ハラスメント対策研修を行なってもハラスメントが減らない理由
今回はハラスメントについて取り上げます。
パワハラ、モラハラ、セクハラ、カスハラなど、ハラスメントに関する相談は私の元にも定期的に届きます。
ハラスメントに関する認識は世間でも浸透しつつあり、どの企業でも対策に乗り出しています。
管理職など上司と部下の関係はもちろん、同僚同士でハラスメントが発生することもあるので、ハラスメント研修を実施し社内で学習機会を持つことは重要です。
その一方で私の元には、次の様な声が寄せられることもあります。
●ハラスメント対策研修を行なってもハラスメントが減らない
どれだけ手厚く研修を実施しても、ハラスメントの相談が後を絶たないことがあります。
また既存のハラスメント研修に、物足りなさを感じているという声もあります。
これでは本質的な対策にならないですし、義務的に研修機会を設けただけになってしまいます。
もちろん既存の研修に満足しているなら十分ですが、そうでない場合、次の様な原因が考えられます。
■一般的なハラスメント研修の落とし穴
・ハラスメントの定義や種類
・昨今の情勢とハラスメントの関連性
・ハラスメント防止フローの解説
・パワハラの定義とグレーゾーン
・パワハラになり得る言動の紹介
・パワハラを防ぐ対策
・モラハラの定義とグレーゾーン
・モラハラになり得る言動の紹介
・モラハラを防ぐ対策
・セクハラの定義とグレーゾーン
・セクハラになり得る言動の紹介
・セクハラを防ぐ対策
・カスハラを未然に防ぐ方法
・部下からハラスメントの相談を受けた時の対応法
・組織全体のハラスメント対策
一般的なハラスメント研修には、上記の内容が含まれていると思います。
場合によってはグループワークを実施したり、チェックリストに回答しハラスメントをしていないか確認することもあります。
確かに一般的な研修を受けることで、ハラスメントに対する理解は深まりますし、自身の言動をハラスメントの観点から振り返ることもできます。
ですが一方でハラスメント研修では、知識や情報を伝えることに終始してしまうこともあります。
「ハラスメントに対する理解はできた」
「じゃあ今から具体的に職場でどう活かしたらいいの?」
こうした声が多く聞かれるのです。
知識や情報を学ぶことはできたので、その時点での満足度は高いかもしれませんが、仕事の場面で実際に活かせる様な理解が生まれていないのです。
しかも専門用語ばかりが登場すれば、受講者も実際の業務に落とし込みにくくなります。
これはハラスメント研修はもちろん、ハラスメント対策の書籍等を見ても、あくまで一般論に終始した内容になっていることも多いです。
「既存のハラスメント研修をやったけど、手応えがない」
「新たなアプローチの研修を探している」
こうした声が私のもとに寄せられることもあります。
■本当にハラスメントをする人は無自覚
ハラスメント研修を受けても、「自分には関係ない」と思って受講している人は一定数います。
ふんぞり返って研修を受けている様な人こそ、自覚なくハラスメントを行なってしまうのです。
そして彼らが支配的な部署では、パワハラが横行したり黙認されやすくなるのです。
では彼らが最初からハラスメントをしていたかと言うと、決してそうではないでしょう。
ハラスメントについて正しい理解がないと、「これが正しい」と勘違いをしてハラスメントを行なってしまうのです。
さらに言えば真面目で意欲のある社員も、一般的なハラスメント研修を受けるだけだと、自覚なくハラスメントをしてしまう側に変わる可能性があるのです。
ハラスメントの知識や情報が理解できても、実際に仕事へどう活かすかが本人の中で結びつかないと、次第に研修の内容を忘れてしまいます。
そして半年後、1年後には、無自覚にハラスメントをする側に回ってしまう可能性があるのです。
また「ハラスメント研修」という言葉を聞き、「自分には関係ない」と抵抗を示す人もいます。
ハラスメント研修という言葉から、どこか自分が責められている様に感じれば、自分で自分を守るために、研修内容を心理的にシャットアウトしてしまいます。
●ハラスメントは人間関係の悩み
ハラスメントの定義や罰則など、知識や情報を得ることも大事です。
ただしハラスメントの本質とは「人間関係」です。
職場で理想的な人間関係が築けていれば、そもそもハラスメントは未然に防げるのです。
たとえば上司と部下にしても、日々の業務で信頼関係が築けていれば、ハラスメントは起こりません。
たとえグレーゾーンの行為があっても、自身の行為を反省し次に活かすことができます。
つまり信頼関係の築き方について理解することが、ハラスメント対策にも有効なのです。
そして私は信頼関係を築く具体的な方法として、仕事の人間関係の悩みを解決する3ステップワークを実施しています。
心理学の視点から独自に開発したワークですが、このフレームに当てはめることで、ハラスメントを未然に防ぐことができます。
たとえグレーゾーンの行為が発生しても、本人が3ステップワークで振り返ることで、ハラスメントの常態化を防ぐことができます。
■ハラスメントの原因は自信のなさ
そしてハラスメントの根本原因は自信のなさです。
自信のなさに直面した時に、ハラスメントが発生してしまいます。
そしてここが重要なのですが、ハラスメントをする側とされる側の両方に、自信のなさがあります。
一般的なハラスメント研修では、ハラスメントをする側の視点で語られることが多いです。
ただし心理学の視点に立てば、ハラスメントをされる側の自信のなさを振り返ることが、ハラスメントを未然に防ぐことにつながります。
たとえばパワハラをする人には、次の様な自信のなさがあります。
・自信がないから威圧的な言動をしなければいけない
・自分の支配下に置かないといけない
・反論されたり舐められない様に振る舞わなければ
・自分の価値観が正しいと思わねば
自信がないからこそ自分を正当化したり、相手の言動を否定的に見てしまいます。
また自信がないことで、暴力や威圧的な言動に走ってしまいます。
「強がり」という言葉がありますが、本当に強い人なら必要以上に自分を強く見せません。
自信のなさに直面した時に、必要以上に自分を強く見せてしまうのです。
その一方でハラスメントをされる側にも自信のなさがあります。
ハラスメントがなくならない背景には、同じ人が何度もハラスメントの相談をしているケースがあります。
異動させたり上司を変えても、定期的にハラスメントの相談が寄せられるのです。
この場合、本人に問題があるかもしれません。
ハラスメントをされる側には、たとえば次の様な自信のなさがあります。
・相手の顔色を伺って働いている
・嫌われたり怒られるのが怖い
・相手の意見に反論しないで良い子を演じている
・心配してもらったりかまってもらうために注意を引こうとする
つまりハラスメントされる側の言動により、結果的にハラスメントを引き起こしてしまうのです。
あるいは被害者意識があったり他責思考な人ほど、都合の悪いことがあれば誰かのせいにします。
「ハラスメントを受けた」と何でも言いふらすかもしれません。
●ハラスメントをなくすことがゴールではない
ここまでお伝えした様に、ハラスメントをする側とされる側、両方の視点に立って振り返ることが、ハラスメントを未然に防ぐ上で大切です。
先ほど紹介した3ステップワークでも、ハラスメントをする側とされる側両方の原因を振り返る時間を設けます。
どちらか一方を悪者にするのではなく、どちらの視点からも振り返ることで、冷静に状況を受け止められる様になります。
何より会社全体の目線で考えれば、ハラスメントをなくすことは目的ではなく手段の1つだと思います。
「今まで以上に成果が出る職場にしたい」
「社員が気持ちよく働ける職場にしたい」
「目標に向かって一致団結できる職場にしたい」
要するに、最高の職場にしたいのだと思います。
そして最高の職場にする手段の1つとして、ハラスメントへの対策を考えているのでしょう。
だからこそ私は、人間の本質に向き合っていくことが、本当の意味でハラスメントをなくすことにつながると考えています。
普段から信頼関係を築きながら、人間関係の悩みを抱かず働くことは、ハラスメントをなくし最高の職場にすることに直結します。
そしてハラスメントの根本原因は自信のなさです。
私は自信のなさにフォーカスして、ハラスメントの研修を実施しています。
自信のなさに直面した時に、ハラスメントを引き起こさない様にするために、3ステップワークを用いて向き合い方を実践します。
また普段から信頼関係を築くために必要なことを、自信という観点からお伝えします。
本日のコラムが、何か1つでも役立つことがあれば幸いです。
本日も最後まで読んでくださり、ありがとうございました!
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高校教員を経て、独立した2017年から7,000名以上のお客様を支援。自身もカスハラを受けた経験があることから、企業におけるカスハラ対策をサポート。カスハラやクレームを受けても現場の社員や管理職が自力でメンタルを立て直せる3ステップを開発。
伊庭 和高(イバ カズタカ) 株式会社マイルートプラス代表取締役
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