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【対談】陶芸家 十四代 今泉今右衛門さん

プロローグ 世界史が発見した有田~永続する価値を問う~

 

変化の激しい時代、リーダーが直面する最大の問いは「何を守り、何を変えるか」です。

 

この問いに数百年間という時間軸で答え続けてきた町があります――佐賀県有田町。

 

本対談は400年の間、世界の変化に対応しながらも「色鍋島」という唯一無二の価値を守り続けてきた十四代 今泉今右衛門さんとの対話を通じて経営に応用可能な永続する価値を問う試みです。

 

*********

 

私はこれまで多くの経営者や次世代リーダーとともに対話を重ねてきましたがその奥には常に「永続する価値」という普遍的な問いが横たわっていました。

 

その問いに対する最も鮮烈な答えのひとつが有田で十四代 今泉今右衛門さんと交わした対話にあります。

 

「時代を超えて継承されるものとは何か」

「永続する価値はどのようにつくられるのか」

 

このような問題意識をもつリーダーの皆さんと本対談を分かち合うことにより、長期的な価値創造の一助となることを願っています。

 

 

(永続する価値 6つの原則)

 

□伝承と伝統 ― Accumulated Challenges

伝統とは時代ごとの挑戦の積み重ねの結果である。

 

□永続性と個人 ― Eternity

組織の長期的な時間軸に自らを位置づけ最善をつくす。

 

□文化の特色 ― Reframing

組織を取り巻く脅威や弱みを機会・強みとして捉えなおす視点をもつ。

 

□受容 ― Intellectual Resilience

最善を尽くした上で委ね、待ち、結果を受け容れる知性を磨く。

 

□対話 ― Dialogic Leadership

対話により共に同じ方向を向き、未知の価値を共に探る。

 

□アイデンティティ ― Core Legacy

揺らがない核を明らかにし、次世代へ継承する責任を担う。

 

*********

 

現代のグローバル化の起源は15世紀半にはじまった大航海時代に遡ります。

 

当時の商人、宣教師や冒険家たちは3G ――Gold(交易)、Gospel(布教)、Glory(名誉)を追い求め、1600年にイギリスが、1602年にはオランダがそれぞれ東インド会社を設立しアジア地域との貿易を特権的に行ないました。

 

その頃、日本では天下統一を果たした豊臣秀吉が明の征服を目指し朝鮮に出兵、いわゆる文禄・慶長の役です。その際に李朝の朝鮮人陶工 李参平(日本名:金ケ江三兵衛)らを連れ帰り、当時は人も入らないような山奥だった有田の地で偶然、磁器の原料である良質で豊富な陶石を発見しました。これにより日本ではじめての磁器が作られました。

 

中国の景徳鎮の焼き物はもともと東インド会社により欧州に輸出されていましたが、明朝末期の中国国内の動乱により輸出できなくなり、オランダ東インド会社(VOC)が代替地として目をつけたのが有田でした。これが欧州の王侯貴族の目に留まります。有田の焼き物は当時、伊万里を積出港としていたことから伊万里焼という名前で広まっていき何百万個という焼き物が海を渡りました。

 

その後もドイツではアウグスト強王により東洋からもたらされた白磁の現地製造を目指しマイセンの焼き物が作られたり、中国では明から清朝に政権がかわると輸出が復活したりと時代は巡ります。また明治の初期には欧州でジャポニズムの運動が起こり再び注目が集まるなど紆余曲折がありますが、大航海時代にはじまったグローバル化が有田を発見し、有田が世界を引き寄せた歴史といってもいいでしょう。

 

このように「有田が世界を引き寄せた歴史」とは

 

1.朝鮮陶工による地質的発見

2.東インド会社による経済的発見

3.ヨーロッパ王侯貴族による文化的発見

 

という、3つの発見からなるものだったのです。

国内に目を転じてみましょう。当時、鍋島藩が幕府への献上品として作らせたものや藩の城の中で使う磁器として作られたものを色鍋島と言います。初代 今泉今右衛門は江戸期は鍋島藩が行う窯運営の赤絵の仕事をしてきました。ところが1871年に廃藩置県となり鍋島藩窯が解散すると十代 今泉今右衛門は自ら本窯を築き、色鍋島をはじめとする一連の磁器の製造に自ら踏み切ることになり、その技と精神は現代にも受け継がれています。

 

十四代 今泉今右衛門さんは2002年に襲名され、初代が赤絵付をはじめてから370年後の2014年、日本の陶芸史上最年少で重要無形文化財「色絵磁器」の保持者(人間国宝)に認定されました。十四代 今泉今右衛門さんは雪の結晶という独自のデザインや墨はじき(すみはじき。墨で文様を描き、上から絵具を施すと、墨に入っている膠分で絵具をはじき、その後焼くと墨も焼き飛び白い文様が出てくる白抜きの下絵付けの技法)という技法でも知られ、海外ではイギリスの大英博物館やニュージーランドのオークランド美術館に展示されているほか、近年ではフランスのクリスタルのラグジュアリーブランドであるバカラ(Baccarat)とコラボレーションした作品を制作されるなど世界で評価されています。

 

 

370年にわたる継承とは、単に技術を守ることではありません。

 

何を守り、何を変え、どう世界と向き合うのか。

 

伝承と伝統、永続性と個人、文化の特色、受容、対話、そしてアイデンティティ。

 

十四代 今泉今右衛門さんとの対話を通じ「時代を超えて継承されるものとは何か、永続する価値はどのようにつくられるのか」に迫りたいと思います。

 

 

【略歴】

十四代 今泉今右衛門(いまいずみいまえもん)さん

陶芸家。重要無形文化財保持者(人間国宝)。色鍋島の伝統を継承しながら、「墨はじき」技法を柱とし、現代的感覚を取り入れた作風で知られる。

1962年、佐賀県有田町に生まれる。武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科(金工専攻)卒業。2009年、紫綬褒章授章。2014年、有田陶芸協会会長に就任。同年、51歳で重要無形文化財「色絵磁器」保持者に認定され、日本陶芸史上最年少の人間国宝となる。2017年にはフランスのクリスタルブランド、「バカラ」との共同制作を発表。2020年日本工芸会 副理事長に就任。代表作品には「色絵薄墨墨はじき四季花文蓋付瓶」、「色絵薄墨墨はじき雪文鉢」、「色絵雪花墨色墨はじき菊文花瓶」などがある。

 

 

※本対談は非売品・限定配布の冊子「問いかける思想~十四代 今泉今右衛門さんが語る永続する価値~」に基づいています。歴史的・文化的価値の共有と継承に微力ながら寄与すべく、全文はPDF形式で公開しています。趣旨に鑑み、内容の改変・再編集・転載はご遠慮賜りますようお願い申し上げます。

このコラムを書いたプロフェッショナル

小平達也

小平達也
株式会社グローバル人材戦略研究所

人材育成・組織開発の専門家として対話型プログラムを多数開発。組織の関わり合いを無形資産として捉えエンゲージメントと組織活力の向上を行っている。政府有識者・大学講師ほか経団連グローバル人材育成スカラーシップ設立時から一貫して支援している。

人材育成・組織開発の専門家として対話型プログラムを多数開発。組織の関わり合いを無形資産として捉えエンゲージメントと組織活力の向上を行っている。政府有識者・大学講師ほか経団連グローバル人材育成スカラーシップ設立時から一貫して支援している。

得意分野 経営戦略・経営管理、モチベーション・組織活性化、グローバル、リーダーシップ、マネジメント
対応エリア 全国
所在地 港区

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