退職金制度を効果的に運用するには 2
前回のコラムでは、退職金制度の効果を最大限に発揮するのに、
“メッセージ”と“仕組み”が必要不可欠であるということをお伝えしました。
そこで今回は、退職金制度の“メッセージ”を考えていくうえでも非常に参考になる、
「退職金制度のルーツ」を辿ってみたいと思います。
退職金制度のルーツは、江戸時代まで遡ります。
江戸時代、三井家(現在の三越)で、店で働いていた奉公人が独立する際に
「のれん」を現物支給していました。
それがやがて「のれん代」という現金に変わり、
いわば「独立支援金」の意味合いを持つようになりました。
その後、独立する・しないに関わらず奉公人全員に対して、
永年報奨の意味合いで支払われるのが慣例になっていったといわれています。
つまり退職金制度とは元々は「独立支援」「功労報奨」という明確な“メッセージ”を持っていたのです。
退職金制度の持つ意味合いとしては、他にも「給与の後払い」であるという説や
「老後の生活保障」であるという説がありますが、
いずれにしても退職金が紛れもなく“人件費”である以上、
その目的、期待効果をはっきりさせたうえで、それが実現できるような制度運営上の
“工夫”をすることが必要不可欠であると思います。
その工夫の一つの事例として、退職金制度を「独立支援金」としてのメッセージを打ち出し、
それを効果的に運用する方法として、
「独立支援金」というメッセージを持たせた退職金制度の設計についてご紹介したいと思います。
さて、そもそも退職金が支払われる時というのはどのような時でしょうか?
答えは当たり前ですが、「社員が会社を退職した時」です。
※懲戒解雇では退職金を支給しないなど、会社によって細かい支給要件は様々です。
つまり「企業と社員の縁が切れる時=退職金が支給される」ということです。
辞める社員の心情としては「退職金をもらった=会社との関係も清算」です。
ですが、もし退職金が独立支援金としてのメッセージを持っていたら?
それは「会社から独立しても頑張れよ!」という励ましのメッセージであり、
独立する社員の心情も「いつか成功したらこの恩を返したい」ということになるでしょう。
また、独立支援金制度があるということは、会社は社員に「独立して一人前になるまで、
しっかり育てるから頑張れよ!」というメッセージをも発信することになるわけです。
「独立」が一般的な業種と言うと、飲食業が一番に挙げられると思います。
ですが、他にも技術を重視する職種を抱えている、例えば建設業やIT業でも、
独立というキャリアパスが馴染む会社は多いと思います。
この独立支援金制度と人材育成制度を組み合わせることで、
実態のある独立支援制度を初めて会社が提供できることになります。
このように、退職金制度のメッセージは明確にすることで、
効果的な運用の土台ができるという訳です。
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山崎製パン㈱、セブンイレブン・ジャパン㈱、「TSUTAYA」FC本部㈱CCC人事部長、社長室長そして㈱ソフトバンクBBの業務企画部長と企業人を20年。独立し、㈱アウトソーシングSR、(社)人事部サポートSRを設立。
藤田 敏克(フジタ トシカツ) 社会保険労務士法人SRグループ 代表
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