無料会員登録

日本の人事部への登録は45秒で完了!
※登録内容はマイページで確認・変更できます。

※「@jinjibu.jp」からのメールが受信できるようにしてください。

既に会員の方はこちら

または各SNSで登録

日本の人事部があなたの許可無く投稿することはありません

既に会員の方は
こちらからログイン

ログイン

無料会員登録

不正な操作が行われました。
お手数ですが再度操作を行ってください。

会員登録完了・ログイン

ありがとうございます。会員登録が完了しました。
メールにてお送りしたパスワードでログインし、
引続きコンテンツをお楽しみください。

無料会員登録

不正な操作が行われました。
お手数ですが再度操作を行ってください。

会員登録完了・自動ログイン

会員登録とログインが完了しました。
引続きコンテンツをご利用ください。

マイページ

会員登録済み


選択したSNSアカウントは既に会員登録済みです。

【前編】目標管理制度は、なぜ『評価の道具』になったのか

――ドラッカー、五十嵐英憲、田中堅一郎が示す「誤用の構造」

 

はじめに――二本を書いても、なお残った私の違和感

前二稿では、日本の職場において目標管理制度がうまく機能しなくなっている理由を、現場の実感と制度設計の両面から整理してきました。

 

数値目標の達成度が評価と強く結び付けられた結果、現場では「目標がノルマ化する」「挑戦的な目標が立てにくくなる」「見えない貢献が切り捨てられる」といった問題が生じています。そうした背景には、経済のグローバル化の流れがあったものと思われます。

 

では、目標管理制度は過去のものとして、もはや放棄するしかないのでしょうか。

 

私はそうは思いません。必要なのは制度の全面否定ではなく、「そもそも目標管理とは何であったのか」を改めて問い直すことではないでしょうか。

 

本稿では、ドラッカーが構想したMBO(Management By Objectives)の原意につき、『〔新訳〕現代の経営 上下(1996、ダイヤモンド社)』、『マネジメント【エッセンシャル版】(2001、ダイヤモンド社)』と、五十嵐英憲氏の著作(『個人、チーム、組織を伸ばす目標管理の教科書(2012、ダイヤモンド社)』、さらに田中堅一郎日本大学教授による実証研究(『日本の職場にとっての組織市民行動』日本労働研究雑誌、2012)をそれぞれ手がかりに、日本の職場で回復されるべき目標管理の姿を考えてみたいと思います。

 

前編では、なぜ日本で目標管理が「評価の道具」へと変質し、機能不全に陥ったのかを、三つの視点から検証します。(以下、敬称略)

 

1.MBOは「評価の物差し」ではなく、経営を点検する「検算装置」である

――ドラッカーが構想したMBOの原意

目標管理制度という言葉が語られる際、それはしばしば「人事評価制度の一種」として理解されています。しかし、ドラッカーが提唱したMBOは、そもそも評価を主目的とした制度ではありませんでした。

 

ドラッカーは次のように述べています。

 

「人を、一つの資源として見ることが必要である。(中略)しかも同時に、そのような人的資源を、他の資源とは異なり、個性や市民性をもつ人として見ることが必要である。かつ、そもそも働くか否か、どれだけ働くか、どれだけよく働くかを自ら決めることのできる存在、したがって、動機づけ、参画、満足、報酬と報奨、リーダーシップ、地位と機能を要求する存在としてみることが必要である」(『現代の経営 上』ダイヤモンド社)

 

ここに、ドラッカーの人間観が凝縮されています。

 

それゆえドラッカーにとって目標とは、上から一方的に課されるノルマではなく、組織の目的を踏まえつつ、各マネジャーや現場が自ら考え、対話と合意形成を通じて設定されるものでした。

 

彼が構想したMBOは、経営戦略と日々の現場活動とが適切に結び付いているかを確認するための枠組み(検算装置)であり、マネジメントそのものを自己点検するための仕組みだったと考えられます。

 

その根底には、ドラッカーが一貫して「人は管理される対象ではなく、成果を通じて責任を果たす主体である」と捉えていたという人間観があります。

 

数学において、複雑な計算の後に「検算」を行い、解が正しいかを確かめるように、MBOは「組織の目的」と「個人の自律的な動き」が矛盾なく噛み合っているかを、本人が自己点検するための枠組みです。

 

しかし、現在の日本の職場で起きているのは、この装置の決定的な誤用です。

 

  • 本来の検算: 「この目標に向かうことは、組織の目的に適っているか?」という問い。

 

  • 現在の誤用: 「この数字を達成したか否か?」という一方的な採点。

 

本来、マネジメントの質を上げるための「検算装置」であったはずのMBOが、いつの間にか個人を裁くための「採点機」へと変質してしまった。ここに、現場の違和感の正体があるのではないでしょうか。

 

目標は人を縛るための道具ではなく、自律的に仕事を進めるための拠り所でした。ドラッカーは、「目標管理の最大の利点は、自らの仕事ぶりをマネジメントできるようになることにある」と述べています(『マネジメント 基本と原則』ダイヤモンド社)。

 

ところが、日本ではMBOが「評価点をつけるための仕組み」として制度化され、数値目標の達成度が昇給・賞与と直結する形で運用されるようになりました。この時点で、ドラッカーの思想は大きく読み替えられていると言えるでしょう。

 

2.なぜ日本では「目標=ノルマ」になったのか

――五十嵐英憲が描く、日本の職場のリアリティ

この点について、五十嵐は、次のように日本の職場が持つ構造的特性に注目しています。

 

すなわち、日本の多くの職場では、仕事は個人で完結せず、相互補完的に進められます、とします。役割分担も固定的ではなく、状況に応じて暗黙のうちに調整され、数値化できない貢献が日常的に発生すると評価します。

 

こうした環境では、成果は本来、チームや関係性の中で立ち上がるものであり、個人目標だけで切り取ること自体に無理があると指摘します。また人間関係の円滑化のために、「お互いに知り合うこと」を推奨しています(『個人、チーム、組織を伸ばす目標管理の教科書』ダイヤモンド社)。

 

それにもかかわらず、MBOが評価制度として導入されると、目標は「達成すべき数字」へと変質します。その結果、現場では安全な目標しか立てられず、挑戦や試行錯誤が抑制されてしまいます。

 

五十嵐が指摘しているのは、制度そのものの善悪ではなく、日本の職場構造を前提としない形で目標管理が運用されてきた点にあります。

 

ここで重要なのは、五十嵐がドラッカーを否定しているわけではないという点です。むしろ、ドラッカーの思想を日本の文脈に即して「翻訳し直そう」としていると理解する方が適切でしょう。

 

3.成果主義制度が職場にもたらした実際の帰結

――田中堅一郎による実証的検証

この五十嵐の指摘は、組織行動論の実証研究によっても裏付けられています。

 

田中堅一郎(2012)は、1990年代以降の日本企業における成果主義賃金制度の導入が、従業員の意識と行動にもたらした深刻な影響を明らかにしています。

 

田中の研究によれば、成果主義制度の導入は従業員の「個人化傾向」を強化しました。これは二つの側面を持ちます。一つは、会社への不信を伴う労使対立的な個人化(「会社よりも自分のことを重視するようになった」)であり、もう一つは、自助努力で雇用を守ろうとする個人化(「どこの会社に移っても通用する職業能力を高めたい」)です。

 

いずれにしても、従業員の関心は自分自身の評価と処遇に集中し、職場全体や組織の将来への配慮が後退していきました。

 

さらに深刻なのは、成果主義制度が「組織市民行動」を阻害した点です。組織市民行動とは、職務規定には含まれないものの、組織の円滑な運営に不可欠な自発的行動を指します。田中は、成果主義制度が報酬を受ける行動や成果を明確に定めるほど、明示的に報酬を受けない行動(すなわち組織市民行動)に対する従業員のモチベーションが失われると指摘しています。

 

実際、津崎・倉田・荒井(2008)の調査では、評価基準や制度の変更について従業員に明確な説明がなされていない場合、あるいは成果を上げるための自由裁量が与えられないまま成果だけを求められる場合には、従業員の組織への不公正感や不信感が高まったことが示されています。

 

こうした傾向は、近年の調査においても裏付けられています。ある企業調査では、成果主義的な目標管理制度が採用・定着面で優位に働いていると答えた企業はわずかにとどまり、制度導入の効果に対する企業側の評価も必ずしも高くないことが明らかになっています。

 

田中の研究が示唆するのは、成果主義的目標管理制度の下では、従業員は「自分が今おかれた状況で自分の仕事をどのようにこなしていくか」にばかり気を取られ、「職場の同僚や職場全体の良きありよう、会社の行く末」といったことにまで考えが及ばなくなるという事態です。

 

これはまさに、五十嵐が指摘した日本の職場の相互補完的な特性――数値化できない調整や貢献によって支えられる職場――が、制度によって損なわれていく過程そのものと言えるでしょう。

 

つまり、目標管理制度が評価・報酬と直結することで生じるのは、単に「挑戦的な目標が立てられない」という問題だけではありません。それは職場における協力関係そのものを掘り崩し、組織を支える「見えない貢献」を切り捨て、従業員を孤立させていくという、より根深い問題なのです。

 

前編のまとめ――問題の本質はどこにあるのか

ここまで見てきたように、ドラッカーが構想した「検算装置」としてのMBOは、日本では「採点機」へと変質しました。

 

その過程で、五十嵐が指摘する日本的職場の特性――相互補完性、暗黙の調整、数値化できない貢献――は無視され、田中の実証研究が示す通り、従業員の個人化と組織市民行動の減退という深刻な帰結をもたらしました。

 

理論(ドラッカー)、文脈(五十嵐)、実証(田中)という三つの視点から見えてくるのは、目標管理制度の問題が単なる「運用の失敗」だけではなく、より根源的な「思想の欠如」にあるという事実です。

 

では、この状況を打開する道はあるのでしょうか。ドラッカーと五十嵐は、一見異なる立場にありながら、実は本質的な問題意識を共有していました。後編では、その共通点を確認したうえで、いま日本の職場で回復すべき目標管理の具体的な姿を提言します。

 

目標管理を「評価の道具」として使い続けるのか。それとも、本来の「対話を生み出す思想」として取り戻すのか。後編では、この問いに向き合います。

 

後編に続く

このコラムを書いたプロフェッショナル

及川 勝洋

及川 勝洋
一般社団法人地域連携プラットフォーム シニアリサーチャー

制度や理論を現場で機能させることを一貫して追究。学術研究と実務の知見を架橋し、人材育成・キャリア形成を横断的に探究。人事施策を実装可能な形に翻訳し、個人の納得感と組織の持続的成長を支える伴走者。

制度や理論を現場で機能させることを一貫して追究。学術研究と実務の知見を架橋し、人材育成・キャリア形成を横断的に探究。人事施策を実装可能な形に翻訳し、個人の納得感と組織の持続的成長を支える伴走者。

得意分野 法改正対策・助成金、労務・賃金、キャリア開発、資格取得、法務・品質管理・ISO
対応エリア 全国
所在地 志木市
  • 参考になった0
  • 共感できる0
  • 実践したい0
  • 考えさせられる0
  • 理解しやすい0

無料会員登録

記事のオススメには『日本の人事部』への会員登録が必要です。

この記事をオススメ

あなたのオススメとして、ニックネーム、業種、所在地(都道府県まで)が公開されます。
※コメント入力は任意です。

オススメ
コメント
(任意)
■コメント投稿に関するご注意
以下に定めるご注意をご承諾の上、コメントを投稿してください。

1.
記載されている記事や回答の内容に関係のないコメントは、ご遠慮ください。
2.
以下の内容を含んだコメントの投稿を禁止します。『日本の人事部』事務局が禁止行為に該当すると判断した場合には、投稿者に通知することなく、コメントを削除または修正することもございます。予めご了承ください。
・第三者の名誉または信用を毀損するもの
・第三者を誹謗・中傷するもの
・第三者の名誉、信用、プライバシーを侵害するもの
・第三者の著作権等の知的財産権を侵害するもの
・第三者の権利または利益を侵害するもの
・公序良俗に反する内容を含んだもの
・政治活動、宗教、思想に関する記載があるもの
・法令に違反する、または違反のおそれがある記載のあるもの
・差別につながるもの
・事実に反する情報を記載するもの
・営利目的の宣伝・広告を含んだもの
・その他、内容が不適切と判断されるもの
3.
氏名・住所・電話番号などの個人情報を記載すると、トラブルに繋がる可能性があります。絶対に記載することのないよう、ご注意ください。
4.
掲載されたコメントにより発生したトラブルに関しては、いかなる場合も『日本の人事部』事務局では責任を負いかねますので、ご了承ください。
5.
ご投稿いただきましたコメントは、『日本の人事部』や、当社が運営するウェブサイト、発行物(メールマガジン、印刷物)などに転載させていただく場合がございますので、ご了承下さい。

コメントを書く

あなたのオススメとして、ニックネーム、業種、所在地(都道府県まで)が公開されます。

コメント
■コメント投稿に関するご注意
以下に定めるご注意をご承諾の上、コメントを投稿してください。

1.
記載されている記事や回答の内容に関係のないコメントは、ご遠慮ください。
2.
以下の内容を含んだコメントの投稿を禁止します。『日本の人事部』事務局が禁止行為に該当すると判断した場合には、投稿者に通知することなく、コメントを削除または修正することもございます。予めご了承ください。
・第三者の名誉または信用を毀損するもの
・第三者を誹謗・中傷するもの
・第三者の名誉、信用、プライバシーを侵害するもの
・第三者の著作権等の知的財産権を侵害するもの
・第三者の権利または利益を侵害するもの
・公序良俗に反する内容を含んだもの
・政治活動、宗教、思想に関する記載があるもの
・法令に違反する、または違反のおそれがある記載のあるもの
・差別につながるもの
・事実に反する情報を記載するもの
・営利目的の宣伝・広告を含んだもの
・その他、内容が不適切と判断されるもの
3.
氏名・住所・電話番号などの個人情報を記載すると、トラブルに繋がる可能性があります。絶対に記載することのないよう、ご注意ください。
4.
掲載されたコメントにより発生したトラブルに関しては、いかなる場合も『日本の人事部』事務局では責任を負いかねますので、ご了承ください。
5.
ご投稿いただきましたコメントは、『日本の人事部』や、当社が運営するウェブサイト、発行物(メールマガジン、印刷物)などに転載させていただく場合がございますので、ご了承下さい。

問題を報告

ご報告ありがとうございます。
『日本の人事部』事務局にて内容を確認させていただきます。

報告内容
問題点

【ご注意】
・このご報告に、事務局から個別にご返信することはありません。
・ご報告いただいた内容が、弊社以外の第三者に伝わることはありません。
・ご報告をいただいても、対応を行わない場合もございます。

新着 プロフェッショナルコラム

忙しさの中で、気づけなかったーあるOJT担当者の後悔

原田 由美子(Six Stars Consulting株式会社 代表取締役(人材育成コンサルタント、キャリアコンサルタント/国家資格))

皆様の組織では、どのようなOJT上の悩みが寄せられているでしょうか? 先日、現場指導者向けの研修で次の対話をお聞きし、と...

2026/01/30 ID:CA-0006547 OJTリーダー育成