新人に教えるときに役立つ「イントロ3原則」
細谷です。塾の指導法のひとつに「イントロ3原則」というティーチングメソッドがあります。
これは講師が知識や認知技能を教えていくときに、科目や学年やレベルを問わず、効果的・効率的に教えるメソッドとしてとても役立つ手法です。
ここで言う「イントロ」とは導入のことで、私たちの世界では単元の最初で教える導入レクチャー部分を表します。例えば、鎌倉時代の学習の単元導入であれば、平安時代の後に源頼朝によって樹立された武家政権の時代で約150年続く時代の入り口を教える箇所になります。
その上でこの導入における3原則が何かといえば、1つめが「既知から未知」、2つめが「具体から抽象」、そして3つめが「シンプルに教える」というこの3点になります。
1つめの「既知から未知」は、初めてのことを教えるときに、相手が必ず知っているところから始めるというスタンスになります。鎌倉時代であれば、鎌倉という地名や地形、平安時代との政治の比較という観点で、既習の内容や学習者が知っている情報をもとに新しい単元の学習につなげていく指導になります。
2つめの「具体から抽象」は、公式や概念から入っていく展開ではなく、具体的な例題や例文、身の回りで起きている現象などをもとに、新しい単元に求められる考え方につなげていく教え方です。鎌倉時代でいえば、「武家政治とは何か」という抽象的な始まりではなく、「当時のリーダーはどんな人物でどんな力を持っていたか」といった具体的なところから入っていくイメージです。
3つめの「シンプルに教える」というのは、その言葉通りで、教えるゴールと筋道を明確にしながら、あれもこれもではなく、簡潔に無駄なく教えることを意味します。その際、難しい言葉やあいまいな言葉で濁すのではなく、小学生にもわかる言葉に置き換えて理解を促進するということが3つめのポイントです。ただし、この「小学生にもわかる」というのは、単に語彙を易しくするという意味だけでなく、教える中身の本質をシンプルな言葉に落とし込むという点が重要で、そのためには教える側が本質を見極める必要があることは言うまでもありません。
これら3原則は知識や認知技能を教える際に役立つ原則になりますが、職場において上司や先輩社員が新入社員に教える際にも十分役立つ観点が含まれていると私は感じています。特に新入社員教育では、コーチングよりもティーチングの場面が多くなるため、そのティーチングをいかに効果的に進めるかは、教える側が「誰であっても」「どんな内容であっても」一定の成果が期待できる方法論が大切になってきます。
イントロ3原則は、私が30年前に子どもたちに授業をしていたときにも、一定のクオリティを保つための品質基準として役立ちました。そして30年たった今、社会人向けの動画教材を設計するときにもこの3原則が役立っています。
仮にみなさんが職場で人前に立って新人にレクチャーをするとしたら、どんな方法論で導入を展開するのでしょうか。
イントロ3原則は、みなさんが講義をおこなう上での少しばかりの助けになると思います。
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大人と子どもの学び方には違いがある一方で、多くの共通項があります。その共通項の1つである「主体的に学ばせる動機つけのメソッド(教え方のスキル)」は、管理職の部下育成や専門社員の教え方の向上など、あらゆるビジネスパーソンに役立っております。
細谷幸裕(ホソヤユキヒロ) 株式会社 市進コンサルティング 代表取締役
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