景には「講師は受講者に教えるもの」、「受講者は講師から教わるもの」という無意識の役割と関係性が影響していると感じています。
一方で、「良質な発問とは何か」を考えたときに、上手な講師に共通しているのは、彼らの発問には必ず受講者に「明確な発見」を求める要素が含まれています。
「明確な発見」とは、教える側が持つ答えを客観的な発問によって、学ぶ側が自らの思考によって獲得する主体的な気づきのようなイメージです。
私はこの「明確な発見」の要素には2つあると考えていて、1つは、研修で扱う教材や素材に対して「分析させる視点」があるという点です。例えば、資料や統計グラフなどを使って、この資料から「どんなことが読みとれるか」という発問は、シンプルではあるけれども学ぶ側が主体的に思考する客観的な発問ととらえています。
もう1つが、「解決に向けた方針」、つまりゴールを受講者と共有する展開があるという点です。例えば解決までのプロセスがいくつかある問題において、講師がそのプロセスを段階的に積み上げる展開ではなく、解決に繋がる道筋を早い段階で問う発問が効果的になります。これを私たちは「方針呈示」のある教え方と言っているのですが、そこには「何がわかれば(何が特定できれば)解決できるのか」という発問が主体的な思考を促します。
このように社内講師は、その役割の中で講師が持つ知識やスキルを無意識に「教えなくては」という感覚になりがちですが、先にあげたような2つの観点で受講者の明確な発見を促進していくことができます。
「答えは教える側にある」という、ともすれば誘導的で恣意的になりがちな発問の特性を、「発見は学ぶ側にある」というもうひとつの観点から見直してみることで、発問スタンスが変わり、研修のクオリティが高まっていくと思われます。
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細谷幸裕(ホソヤユキヒロ) 株式会社 市進コンサルティング 代表取締役
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