第134回 2025年度税制改正について
2025年度税制改正による所得税の基礎控除の見直しによって、「103万円の壁」が160万円まで引き上げられることになりました。
この改正は、原則として、2025年12月1日に施行され、2025年分以後の所得税について適用されます。また、特定親族特別控除の創設等もされています。
今回は、2025年度税制改正についてみていきます。
<所得の計算方法について>
おさらいも兼ねて所得の計算方法をみていきます。
会社から支払われる給与等の総支給額(通勤費などの非課税所得は除く)- 給与所得控除額等 = 所得
改正前は、「103万円の壁」が存在していました。「103万円」は、所得税の支払いが発生する年収です。
所得税は、所得に対して課税されます。なぜ、103万円がボーダーになっていたかというと、給与所得控除と基礎控除が関係しています。
改正前の給与所得控除額は、給与収入1,625,000円以下の場合は、一律55万円となっていました。また、基礎控除については、改正前は本人の合計所得金額が、2,400万円以下の場合の基礎控除額は、48万円でした。
したがって、給与所得控除額(55万円)+基礎控除額(48万円)=103万円以下であれば所得税は課税されませんでした。
<給与所得控除の見直しについて>
改正後については、給与収入金額1,900,000円以下の場合の給与所得控除額が「65万円」に引き上げられました。
1,900,000円を超える場合については、もともと給与所得控除額が65万円以上だったので、改正は行われません。これまでと同様の計算方法により、給与所得控除額が算出されます。
<基礎控除の見直しについて>
基礎控除は、15種類ある所得控除のうちの一つです。所得控除は、所得税額を計算する上で、社会政策上の要請によるもの、納税者の個人的事情への考慮や最低生活費を保障するためのものなど、税負担面での調整を行う趣旨から設けられています。
2025年の改正によって、基礎控除の金額も変更となっています。所得金額に応じて基礎控除額が変わってきます。具体的な金額については、以下を確認ください。
基礎控除額は2年間に限り上乗せがありますので、表にある通り、合計所得金額によっては2027年以後は再度変更になります。

給与所得控除額(65万円)+基礎控除(95万円)=160万円となるため、160万円以下の年収であれば所得税が課税されないことになります。
たとえば、年収が170万円だった場合を見ていきます。計算がややこしくなってしまいますので、他の扶養控除や社会保険料などの控除はなく、給与所得控除と基礎控除のみが控除される場合で計算します。
所得税率については、所得によって、5%から45%の間で変動する仕組みです。年収が170万円であった場合の所得税率は5%となります。
170万円-160万円=10万円
10万円×5%=5,000円
年収170万円だった場合の所得税額は5,000円となります。
誤解も多いのですが、年収160万円を超えると、すべての年収に課税されるのではなく、超えた分に対して課税されます。今回の改正により、「103万円の壁」がなくなっても、「160万円の壁」になるだけという言われ方もしますが、所得税が発生するという意味では「壁」かもしれませんが、「なだらかな坂が始まる」と理解した方が適切かもしれません。
今回は、基礎控除と給与所得控除の見直しについてみてきました。
税制改正が成立したとの報道もあり、給与計算時の所得税額の変更タイミングについて疑問に思う方もいらっしゃると思います。
今回、改正が行われた点については、2025年11月までの給与の源泉徴収事務に変更は生じません。そのため、2025年12月1日以後に支払う給与からこの改正が適用され、実質的には年末調整から反映されることになります。
12月は、給与計算の担当者は何かと忙しい時期になりますので、誤った計算を行わないように、事前に改正内容を把握しておくことが望まれます。
新設された「特定親族特別控除等」については、次回以降にみていきたいと思います。
- 法改正対策・助成金
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- 人事考課・目標管理
経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。
(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。
川島孝一(カワシマコウイチ) 人事給与アウトソーシングS-PAYCIAL担当顧問

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