「経営視点」が欠落した意見は「社員のワガママ」発言になる?!
ダイバーシティ経営改善プロジェクトで関わらせていただいている技術系企業様の女性メンバーから
「人物像定義のフレームワークに取り組んだものの、混乱してきて・・見ていただけませんか?」
というご相談をいただきました。
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■人物像定義で混乱!
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彼女が所属する企業は、出向社員とプロパー社員が半々で混在するIT系企業で、
過去には複数の企業が合併してできた背景もあり、人事制度1つとっても
その実行・実現が複雑になりがちな実態があります。
とはいえ、近い将来プロパー社員が会社運営を支える
重要な役割を担うことが予想されることから
ダイバーシティ経営への転換を図るため、
現在ダイバーシティ経営改善プロジェクトに取り組んでいる
という状況です。
相談を寄せてくださった女性(プロパー社員)は
管理職として企画業務に携わっており、次世代女性リーダー
としてプロジェクトに参加しています。
今回は、戦略人事の推進アプローチの一環として、
経営戦略・事業戦略を実現する「人材ビジョン設定」
について考えるパートで、実際に彼女が設定した
人物像定義を見ると、
●会社から期待されていること・役割の設定
●期待・役割を果たすための行動
これらの区別に苦慮していることが分かりました。
彼女の書き込んだ内容にコメントを綴りながら、
どうしたらこの区別ができるようになるだろうかと
考えていたところ、
「もしかしたら、“経営視点”が十分に醸成できれば解決できるのかもしれない」
ということに気づいたのです。
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■現場視点と経営視点
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人物像定義に取り組んだことのある方であれば
お分かりかもしれませんが、人物像定義のためには
会社の経営理念・ミッションから、現場で働く
社員ひとりひとりに何が求められているのかを
明確に把握しておく必要があります。
例えば、一般的な人物定義のための流れは
以下の通りです。
--------------------------------------------------------------
「会社」の経営理念・ミッションを明確にする
↓
「組織(事業部)」の役割・ミッションを明確にする
↓
「部門」が求められている期待・役割を明確にする
↓
「職種別・階層別」で求められている期待・役割が明確に定義される
--------------------------------------------------------------
最終的には、「職種別・階層別」で求められている
期待・役割が明確に定義されたものを踏まえて、
社員ひとりひとりが、その期待・役割を果たすために
「行動」「知識・スキル」「マインド」を設定し、
日々の業務遂行へつなげることが目指す形となります。
今回相談してくださった女性が混乱してしまった部分は、
●「部門」が求められている期待・役割
これが、「会社」の経営理念・ミッションから
考えたものの他に、
現場視点から見た「行動の内容」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
これが一部混同していたことが原因だったのです。
彼女にそのポイントをお伝えし、その他の部門の
具体的な記入例なども提示したところ、
「なるほど、スッキリしました!改めて考え直してみます」
とおっしゃってくださり、抱えていたモヤモヤも
吹き飛んだ様子でした。
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■経営視点を持つということ
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管理職やリーダーではなくとも、「経営視点」を持つということは、
とても重要なことであると私は考えています。
なぜなら、「経営視点」を持つことで、自分を取り巻く環境を
正しく理解し、会社が自分に期待していること、
求められる役割に則った行動ができるようになるからです。
よく現場社員のお悩みとして寄せられるのが、
「現場の課題を解決するためのアイディアなのに、
会社は理解してくれないんですよ!」
といった問題なのですが、どんなに実態を正しく伝えても、
そこに経営者側の視点がなければ、会社はなぜその状況に
陥っているのか把握することが難しくなります。
経営視点がないと、どんなに正しいことを伝えても、
「理由がわからない」「なんだ、社員のワガママか」
などと捉えられてしまいかねません。
実際、経営視点がない現場の意見は、
「なぜ会社は◯◯してくれないんですか!」
という他責意見に聞こえてしまいがちです。
社会生活に置き換えて考えてみても、
相手の視点を持った上で、実態に即した課題の解決方法を
自ら考えて提案できるようになることは、
大切なことではないでしょうか。
それと同様に、仕事においても経営視点を持つことで
自分が求められていることを理解し、自業務で求められている
行動に繋げられるようになれば、会社にとって必要不可欠な
人材となって、最終的には会社成長に導くことに
つながっていくのではないかと思うのです。
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■会社の方向性に合わせて自分の力を発揮する
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特に技術系企業においては、専門職として技術を極めたい!
という社員も多く、マネージャー志向の意識醸成が難しい
という事情もあるかと思います。
そのような中で、社員一人ひとりに経営視点を
持ってもらうためには、さまざまな工夫も必要となるでしょう。
とはいえ、会社という組織の中で仕事をしている以上、
共通理念のもと業務に携わっていることには変わりありません。
会社の理念・ミッションを理解し、自分の力を
会社の方向性に合わせて発揮することは、
自身と会社の双方の成長に直結します。
また、現場の実態と経営方針が合致した取り組みは、
現場業務のやりづらさの緩和や、働きがいにも
必ずつながっていくものだと私は考えます。
先行き不透明な今の時代、会社成長をもたらすために
努力すべきは経営者だけではありません。
会社の方針に合わせて、社員一人ひとりが
自律的に力を最大限発揮することによって、
会社成長につなげていくことが求められていると思います。
現場社員と経営層の意見の乖離を抑制し、
より生産性の高い業務運営の実現可能性を
高めるためにも、管理職・リーダー層に関わらず、
全社員向けに経営視点を醸成する人材育成施策を
一度検討してみるのも1つかもしれません。
- 経営戦略・経営管理
- モチベーション・組織活性化
- キャリア開発
- リーダーシップ
- マネジメント
◆技術系企業D&I突破口となる次世代リーダー・女性管理職を育成
元NTT女性管理職10年、約500名のSE部門における人事育成担当3年の豊富な現場経験を持つ。これまでのべ5,000人以上の技術系企業のリーダー・管理職育成に携わる。専門は技術系企業に特化したD&I推進コンサルティング。
細木聡子(ホソキアキコ) 株式会社リノパートナーズ代表取締役/技術系ダイバーシティ経営コンサルタント/(公財)21世紀職業財団客員講師/中小企業診断士
対応エリア | 全国 |
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所在地 | 千代田区 |
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