中国での日本人母子切り付け～駐在員と帯同家族をどう守るか～

中国江蘇省蘇州の日本人学校のスクールバスの停留所で、バスを待っていた日本人の母（３０代）と未就学の男の子が刃物で切り付けられ、スクールバスの案内係で親子2人をかばった中国人の女性従業員も重体という報道がありました。現地の日本人学校は休校となり、会社を休んでいる駐在員もいるようです。

直接的に被害にあわれた方はもちろん、多くの駐在員・帯同家族にショックが広がっているようです。各社には人事の定例巡回やヒヤリング、産業医の面談などそれぞれのサポート方法があると思いますが、ぜひ帯同家族の安全という点も念頭にいれ、実施していただきたいと思います。

グローバル人材戦略研究所が提供しているオンライン研修「グローバルマネジメント基礎講座~リスク管理編~」では、海外駐在員だけでな帯同家族、出張者も対象としていますが、そこでも紹介しているとおり、犯罪は実際に犯行を行って初めて犯罪となるからこそ、予防・自己防衛が大事になります。

「目立たない」

「用心を怠らない」

「行動を予知されない」

これらは外務省による海外安全３原則ですが、ここでは「目立たない」に関する注意点をご紹介します。

・周囲に合わせるようにし、目立つ服装は避ける。

・自分の国籍や所属などのヒントとなる服装を避け、また会社のロゴの入ったユニフォームなどは着ないようにする。

・人種、民族、国籍、宗教などを理由とした犯罪のことをヘイトクライムといいます。地域性のみならず日常のコミュニケーションでも注意する。

今回の事件報道をみると、「目立たない」という原則に対し、日本人学校のスクールバスのバス停という、個人では防ぐことが難しい場であったことが推察されます。

また、共同通信によると4月にも日本人男性が面識のない男に切り付けられる事件が起きており、駐在員からは「日系企業に解雇された人の逆恨みでは」と推測する声がきかれたとのことです。

実は「日系企業に解雇された人の逆恨み」が原因と思われる犯行は中国だけではありません。6月4日にはベトナム・ホーチミンで白昼、日本人の出張者が路上で刺殺されています。この場所も、日本人がよく集まる日系ホテルや飲食店がある日本人街の近くですので多くの駐在員・帯同家族や出張者にショックを与えました。報道によると犯人は被害者の出張者との直接の面識はないものの、以前に日本人上司の下で働いたことがあり、叱責を受け退職してから外国人に恨みを持つようになり、復讐の機会を待っていたとのことです。

「日系企業に解雇された人の逆恨み」はヘイトクライムを招くとも言え、だからこそ指導の際にはコミュニケーション上、細心の注意が求められるのです（受講された方はご存じのとおり、弊社の研修や公開講座で再三強調していることです）。

実際の状況や犯行目的などは今後の調査・報道をまちたいと思いますが、今まで以上に一人ひとりが自己防衛力（リスクリテラシー）を強化していく必要があることだけは強調しておきたいと思います。

海外駐在員、帯同家族および出張者に「一人ひとりが自らの安全を確保でき（予防）」と「リスクが発生した場合でも、その被害を最小限に留めること（対応）」に関する情報提供を行い、安全配慮義務を果たしていただければと思います。