生え抜き女性リーダー育成は、上司と共につくる組織文化変革

今月より、しなやかリーダー塾の成果発表会が各社で続々と始まっています。

一年を通して伴走してきた受講者の皆さんの姿を
改めて拝見するこの時期は、私にとっても
毎年身の引き締まる、特別な時間です。

しなやかリーダー塾は、女性管理職や
管理職候補の方にご参加いただくことが多い
プログラムですが、私たちが大切にしているのは
「本人の成長」だけではありません。

上司をしっかり巻き込みながら、
組織文化そのものを少しずつ変えていくことを
常にセットで進めています。

そのため成果発表会には、
必ず上司の方にも同席いただき、
受講者の発表に対してコメントを
お願いしています。

それでは、今回は、
「生え抜き女性リーダー育成は、上司と共につくる組織文化変革」
というテーマでお届けします。

■【事例】上司の言葉が変わると、組織が動き出す
 

成果発表会で、ここ数年特に印象的なのが、
上司の方からのコメントの変化です。

数年前までは、
「よく頑張りました」
「引き続き期待しています」
といった、総評的な言葉が多く聞かれました。

ところが最近は、
「この視点はチーム全体にも活かしたい」
「次は、こういう役割にも挑戦してほしい」
といったように、期待や信頼が具体的な
言葉として語られる場面が増えています。

これは育成対象者の成長だけでなく、
上司自身の“見方”が変わってきた証だと、
私は感じています。

その背景には、経営層や上司に向けて、
女性リーダー育成を経営戦略として捉える
意義を繰り返し伝えてきたことがあります。

育成対象者だけでなく、
上司を含めた組織全体の意識が変わることで、
確かな変化が生まれていることを、
今年も強く実感しています。

■データが示す「上司の関わり」の重要性
 

国内の公的統計を見ても、
女性管理職の割合は依然として
低い水準にとどまっています。

厚生労働省
「令和5年度 雇用均等基本調査」では、
管理職等に占める女性の割合は、

部長相当職で7.9％、
課長相当職で12.0％、
係長相当職で19.5％

と報告されています。

令和6年度も同様の傾向が見られ、
わずかな増加にとどまり、全体としては低水準が
続いている状況です。

では、なぜ女性管理職はなかなか増えないのでしょうか。
これは、本人の意欲や能力だけで、説明できる問題では
ないと、直接育成に携わる現場を見て感じます。

実際、海外の調査では、
マネジメントの質が高い組織ほど
従業員エンゲージメントが高く、
生産性や利益、離職率、顧客満足度といった
業績指標も大きく改善することが示されています。
（出典：Gallup社 Workplace Engagement 調査）

この結果は、人の成長や力の発揮が、
上司の関わり方やマネジメントの在り方に
大きく左右されることを示唆しています。

女性リーダー育成においても、
本人の努力だけに委ねるのではなく、
上司がどう関わるか、
組織としてどう支えるかが、
成果を左右する重要な要素であることが、
データからも浮かび上がっていると感じています。

■上司と共につくる、育成が根づく組織文化
 

これまでお伝えしてきたように、上司が
部下の成長を言葉にして伝える場を
意識的につくることは、組織全体の成長に
直結する重要な取り組みの1つだと考えられます。

• 1on1でのフィードバック
• 異動や役割付与の背景説明

こうした場面で、
「なぜ期待しているのか」
「どんな視点を評価しているのか」
を丁寧に伝えることで、
相互理解は着実に深まっていきます。

技術系企業において、女性リーダーがまだ
少数派である今だからこそ、
多様な視点を歓迎し、融合させる文化づくりが
重要だと感じています。

その積み重ねが、生え抜きの女性リーダーが
自然に育ち続ける組織への進化へと
つながっていくのだと私は考えています。