経営計画とは(1)
お客様と経営計画について議論する際に、人によって言葉の意味合いが違うことがよくあります。
経営計画、経営方針、経営目標、経営戦略といったあたりの用語の定義があまり明確でないためだと思われます。
そこで、中期経営計画や年度経営計画などの策定や経営方針、経営目標を設定するコンサルティングを実施する際に、お客様にご説明する内容の概要を2回に分けてご紹介したいと思います。
1.経営計画とは
■中期経営計画とは
中期経営計画とは、役員(と部長)によって正式に策定された複数年後(多くは3年後)のゴール(=目標)と、そこに到達するための戦略を記述したものです。
■年度経営計画とは
中期経営計画は、その多くが3年で策定されますので、それを年度に落とし込んだものです。
1年後のゴール(=目標)とそこに到達するための戦略が記述されます。
ゴール(=目標)と戦略が記述されるので「計画」という言葉を使用するのは、あまり適切ではないと当社では考えています。正しくは「中期経営方針」や「年度経営方針」という単語を使用すべきでしょう。
しかし、「中期経営計画」という単語が市民権を得ていますので、多くの企業が使用しているのが実態です。
2.経営計画立案の進め方
1)問題設定
まず、中期経営計画ですが、3年後にありたい姿を定義し、現状とのギャップを明確にしていくという、いわゆる「設定型の問題」を明らかにしていくことからスタートします。
今現在は問題は発生していないけれども、3年後のゴール(=目標)を考えると、ここに問題がありそうだ、というように仮説で設定します。現時点で問題が発生しているわけではないので、「Why」を繰り返す原因追求型のアプローチではないことに留意してください。
2)課題設定
問題を設定できれば、その中から取組むものを「課題」とします。仮説で設定した問題すべてに取組めればよいのですが、当然ながら資源が限られていますので、3年間で確実に取組めるものに絞り込むことが重要になります。
なお、このステップを飛ばしてしまい、仮説設定した問題すべてを課題として取組むような中期経営計画ができてしまうと、示達される側の社員は「これはとても無理」と最初からあきらめてしまい、中期経営計画の達成に向けた執着心が薄れてしまうので注意が必要です。
3)優先順位の設定
3年間で取組む課題を設定したら、その課題の中で優先順位を決定します。基準は重要度と緊急度です。両者をそれぞれ縦軸、横軸として、高・中・低の3段階に分けた9マスのマトリクスを作成し、それぞれに課題を整理します。
「課題はすべてが重要で緊急である」との声が聞こえてきそうですが、ここでしっかりと9マスに分解し、何が何でもやりきるものと、そうでないものを識別しておくことが重要です。
これは、優先順位をつけない場合は、社員に示達された際に、社員の受け取り方として"どれも重要"と言われてしまうと、"どれも重要でない"と読み替えられてしまうことを考慮に入れたものです。
4)目標の設定
次のステップで戦略を立案しますので、課題それぞれの目標を設定します。
ただし、そもそも課題は3年後のありたい姿から設定されていますので、ありたい姿が目標となります。
その姿を数字や何らかの到達点で表現して、社員に理解してもらいやすくします。
5)戦略策定
戦略策定とは、課題解決して目標に到達するために、何(what)をするのかを決める活動です。
企業の経営活動は、商品やサービスの営業活動を行い、他社と競いながら顧客に提供し、その対価として売上をあげることです。そのため、戦略の中核になるのは、営業戦略、商品(サービス)開発戦略、競合戦略、人事戦略になります。当然ですが、これら以外にも経営機能ごとの戦略が必要となります。
6)戦術構築
戦略策定で何(what)をするのかが決まったら、次はそれをどのようなやり方(how)で活動していくかを決めていきます。これを戦術構築といいます(※方策と呼称されることがあります)。
ゴール(目標)に到達するためにやること(what)に対して、具体的にやり方(how)を決めていくことになります。
7)経営方針とは
ここまででご説明しました、2)課題設定~6)戦術構築の内容をまとめたものが中期経営方針となります。
なお、6)戦術構築で、プロセスを設計した後に、その実行計画まで策定すると中期経営計画と表現されるようになります。釈迦に説法ですが、最近は環境変化が早いので、実行計画まで含めないケースが徐々に多くなっていますが、それでも中期経営方針ではなく中期経営計画と呼称されることがあり、表現があいまいになっています。
当社は、3年間の毎年の目標到達点の概要は記載するものの、実行計画は年度経営計画のみに記載することを推奨しています。
次回は、「年度経営計画の策定」についてご説明します。
- 経営戦略・経営管理
- 労務・賃金
- 人事考課・目標管理
- マネジメント
- 営業・接客・CS
25年のコンサルティング経験で、経営・人事・営業分野で数多くの成功実績を有し、お客様の経営方針を実現する基盤となる制度を構築しています
経営計画の策定、経営方針管理プロセス設計、営業活動プロセス設計など、人事以外の分野のコンサルティング経験を活かして、“経営方針を実現する”ことに焦点を当てた人事制度を構築しています。
小川 貴司(オガワタカシ) ストリーム経営コンサルティング株式会社 代表取締役社長
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