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【前編】人事は「中立」という幻想を捨てられるか

――判断を引き受ける「専門職性」への転換

 

※本稿は、人事経験5年以上で、「経営判断だから」という言葉に沈黙しながらも心のどこかで違和感を抱き続けている方々を想定読者としています。

 

育児中の労働者への転勤命令。人事のあなたは違和感を覚えた。

しかし「経営判断だから」と沈黙した。

その沈黙は、本当に「中立」だったのか?

――それとも、判断から逃げただけではなかったのか。

 

本稿では、人事が陥る「中立の罠」を解き明かし、後半のQ&Aでは現場のジレンマを突破する具体的な処方箋を提示します。

 

人事は「中立であるべきだ」と、長らく言われてきました。

 

労使、すなわち使用者と労働者(その集団としての労働組合を含む)の間に立ち、特定の立場に与しないこと。それが公正であり、専門性の表れだと理解されてきたからです。

「中立」とは、多分に「判断を保留し、沈黙すること」と同義になっていないか

しかし、ここであらためて問うべきは、「中立」という態度そのものが、人事の専門職性を真に支えているのか、という点です。ここで言う「中立」とは、多分に「判断を保留し、沈黙すること」と同義になっていないでしょうか。本来、専門職とは判断を回避する存在ではなく、一定の知識と経験、そして倫理に基づいて「判断を引き受ける」存在であるはずです。

 

沈黙は、短期的には波風を立てない選択に見えます。しかし、それは「専門職的価値の自死」です。進言なき人事は経営から「判断の役に立たない」と断じられ、単なる手続き屋へ格下げされます。紛争時に「なぜ止めなかったのか」と問われるのは、沈黙を選んだ人事自身なのです。

 

実務の現場では、評価制度や配置、処遇の運用において、人事が専門職として『看過し得ない疑義』を抱く場面は少なくありません。そこには、労働組合が関与する集団的労使関係の局面もあれば、個々の労働者が直接人事と向き合う個別的な場面もあります。

 

たとえば、育児や介護といった切実な家庭事情を抱える労働者に対し、経営合理性のみを優先した配置転換が検討される局面を想像してください。ここで想起すべきは、『滋賀県社会福祉事業団事件(最二小判 令和6年4月26日)』です。この裁判で最高裁は、労働者に重度の障害がある子を養育しているという個別事情がある中で、配転が生活に与える影響を深刻に捉え、配転命令を無効と判断しました。

 

こうした場面で、人事が「自分は中立の立場だから」「決定権は経営にあるから」として沈黙を守ることは、一見、職域を守っているように見えます。しかし、その沈黙は決して真空状態ではありません。人事が現場の不利益や判例法理との乖離を認識しながら経営に適切なフィードバックを行わないことは、「法的に無効となる可能性の高い業務命令」を追認することになります。結果として、属する組織をかえってリスクに晒す行為にほかならないのです。

 

官僚制の功罪を承知のうえで、あえて言えば、この点で、人事専門職に期待される役割は、キャリア官僚が果たしてきた機能と通底しています。官僚の専門性とは、政治の恣意的な意思決定に対し、専門知と継続性によって一定の歯止めをかける役割にあります。

 

人事は経営の「YESマン」であってはならない。経営を法と倫理の暴走から守る「ブレーキ」であり、組織の持続可能性を示す「ナビゲーター」であるべきなのです。法の遵守(コンプライアンス)は、より高次な道徳・倫理(ビジネス・エシックス)を守り抜くための補完的な役割に過ぎません。

 

【提言】人事部門は経営から「距離」を置くべきではないか

ここで、あえて論争的な問いを投げかけたい。現在の人事部門は、経営に「近すぎる」のではないか。

 

多くの企業で、人事部長は経営会議のメンバーであり、経営陣の一員として意思決定に参画しています。この構造自体が、人事の専門職性を毀損する構造的矛盾を孕んでいるのではないでしょうか。

 

医師が病院経営者と同一人物であれば、患者の利益よりも経営効率が優先される懸念が生じます。弁護士が依頼者企業の役員を兼ねれば、利益相反の疑念を免れません。同様に、人事が経営の内側に深く組み込まれすぎることで、本来果たすべき「制度の番人」「手続の公正性の担保者」としての機能が失われているとの虞があります。

 

もちろん、私は人事部門を経営から完全に切り離せと主張しているわけではありません。 しかし、少なくとも「専門職としての独立性」を担保する仕組み――たとえば、人事部門の評価を経営陣ではなく取締役会や監査委員会が行う、あるいは人事専門職の倫理規程を策定し外部審査を導入する――といった制度設計を真剣に検討すべき時期に来ているのではないでしょうか。

 

この問いに対する答えは一つではありません。しかし、「経営の近くにいることが人事の力だ」という前提を、一度疑ってみる価値はあるはずです。

 

人事専門職が果たすべき広義の「一般的教示義務」

同様に、人事もまた、労使関係における相対的強者である経営側からの過度な要求に対し、制度趣旨や法的枠組み、長期的影響を踏まえて異議を唱える「防波堤」として機能することが期待されているのではないでしょうか。

 

それは、求められたことに答えるだけの「アドバイザー」の域を超え、専門知に基づいて必要な情報を開示し、組織を正しい方向へ導くプロとしての責任を引き受けることに他なりません。人事専門職が果たすべきこの役割を、広義の「一般的教示義務」と私は呼びます。

 

この「一般的教示義務」とは何か。三つの次元から定義したい。

 

第一に、情報の非対称性を是正する義務。

キャリア面談等の場面で、相談者が知らないがゆえに不利益を被る可能性のある制度・権利・手続について、専門家として積極的に開示すること。「聞かれなかったから答えなかった」は、専門職の態度ではありません。

 

第二に、予見可能性を担保する義務。

人事施策が当事者に及ぼす影響――とりわけ不利益――を事前に可視化し、当事者が自律的な意思決定を行えるよう支援すること。「後から文句を言われても困る」ではなく、「事前に十分な情報を提供したか」を自問する姿勢です。当事者(相談者)との情報格差を司法は重視します。

 

第三に、手続的公正性を擁護する義務。

経営判断の「結論」に口を挟むことは越権かもしれません。しかし、その判断に至る「手続」が公正であったか――当事者に弁明の機会が与えられたか、恣意的な基準ではなく明示されたルールに基づいているか――を検証し、瑕疵があれば指摘することは、人事の専門的責務です。現行憲法も、英米法的な適正手続保障を重視する考え方(31条)を導入しています。

 

この三つの義務は、法的強制力を持つものではありません。しかし、専門職として自らに課すべき倫理的要請です。 そしてこの義務を果たすことこそが、人事を「中立という名の傍観者」から「判断責任を引き受ける専門職」へと転換させる契機となるのです。

 

この役割は、単なる倫理観によるものではありません。人事を「経営の代弁者」でも「労働者の代理人」でもなく、判断責任を引き受ける専門職だと考えているからです。それは、目的を定め、そしてその効率を図るため、分業(Division)と専門化(特殊化 Specialization)を徹底させる組織の条理から導きだされるものです。

 

すなわち、キャリア面談等の場面で、相談者に有利な影響を及ぼす可能性のある事項を自ら開示し、予見可能なリスクを未然に防ぐための助言を行うこと。相談者が自律的な意思決定を行うために不可欠な情報を、プロの知見から積極的かつ適切に開示・付与すること。それは「中立」という隠れ蓑に逃げ込むこととは対極にある、能動的な専門性の発露です。

 

経営への「従順」ではなく、リスクを可視化し代替案を提示する「パートナーとしての対峙」

そのためには、通説的な労働法の概説書にとどまらず、専門誌等で最新の判例(裁判例)や実務動向をアップデートし続ける姿勢が大切です。

 

たとえば、古くは配転命令権の根拠と濫用法理が論点となった『東亜ペイント事件(最二小判 昭61.7.14)』以来、配転に関する企業の裁量は広く認められてきました。しかし、前述の『滋賀県社会福祉事業団事件』に見られるように、近年の司法判断は労働者の生活利益との比較衡量により厳格な視線を注いでいます。

 

こうした変化を捉え、予防法学の見地から経営と労働者の双方に及ぼす影響を自覚し、その責任(「職務を実際に遂行する心理的、物理的活動をする義務」ならびに「職務を遂行した結果に対する責任(結果について報告もしくは連絡すべき義務)」)を引き受ける態度こそが、専門職としての誠実さです。

 

このように、人事がどこに立って仕事をしているのか。その問いに答え、自ら引いた「専門職としての線引き」を言語化しようとする姿勢こそが、人事を単なる事務担当から、経営と労働の双方に責任を負うプロフェッショナル(専門職能)へと押し上げる条件なのです。

 

事務屋として一生を終えるか、判断の責任を背負うプロフェッショナルとして生きるか。もっとも本稿は、その答えを差し上げるためのものではありません。「問い」を曖昧にしないためのものです。

 

あなたは、どこに立って語るのか。

その一点を隠さないことから、すべては始まります。

Whose Side Are We On? (私たちは誰の側に立つのか)

 

この問いに、あなた自身が答えるために―― 後編では、現場のジレンマを突破する具体的な処方箋を提示します。

このコラムを書いたプロフェッショナル

及川 勝洋

及川 勝洋
一般社団法人地域連携プラットフォーム シニアリサーチャー

制度や理論を現場で機能させることを一貫して追究。学術研究と実務の知見を架橋し、人材育成・キャリア形成を横断的に探究。人事施策を実装可能な形に翻訳し、個人の納得感と組織の持続的成長を支える伴走者。

制度や理論を現場で機能させることを一貫して追究。学術研究と実務の知見を架橋し、人材育成・キャリア形成を横断的に探究。人事施策を実装可能な形に翻訳し、個人の納得感と組織の持続的成長を支える伴走者。

得意分野 法改正対策・助成金、労務・賃金、キャリア開発、資格取得、法務・品質管理・ISO
対応エリア 全国
所在地 志木市
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