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Googleの「プロジェクト酸素」が教える問題解決力の重要性

米Google社の「プロジェクト・オキシジェン(酸素)」をご存知でしょうか。同社の膨大な社内データに基づき、「有能な管理職に共通する10の行動様式」をまとめたものです。「良いコーチである」、「チームに任せ細かく管理しない」などが並び、これだけを聞くと「さすがはGoogle、スマートな取り組みだ」と感心してしまいそう……。なのですが、実はこのプロジェクト、「壮大な失敗」から生まれた産物なのです。本稿ではこのエピソードを紐解きながら、組織として「問題解決のカルチャー」を醸成することの真の重要性を確認します。

●「管理職はいらない」というGoogleの実験

「失敗」というのは、プロジェクト・オキシジェンに先立つ、大胆な人事制度の改革です。「管理職をなくして全員をエンジニアにした方が、生産性は上がるのではないか?」という仮説を立て、2002年から実際に管理職を撤廃したのです。しかし、結果は散々なものでした。現場は混乱し、意思決定は滞り、実験は失敗に終わります。

ただ、注目すべきは、その後のGoogleの対応。彼らは単に制度を元に戻すのではなく、「やはり管理職は組織に不可欠である」という事実を受け入れ、一転して「では、どのような管理職が必要なのか」をデータに基づいて探究し始めたのです。その結晶こそが、前述の10の行動様式でした。「オキシジェン(酸素)」というネーミングには、管理職とは目立たずとも組織にとって「なくてはならない生命維持装置」である、との含意でしょう。

 

●Googleの強さを支えるデータ駆動型問題解決

筆者は、この「試行錯誤を厭わない姿勢」こそがGoogleの強さの真の源泉であると考えています。問題に直面した際、まず仮説を立てて実行する。その結果をデータで検証し、もし仮説が否定されれば速やかに別の仮説へと切り替える……。「データ駆動型問題解決」のサイクルが、ビジネスを強靭にしてきたのです。

そういえば、最近の生成AI分野においても同じかもしれません。当初はChatGPTに先行を許しましたが、その後の迅速な試行錯誤を経てGeminiが巻き返し、いまや肩を並べるに至ったのは記憶に新しいところです。こうした粘り強い軌道修正の力は、もはや組織の「DNA」として刻み込まれていると言っても過言ではないでしょう。

 

●日本の問題解決力で戦えるのか?

翻って、日本企業はどうでしょうか。変化の激しい現代において、こうした「試行錯誤による問題解決」の重要性は言うまでもありませんが、その実態には危機感を抱かざるを得ません。筆者は企業研修の講師として多くの現場に立ち合っていますが、問題解決の方法論を正しくマスターしているビジネスパーソンは、未だに「少数派」であると感じます。ましてや、それを組織の共通言語として体系化し、カルチャーにまで昇華させている企業は極めて稀です。

むしろ日本企業の典型は、現場で問題に直面した際、誰かがパッと思いついた解決策を提言する。しかし、上層部から「それは以前やってうまくいかなかった」と過去の経験則だけで否定されてしまう。そんなケースです。データによる客観的な検証も、失敗から学ぶプロセスも欠落したままでは、世界の「戦場」においてGoogleのような企業と伍して戦っていくには、はなはだ心もとないと言わざるを得ません。

 

●AIに置き換えられないための問題解決力

このような状況を変えるため、日本企業の問題解決力の底上げは、今や筆者の活動における最大のテーマとなっています。そして、この「問題解決力」を重視する理由はもう一つあります。それは、ビジネスパーソン個々人の「生存戦略」として不可欠だからです。

日々進歩するAI技術により、やり方が決まった「定型業務」が自動化されるのは明らかです。では、人間に残された聖域はどこにあるのか?それが、正解のない問いに立ち向かう「非定型業務」、すなわち「問題解決」なのです。

問題解決能力を磨き続けることこそが、AIに代替されない人材となるための唯一の道です。組織の壁を打ち破り、個人の価値を高める武器として、今こそ真の問題解決スキルに向き合うべきではないでしょうか。

「AIに置き換えられない人材」へのシフトは、もはや待ったなし。

それを、「脅威」ととるか、「チャンス」に変えるかは、私たちの取り組み次第です。筆者は関連の勉強会も主催しているので、ぜひおいでください。

このコラムを書いたプロフェッショナル

木田 知廣

木田 知廣
シンメトリー・ジャパン代表

ワトソンワイアットで人事制度の構築に携わり、その後ロンドン・ビジネススクールに留学し、グローバルリーダー育成の大家スマントラ・ゴシャールに師事(MBA取得)。2012年より米マサチューセッツ大学MBAの教鞭も執る

ワトソンワイアットで人事制度の構築に携わり、その後ロンドン・ビジネススクールに留学し、グローバルリーダー育成の大家スマントラ・ゴシャールに師事(MBA取得)。2012年より米マサチューセッツ大学MBAの教鞭も執る

得意分野 リーダーシップ、マネジメント、チームビルディング、コミュニケーション、ロジカルシンキング・課題解決
対応エリア 全国
所在地 港区

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