「シャンシャン面談」を「キャリアをつくるリスキリング」へ
■学ばない国ニッポン
デジタルトランスフォーメーション(DX)の必要性が日増しに高まっています。背景の一つとしては、昨年政府が発表した『骨太の方針2022』のなかで「人への投資」が脚光を浴びました。学び直し(リスキリング)などを通して、能力開発や労働移動を柔軟にしようというものです。
一方で、肝心の「人」を実地で支援する私達からすると、課題は一筋縄で解決しそうにありません。
このコラムが人事担当者やマネジャー、経営者のお役に立ち、形だけでない「学び直し」に貢献できればと願っています。
「今後も自己投資をする予定は無い」という事実
年明け早々の1月2日、日経新聞に『「学ばない日本人」にリスキリングを浸透させるには』という記事が公開されました。
職場での「学ばない」人を、制度面や心理面から多角的に検証している良記事です。
その中でも、パーソル総合研究所の「グローバル就業実態・成長意識調査(2022年)」のデータの引用には驚くものがありました。
勤務先以外での学習や自己啓発への投資について、日本は「現在も今後も自己投資をする予定がない」と答えた人の割合が42%と、諸外国に比べ突出しています。
■学ばない本質は「シャンシャン面談」?
どうして「自己投資をする予定はない」と決めつけてしまうのでしょうか?
年間13,000人、管理職層は700人と研修やコーチングで接している私から思うに、結論はこれです。
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「対話しているつもりで、実は対話になっていない。
なんちゃって我流1on1(シャンシャン面談)の常習化」
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シャンシャン面談が根付いた背景には、大きく2つの問題が所在しているように感じます。
1.キャリアは誰かが決めるものという他律感
リクルートワークスが出した調査を引用すると、日本は諸外国と比べて「キャリアは自分が決める」という意識が低いとのことです。
確かに次世代マネジャー研修においてもこんな意見が聞かれます。
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「自分が評価されるかどうかは異動の運次第」
次世代マネジャー研修での受講者の声(サンプル)
「結局上司にどう思われるかで、自分の昇進昇格が決まる」
次世代マネジャー研修での受講者の声(サンプル)
「組織の理屈に迎合することも、サラリーマンの大切なスキル」
次世代マネジャー研修での受講者の声(サンプル)
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「でも、自分から意志を発信して働きかけをする手立ては無いのですか?」と問うと、
多くの場合このように返ってきます。
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「昔は頑張ってアピールしたが、無駄だった」
次世代マネジャー研修での受講者の声(サンプル)
「頑張ってアピールしても、上司に気に入られない人間は皆不幸な処遇になった」
次世代マネジャー研修での受講者の声(サンプル)
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講師としては上記の意見に同意も反論もせず、つとめて「それで、あなたは何を行動したいのか?」を問い続けます。
※余談ですが、多くの場合、その中から約5割の方は、現状維持バイアスによる出口のない言い訳を続けていたという認知に至り、行動変容を起こそうとします。
さらにその中から約2割の方は、実際に上司やメンバーを巻き込んで業務改革を実行します。
では、本人の意志を尊重しない人的資本の活用が公然と行われているのでしょうか?
そんな仮説を持って経営者や人事と面談をすると、全く異なる意見が出てきます。
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「当社の人事制度は透明性がある。本人の意志を尊重し、多面的に評価をしている。実際に自らの意志で希望のポジションをつかんだ者は多くいる。」
経営者・人事部長の意見(サンプル)
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あれれ?では研修で聞かれた声はどう解釈しますか?と問うと、
「そんなの、単なる甘えでしょ」 経営者・人事部長の意見(サンプル)
と一蹴されることがほとんど。
そこで思うのです。
「この人達、面と向かってキャリアについて話してないな〜」
(組織開発を支援する堀井の内心)
つまり、評価面談もキャリア面談もやったことにして「シャンシャン」と終わる。
そんなシャンシャン面談を良き1on1だと誤解する。
なぜ良いのか。
それは、意見も対立もないことを美徳とする【事なかれ主義】があるからではないでしょうか。
それこそ対話が破綻している危機だと思うのです。
さて、この「キャリアは他人が決めるもの」というねじれ構造。その根本は何でしょうか。
そこで次の2.に着目です。
2.直線的65歳定年すごろくキャリア感
キャリア研修で決まって問う質問があります。
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「あなたは何歳まで働きますか。
また、なぜその歳まで働く必要があるのでしょうか。」
My Inc.(キャリアオーナーシップ研修)
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は〜。研修面倒くさい〜。
という表情の人も、この質問でハッとした表情になります。
まだハッとしてくれる方は素晴らしいです。
というのも、その後、3ステージのキャリア観にメスが入るからです。
多くの場合、私達は図の上側にある「3ステージの人生」という古いキャリア観を持っています。何の疑いもなくです。
だから、およそ45歳にもなるとキャリア上の目標が変わります。
「あと15年、どうやって傷つかずに退職金をもらうか」
多くのサラリーマンの”パーパス”
もちろん、それは定年が60〜65歳という前提が根拠なのです。
しかし、なぜ60〜65歳が根拠なのでしょうか?
そんなことも気にせず、すごろくキャリア(古いキャリア観)のゴールを目指す。
年間13,000人の方と対話をすると、残念ながら古いキャリア観が自己投資のあきらめを生んでいるように感じます。
■提案:研修を切り分ける
ここまで述べた問題をまとめると、次の2点になります。
1.我流の「シャンシャン面談」を認知し、本質的な対話力をトレーニングしよう
2.キャリア観を刷新し、対話によって目的や目標を再設定しよう
学び方にも工夫の余地があると思っています。
自分の首を絞める事になりますが、【集合研修】ありきで学びを設計するのは、
もうお終りにしたほうがいいでしょう。
そこで提案したいのは次の4つです。
1.対面✖️集団:チーム形成・問題発見対話
会うことの相乗効果や、ファシリテーターによる介在価値の再評価が起きうる
2.対面✖️個別
体験型の学習や実践へのフィードバックによる”成長実感”醸成が鍵に、指導者のフィードバック力が問われる
3.オンライン✖️集合:問題意識の醸成
いき過ぎたオンライン研修への過信が検討され、淘汰される傾向に
4.オンライン✖️個別:目標進捗の伴走
個別化プログラムや目標設定・目標進捗コーチングのニーズが上昇。学習履歴や習得技能のタグづけが本格化する
これは私の意見も入っていますが、同業界の社長や研究者の方と意見交換をさせてもらい、納得感ある内容を採用しました。
特筆すべきは、オンライン×集団教育(研修)は減少していくでしょう。
もっとも、この形は感染拡大を受けた緊急措置の側面がありました。
さらに経費削減など、合理化にも意味がありました。
しかし、肝心の学習効果に目を向けると、特にアクティブラーニングの分野では「叶うことなら対面で学びたい」という声が多数です。
よって、緊急措置的なこの施策を積極採用していく企業は少ないでしょう。
一方で、潜在的な問題を扱う対面×集団教育。
何より、個別の目的や目標に沿った学びを提供する個別×オンライン教育(LMSやコーチング)は急増するでしょう。
特に、個別×オンライン教育は米国においてタレントマネジメントの一部として実績があります。
また台湾や香港でのリーダー人材教育はトレーナーによる個別コーチングが主体となっています。
これらの国の特徴は、学習履歴をオープンバッジなどダグ付をして、キャリア開発の指標とする試みです。
当然のことながら、今後は日本でも普遍化するでしょう。
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「研修では、画面上の講師の話をよく聞き、
学んだことを現場できちんと活かしましょう」
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なんていう時代は、2〜3年のうちに激変するのではないでしょうか。
変化を拒むも、受け入れるも、結局は何を信じるか次第ですね。
■まとめ:楽をせずに、学びを個別化する
ここまでお付き合い頂きありがとうございました。
最後に研修講師として暴露します。
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「去年と同じ研修を「去年と同じように」という
シャンシャン研修のオーダーが
人事も講師も研修会社も”楽ちん”なんです」
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しかし、冒頭の「まくら」で触れたとおり、
それって教育を、
人の可能性を、
型にはめて安心していませんか?
アンドアは、シャンシャン研修をぶち壊します。
そして、最も面白くてきっかけになった、
社会人個別教育トレーナーNo.1企業を目指します。
今年もよろしくお願いします。
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「縦割り組織」を「共創組織」に変える“問いのデパート”
外資+国内、大手+ベンチャー、あらゆる組織風土の経験を生かした【対話型ファシリテーション】に強みがあります。大手企業のイノベーション事業、パーパス浸透からプロ野球選手のコーチ業まで、人と組織の活性化に実績があります。
堀井悠(ホリイ ヒサシ) アンドア株式会社代表取締役
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