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人事はなぜ『経営判断』で口を閉ざすのか

 ——専門職としての「一般的教示義務」と倫理綱領

 

※本稿は人事部門の経験5年以上で、「経営判断だから」という言葉に沈黙しながらも、心のどこかで違和感を抱き続けている方々を想定読者としています。

 

人事としてキャリアを積むほど、「経営判断だから」という言葉の重みに、自らの違和感を飲み込んできた経験が増えるのではないでしょうか。しかし、その「沈黙」こそが、専門職としての責任放棄につながっているとしたら――。

 

2026年2月5日、『朝日新聞』が報じた『パナソニックホールディングス(HD)』による「1.2万人に及ぶ希望退職」のニュースは、まさにその沈黙の是非を私たちに突きつけています。これほどまでに巨大な決断の背後には、必ず人事部門の緻密な設計と実行があったはずだからです。

 

「構造改革は待ったなしの経営判断である」――その正論の前に、現場の葛藤や個々のキャリアへの影響を、私たちは「仕方のないこと」として思考停止させてはいないでしょうか。経営の意思を漫然と執行するだけの「装置」に成り下がるとき、人事はその真の職責を捨てているのではないかと疑われます。

 

2026年2月3日付の論考「人事は『中立』という幻想を捨てられるか」(前編・後編)において、私は「人事は中立であるべき」という幻想を捨て、専門職として「判断の質」に責任を持つべきだと提言しました。また、その議論の核心が、それに続く『人事専門職の一般的教示義務(同月5日付)』になります。

 

これは、経営や労働者に代わって「結論」を出すこと(判断の代行)を意味しません。そうではなく、判断が恣意や誤解に基づかないよう、法理、制度趣旨、想定されるリスクといった「判断の前提条件」を、求められる前に能動的に可視化する責任を指します。

 

人事は、労使双方の情報が集積する「情報の非対称性」の結節点にいます。そこでの沈黙は、中立ではなく、結果として「語らなかったことによる不作為」という強い影響を組織に与えてしまいます。

 

本稿では、この「一般的教示義務」を抽象的な理念に留めず、実務現場で立ち返るべき具体的な行動規範として明文化しました。組織の圧力や短期的利害に直面したとき、人事部門の方々が「専門職としての良心」を貫くための拠り所――それが、以下に示す「人事専門職 倫理綱領」です。

 

【人事専門職 倫理綱領】

 

【前文】

私たちは、組織の持続的成長とそこで働く人々の尊厳が両立する場において、専門的知見に基づき「判断の質」を担保する存在である。

 

本綱領は、すべての人事実務者が直ちに実践できる「処方箋」ではない。
しかし、沈黙を常態化させた実務がもたらす長期的毀損を直視し、それでもなお専門職として立つことを選ぶ者のための、最低限の倫理的基準である。

 

経営の代弁者でも労働者の代理人でもなく、法と倫理、そして組織が社会から託された信頼の側に立つ。

 

個々の判断の誠実さが組織の姿勢を形づくり、その積み重ねが社会的評価として結実することを自覚し、沈黙を排して職責を全うすることをここに誓う。

 

第1条(専門的独立性の保持)

人事専門職は、経営判断に対し、法理、実務慣行、および長期的影響の観点から独立した評価を行う。

 

1 「経営判断だから」という理由で、法的リスクや倫理性への疑義を不問に付さない。

 

2 専門職としての見解が経営の意向と異なる場合であっても、リスクを可視化し、適切な代替案を提示する。

 

第2条(人事専門職の一般的教示義務)

人事専門職は、労使間ならびに個々の労働者、経営層と現場間に存在する情報の非対称性を是正し、関係者が誤解や無知に基づかず自律的判断を行えるよう、専門的見地から必要な情報を能動的に開示する責任を負う。これを「人事専門職の一般的教示義務」と位置づける。

 

1 労働者が権利行使や意思決定を行うために不可欠な制度趣旨、法的枠組み、想定される帰結について、「聞かれたら答える」姿勢を超え、専門職として必要と認める情報を、求められる前に自主かつ適切に開示する。

 

【実務上の具体例】 人事専門職の一般的教示義務は、個別の面談から大規模な構造改革に至るまで、あらゆる局面で貫かれなければなりません。

 

  • 個別合意における誠実さ: 退職勧奨等の合意形成において、「会社都合」と「自己都合」による失業給付の受給条件(開始時期や給付日数)の差を伏せたまま署名を迫ることは、この義務と背離します。当事者が選択の帰結(経済的リスク)を正しく理解し、納得して判断できるよう、制度情報を包み隠さずテーブルに乗せるべきです。

 

  • 大規模施策における透明性: 上述パナソニックHDにおいて見受けられるような、1万人規模に及ぶ希望退職の事例においても、同様の問題が当てはまるものと考えられます。

 

たとえば、ある企業の経営陣が「経営状況の悪化」という大義名分を強調するなか、人事部門は、再就職支援に関する具体的な条件や割増退職金の算定根拠、さらには「退職せずに残留した場合に想定されるキャリアパスの不確実性」といった、当事者にとって不利益となり得る情報を含む「判断に必要な全体像」を、主体的かつ十分に提示できているでしょうか。

 

にもかかわらず、経営のスピードや効率性を優先するあまり、情報をコントロールして特定の結論へ誘導するかの如き所為は、専門職としての「沈黙」を通じた不当な介入に他なりません。相手に「判断の責任」を誠実に返すために必要な情報を、求められる前に自ら開示することこそが、人事に託された職責です。

 

2 経営層に対しては、判断の前提となる法的リスク、判例動向、社会的評価への影響を可視化し、恣意や誤解に基づく決定を防ぐ。

 

【実務上の具体例】 育休復帰者に対する「一律の降職」や「職種変更」を伴う配置転換が検討される際、単に「経営判断」として追認するのではなく、近年の判例(育児事情への配慮義務を欠いた命令を無効とする傾向など)に照らした敗訴リスクを事前に提示します。そのうえで経営陣が「法的・社会的リスクを認識した上での経営判断」を行える状態を作ることこそが、専門職の責務であると考えられるからです。

 

3 情報の秘匿や不作為による「沈黙の強制」を行わず、判断責任を相手に誠実に返すための条件整備を怠らない。

 

【注記】 ここでいう「一般的教示義務」とは、行政手続法上の権利教示義務とは異なり、人事専門職が自律的に引き受けるべき専門職としての本質から導かれる倫理上の内在的義務を指します。法が明示的に命じていなくとも、判断の前提条件を整える責任を専門職として負うという意味です。

 

第3条(手続的公正の擁護)

人事専門職は、結果の妥当性のみならず、そこに至るプロセスの正当性を監視する「制度の番人」となる。

 

1 すべての個別人事決定において、当事者への十分な弁明機会の付与、および恣意性の排除等の正当な手続きが履行されているかを検証する。

 

2 手続上の瑕疵を認識した場合には、速やかに是正を勧告するとともに、当該瑕疵に起因する組織への法的および倫理的毀損の危険性を排除する。

 

第4条(予防法学の実践と自己研鑽)

人事専門職は、常に最新の判例法理と社会情勢をアップデートし、紛争を未然に防ぐ防波堤として機能する。

 

1 慣習化した実務が最新の司法判断や倫理水準と乖離していないか、常に点検・問い直す。

 

2 組織内に存する違和感を言語化し、対話のテーブルに乗せるための知性と勇気を磨き続ける。

 

第5条(信頼資本の形成責任)

人事専門職は、誠実な対話と公正な運用を通じて、組織への信頼が労使双方において持続的に蓄積される状態を目指す。

 

1 人事は、目前の一人ひとりへの誠実な対応が、組織全体の社会的評価に直結することを自覚する。沈黙や説明不足の積み重ねが、「何を基準に判断しているのか分からない人事部門」への不信を生むことを、人事専門職に固有の構造的リスクとして認識し、適切な説明と対話に努める。

 

2 事務処理の効率や組織内の摩擦回避よりも、判断責任を背負うプロフェッショナルとしての誠実さを優先する。一時的な摩擦は、権利濫用や公序違反への健全なブレーキとして機能しうる。

 

第6条(専門職責任の限界)

人事専門職は、経営や当事者に代わって最終判断を下す権限を持たない。しかし、判断の前提条件を整える責任を放棄してはならない。

 

1 教示とは正解を押し付けることではなく、判断の責任を相手に返すための準備である。

 

2 「判断を代行しない」ことと「判断から逃げない」ことは、緊張関係の中で両立する。その緊張に耐えることが、専門職の真価である。

 

以上、この綱領を携えることは、孤独になることではなく、専門職という広場に立つことです。

 

このドラフトを、たとえば以下のような場面で活用されてはいかがでしょうか。

 

  • 人事部門内のキックオフ: 「我々は何に責任を持つ集団なのか」を再定義する。

 

  • 経営陣への宣言: 「人事はイエスマンではなく、経営を暴走から守るブレーキである」という役割を明文化して共有する。

 

  • 若手人事の育成: 「聞かれなかったから答えなかった」という対応が、なぜ専門職として失格なのかを説く指針とする。

 

今後、「経営判断である」という言葉で思考を止めそうになったときこそ、その判断を支える前提条件が、真にすべて関係者に開示・共有されていたのかを厳しく問い返さなければなりません。その問いを避けないことこそが、人事専門職の業務の出発点であり、責務であると考えます。

 

その選択は、今日、この瞬間から始まっています。

 

【完】

 

 

 

 

このコラムを書いたプロフェッショナル

及川 勝洋

及川 勝洋
一般社団法人地域連携プラットフォーム シニアリサーチャー

制度や理論を現場で機能させることを一貫して追究。学術研究と実務の知見を架橋し、人材育成・キャリア形成を横断的に探究。人事施策を実装可能な形に翻訳し、個人の納得感と組織の持続的成長を支える伴走者。

制度や理論を現場で機能させることを一貫して追究。学術研究と実務の知見を架橋し、人材育成・キャリア形成を横断的に探究。人事施策を実装可能な形に翻訳し、個人の納得感と組織の持続的成長を支える伴走者。

得意分野 法改正対策・助成金、労務・賃金、キャリア開発、資格取得、法務・品質管理・ISO
対応エリア 全国
所在地 志木市
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