財務会計指標に基づいて策定する要員計画の落とし穴
ホワイトカラーの生産性向上と要員計画を両立させる、といった取り組みは各社各様で取り組んでおられるかと思う。
その取り組み効果を十分に回収できないまさに「落とし穴」がある。その落とし穴について紹介したい。
ホワイトカラーの生産性向上、要員計画の両立をわれわれはPOP(ポップ)(peak organizational performance)とネーミングし、取り組んでいる(POPは、㈱エイチ・ピィ・ピィ・ティと、EYアドバイザリー㈱の共同で開発された、「ホワイトカラーの高いエンゲージメントを実現する要員計画・運用技術」)
【第一回:財務会計指標に基づいて策定する要員計画の落とし穴】
※日本の人事部サービス紹介ページ (http://jinjibu.jp/service/detl/11527/)にPDFとして掲示中
※今回は㈱エイチ・ピィ・ピィ・ティの坂本代表に執筆いただいた。
1.経営者の関心費用項目と要員管理
「経営上、気になる費用項目は何ですか?」。この質問に対してどの業種の経営者にもほぼ共通している項目があります。一つは人件費、もう一つは在庫(製造業の場合)。そして不思議なことに、「在庫と人件費」のように、逆の順番で回答する経営者もほとんどいません。つまり、経営者の関心項目、及び、その順序とは経営資源の有効活用順序を表しているのです。経営資源とは「ヒト・モノ・カネ」であり、正しい活用順序は「ヒト→モノ→カネ」です。決して「カネ→モノ→ヒト」や「モノ→ヒト→カネ」ではありません。
機械は1ℓのオイルに対して1ℓ分正しく稼働します。一方で、ヒトは1,000万円の人件費に対してそれ以上の働きをすることもあればその逆もあります。人材とは稼働した結果のバラツキが予想できない厄介な経営資源なのです。人材が生み出す結果にバラツキが実在する中で、その結果を生み出す人材の投入資源をバラツキなく計画しようというのは、論理的に考えても本末転倒かもしれません。しかし、職種によっては結果と投入資源のバラツキを抑えられるケースもあります。その対象は主にブルーカラー(以下、BC)であり結果に繋がる種々業務が定型業務であればこの不確実性は抑えられる可能性は高まります。一方で定型業務以外の業務も抱えているホワイトカラー(以下、WC)に関しては難しい課題です。しかし、難題であっても計画できないわけではありません。
2.財務会計視点から管理会計視点へ
要員計画を策定する際、一般的にマクロ手法(労働分配率や損益分岐点から適正人件費を算出し計算する方法)と、ミクロ手法(一人当たり作業時間の積み上げ式で各部門の必要人員を見積もり、人事に報告、人事で集計する方法)があります。マクロ手法で扱っている数値は経営業績数値(Ex;売上・利益)であることから、経営の内部資源である人材の数がイコール経営業績数値とは言い難いのではないかと感じられている方もおられるでしょう。そのため、要員計画策定時のアプローチは主にミクロ手法が登用されているのが実際です。しかし、これも人事部が現場から提出された要求人員数に対して、客観的で論理的な検証ができないという観点から、経営者と現場の板挟みになり四面楚歌になったという経験をした人事部関係者も多く、人事が用いる要員計画手法としては使いにくいという声もよく聞きます。
ミクロ手法を登用している際、人事部が各部門に対して自信を持って意見交換できる根拠のある要員計画数値を握っていない場合が多いため、結果的にマクロ手法による数値に頼ってしまい、現場との関係性が更に悪循環になり、そして心のどこかで「本当はどの数値が要員計画の代表値とするべきなのか?」と迷っている人事部関係者も少なくないでしょう。
先にも記載しましたが経営資源であるヒトは企業の内部資源です。内部資源を活用した結果が経営業績として表れると考えられるならば、要員計画時に考慮するべき視点は、財務会計(=経営業績管理)ではなく管理会計(=内部資源管理)で観るべきであり、マクロよりもミクロの見方の方が正しいはずです。しかし、職務分析や標準時間、タイムスタディという手法が参考になるのかと言うと、定型業務のウェートが高いBC的な従事者ならほぼ問題はありませんが、定型業務と非定型業務が混在しているWCを対象にするならば、必ずしもこのやり方が適切とは言えないのが実際です。
3.分析8レベル
Figure 1(参照) 日本の人事部サービス紹介ページ (http://jinjibu.jp/service/detl/11527/)
出所;株式会社エイチ・ピィ・ピィ・ティ
ここで分析8レベルを紹介します。図1は経営者から作業者までの業務の粒度を分解したものです。レベル8の「結果」とは経営層が対象であり、日々の時間(=行動)をマネジメントされる人材ではありません。一方でレベル1の「動作」はタイム&モーションスタディの対象であり、具体的には世界標準時間と比較しながら生産性向上を狙う領域です。
ここで読者が創造するべき仮説は、WC、及び、BCの管理対象レベルはどこか? 正しくは、レベル1〜3がBCでありレベル4〜5がWCです。このように分類してみると、WC
とBCで管理レベルが異なるにも関わらず同じ管理手法を用いることに読者は違和感を覚えることでしょう。そして、行動管理を必要とされる経営の内部資源を対象にしているからこそ、全ステークホルダーと共有できる財務会計を基準に考察することにも違和感を覚えることでしょう。
4.管理会計と機会利益
ここに人件費が1,000万円のAさんと600万円のBさんがおられます。会社の経営が思わしくなく人員カットすることになりました。AさんとBさんのどちらを候補として検討しますか。
上記のような場合、営業利益を創出することが株主から求められますので人件費の絶対額が大きいAさんと答えたいかもしれませんが(=財務会計視点)、企業のミッションがGoing Concernである限り、人件費額の大きさではなくその人件費の中身(=管理会計視点)から判断するべきではないでしょうか。
WCであるAさん・Bさん共に成果を含めた行動まで管理されていることを前提とするならば(分析対象レベル4~5)、期待される役割に直結する成果、及び、行動(=これを基本機能[1]と言う)のウェートが大きい人材に可能性を託すべきではないでしょうか。仮に、Aさんの基本機能比率が80%でBさんが40%の場合、Aさんの価値は800万円でBさんが240万円となり、資産として優良に活かしきれていないAさんの200万円、及び、Bさんの460万円から検討すると、財務会計視点で判断した場合とは全く逆の判断結果になります。この200万円と460万円を機会利益[2]と呼びます。人材は「使う」のではなく「活かす」と考えるならば、機会利益が多いということは更なる伸び代に期待できる一方で、現在、資産として優良に活用できていないとも言えます。
5.WCの要員計画は基本機能比率を代表値として使う
業務にヒトがアサインされているのであって、ヒトに業務をアサインしているのではありません。従って、業務を中心に要員計画することに異論はないと思われます。では、担当してもらう業務の中身をどこまで論理的に客観的に研究・測定しているでしょうか。ここへ真摯に人事部関係者が干渉しない限り、要員計画の代表値としてステークホルダーと共有する財務会計数値に頼らざるを得なくなり、カタチこそきれいに落ち着いた計画数値は作成できますが、根拠が乏しいので業務運用上困難に直面することは容易に想像できます。期待される役割に沿って、
1)業務の種類及び区分を分類し、
2)そこから現状の基本機能比率を導き
3)残った補助機能を機会利益額に置き換え
4)回収すべき目標機会利益を設定し
5)BPRによって機会利益を回収し
6)最終的にあるべき基本機能比率が設定されます。
この比率こそが、要員計画を進めていく上で適切な代表値になることを筆者は強く推薦します。
6.まとめ
「対象×活用方法×検討材料」に論理矛盾がないこと確認した上で、WC(=対象)の要員計画に関しては、「人事部×現場×経営者」全ての共通言語になりうる「基本機能(=活用方法)」というコンセプトが管理会計(=検討材料)上、有効に活用できることを御紹介させていただきました。
以上、読者からの御叱正を乞う所存であります。
※本詳細説明(図解付き)は、http://jinjibu.jp/service/detl/11079/ から事例をダウンロード(無料)してください。
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事業会社人事の経験も踏まえ、表面的な仕組みではなく、機能する仕組みの導入、定着をご支援します。
大手総合電機メーカーの人事業務に従事した後、シンクタンク系コンサルティングファームを経て現職。
人事制度の設計・運用支援を専門とし、タレントマネジメント、チェンジマネジメント等人事領域全般におけるコンサルティングに従事している。
上野 晃(ウエノ アキラ) EYアドバイザリー株式会社 マネージャー
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