女性活躍推進にまつわる制度利用で不公平感が生まれる職場とは
最近、女性活躍推進プロジェクトで関わり始めた
ある技術系企業のワーキングにおいて、
「ダイバーシティ推進したことで、逆に不公平なっていることがある」
という声が噴出しました。
話に耳を傾けていると、社内制度を利用する人の
業務の皺寄せが、利用していない人に向けられており、
会社としては社内制度利用を推進しているため
マネージャーによっては、前者の方が評価が高いという
実態もあるようでした。
私は、男性管理職が多い技術系企業によく見られる、
「女性は保護する対象」という前提で制度運用されて
しまっているのでは、という懸念を抱いたのでした。
┏━━━━━━━━━━━━━━━┓
■女性は“保護すべき対象”なのか
┗━━━━━━━━━━━━━━━┛
多様な働き方を実現する制度を考えた時に
パッと思い浮かぶ代表的なものの1つが
時間短縮勤務制度ではないでしょうか。
昨年度の当社が実施した技術系企業に特化した独自調査、
「女性活躍推進2.0実態調査(1,381回答)」では
「現在、時間短縮勤務中」と回答したのは全体の2%と、
ほんのごく一部の社員の方となっていました。
さらに男女別に見ると、
「現在・過去も含めて時間短縮勤務の経験がある」と
回答したのは男性5%、女性20%という結果となっています。
(回答数:男性1,073回答、女性296回答)
これにより、制度利用しているほとんどが
女性社員であることが分かります。
この結果から、制度利用している社員がごく一部に
限られていて、かつ、その大部分が育児や介護を
主に担っている女性社員であることが見えてきます。
---------------------------------
Q.時間短縮勤務を利用したことがありますか?
<全国>
あり(過去に時間短縮勤務を利用):6%
あり(現在、時間短縮勤務中):2%
なし:92%
<男性>
あり(過去に時間短縮勤務を利用):4%
あり(現在、時間短縮勤務中):1%
なし:95%
<女性>
あり(過去に時間短縮勤務を利用):12%
あり(現在、時間短縮勤務中):8%
なし:80%
(女性活躍推進2.0実態調査2020より/リノパートナーズ調べ)
---------------------------------
以上のことからも、ごく一部の人を対象とした制度を作ると
「あの人だけ優遇されている」といった不公平感に
繋がりやすいという実態が、今回ご紹介した技術系企業の
女性社員たちの間で噴出してしまったと考えています。
このような状況を避けるためにも、
特に、現在の女性活躍推進に関する制度は
女性を“保護すべき対象”という考え方から、
「個人に活躍してもらうための制度」といった方向性に
転換する必要があるのではと私は痛感しています。
┏━━━━━━━━━━━━━━━┓
■新しい働き方へのシフト
┗━━━━━━━━━━━━━━━┛
時間短縮勤務という働き方を選択している方でも、
生産性高く、周囲の方と同等の成果を出しているのであれば
評価されていても不公平感につながる要素はないと思います。
しかし、実態としては
「時短社員がやり切れなかった業務を周囲が渋々対応している」
と感じる職場環境であったり、制度利用者の中には
「制度を悪用しているのではないか?」
と疑われてしまうような言動として周囲に受け取られている方も
いらっしゃるのかもしれません。
そのような実態があって、さらにマネージャー層の一部が
「女性活躍推進に関する制度を女性社員が取得して
それでも働いているのは会社としても望ましい。
家庭と仕事を両立して頑張っているから評価する」
といった形で“女性は保護する対象”として悪気なく捉えていると、
現場の不公平感をより一層刺激する結果になりかねないと
私は危惧しています。
特に、男性管理職比率8割超といった技術系企業においては
「仕事が終わるまで時間をかけて働く」という働き方が
まだまだ根付いているというのが、私が関わらせていただいている
技術系企業のほとんどの実態でもあります。
もし、家庭と仕事を両立している社員も活躍してほしいと
期待するのであれば、働き方を全社員が変えていく必要が
あると考えています。
つまり、育児や介護を担いながら働くという前提で
働き方を含めた仕事のやり方を新しい方法にシフトする
という考え方が重要ではないかと思うのです。
┏━━━━━━━━━━━━━━━┓
■当事者意識のある女性社員が突破口となる
┗━━━━━━━━━━━━━━━┛
多様な働き方が増える中、これまで通り
「仕事が終わるまで時間をかけて働く」ことから
新しい働き方にシフトしなければならないと
理解されている方がほとんどだと思います。
しかし、時間制約がない働き方ができる人が多く、
時間をかけて働くことで成果を出し、成長してきた
組織にとっては、そのままの働き方でも特に問題がない、
という職場風土があっても不思議ではありません。
そのような職場風土に風穴を開けるのが、
家庭と仕事を両立することに直面し、
当事者意識を持っている女性社員であると
私のこれまでの経験からも確信しています。
そんな女性社員の方が、限られた時間で会社が求める
成果を出し、“成功事例”として周囲に見せることは、
殊男性管理職比率が高く男性視点で運用されている組織では
「こういうやり方でも成果が出るなら取り組んでみよう」
という新しい風を組織にもたらす突破口となると考えます。
女性社員の新しい形での働き方による成果を
実際に目の当たりにするインパクトは、
組織の本質的な問題を課題を解決できるような
制度整備や運用にもつながっていきます。
もし、自社の女性活躍推進やダイバーシティ推進に関する
制度における不公平感について思い当たるようなことがあれば、
「多様な働き方を広げるためにできることはなんだろう」
という視点で、社内制度や運用について
一度振り返る機会を持っていただければと思います。
- 経営戦略・経営管理
- モチベーション・組織活性化
- キャリア開発
- リーダーシップ
- マネジメント
◆技術系企業D&I突破口となる次世代リーダー・女性管理職を育成
元NTT女性管理職10年、約500名のSE部門における人事育成担当3年の豊富な現場経験を持つ。これまでのべ5,000人以上の技術系企業のリーダー・管理職育成に携わる。専門は技術系企業に特化したD&I推進コンサルティング。
細木聡子(ホソキアキコ) 株式会社リノパートナーズ代表取締役/技術系ダイバーシティ経営コンサルタント/(公財)21世紀職業財団客員講師/中小企業診断士
対応エリア | 全国 |
---|---|
所在地 | 千代田区 |
このプロフェッショナルのコラム(テーマ)
- 女性管理職育成 (39)
- セクハラ・パワハラ対策 (4)
- 部下マネジメント (15)
- 女性のためのリーダーシップ (12)
- メンタル強化 (3)
- 人事施策・研修実施のヒント (58)
- 従業員数5~30人の社長向けノウハウ (7)
- 人が辞めない会社の作り方 (7)
- 女性活躍推進2.0 (36)
- リーダーの心得 (19)
- アンコンシャスバイアス (7)
- 業務改革プロジェクト (4)
- 部下育成 (25)
- ニューノーマル時代の人材育成スタイル (4)
- 男性社員比率が8割超の企業の女性活躍推進 (17)
- 完全オンライン研修の効果 (1)
- ダイバーシティ・マネジメント (11)
- 技術系女性社員のためのキャリア形成 (3)
- 社員が安心して成長できる組織作り (2)
- 社員の経営視点を醸成して会社成長を加速させる (9)
- 技術系企業に特化したダイバーシティ推進PJ (16)
- しなやか組織改革プロジェクト (5)
- しなやか姿勢のすすめ (14)
- ダイバーシティマネジメント (14)
- ダイバーシティ&インクルージョン (26)
- ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン (4)