第51回 賃金支払いの5原則~その4(最終回)
第48回のコラムから労働基準法第24条で定められた「賃金支払いの5原則」について紹介しています。今回はその最後として「毎月払いの原則」と「一定期日払いの原則」についてみていきたいと思います。
労働基準法第24条の条文については、以下を参照ください。
(労働基準法第24条)
1.賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令もしくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省で定める賃金について確実な支払いの方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときにはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては賃金の一部を控除して支払うことができる。
2.賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省で定める賃金についてはこの限りでない。
<毎月払いの原則とは?>
賃金支払期の間隔が開きすぎると、労働者の生活が不安定になります。それを防止するために定められているのが、「毎月払いの原則」です。
このルールがありますので、原則として毎月1日から月末の間に、少なくとも1回は賃金(給与)を支払わなければなりません。これは年俸制であっても適用されます。
以前、給与を毎月5日に銀行振込で支払っている会社で、「1月5日が日曜日(つまり、1日~5日まですべて金融機関が休み)の場合は12月の最終営業日に振り込めば良いか」と聞かれたことがあります。
一般的には金融機関が休みの場合は給与を前日に支払う会社が多いですが、この場合は12月の最終営業日に1月の給与、2月5日に2月の給与が支払われることになり、結果的に1月に支払われた賃金がなくなってしまいます。したがって、このようなケースの場合は、賃金の支払日を繰り下げて、「1月6日」に支払うのが正しいということになります。
<一定期日払いの原則とは?>
「一定期日払いの原則」は、支払日が不規則だと労働者の計画的生活が困難になるという理由で設けられています。
一定期日というと、毎月「15日」や、「25日」といった暦日を指定することをイメージするかもしれませんが、法律はそこまでは求めていません。
たとえば、月給であれば「月の末日」、週給であれば「土曜日」のように、賃金(給与)を支払う日が特定できれば「一定期日払いの原則」を満たしていることになります。
ただし、「毎月第4金曜日」といった定め方は、実際には22日~28日までの幅があるので、一定期日払いの原則に違反しています。
それでは、支払日が休日になる場合はどうなるでしょうか。休日の場合は、支払日の「繰り上げ」または「繰り下げ」をしても、一定期日払いの原則には違反しないものとされます。
「繰り下げ」はあまり聞かないかもしれませんが、法的には可能です。ただし、「毎月払いの原則」がありますので、末日に支払うことにしている会社では「繰り下げ」は不可となります。
「繰り上げ」「繰り下げ」のいずれにするかは、就業規則等で定めておく必要があります。なお、「通常は繰り上げだが、特殊なケース(たとえば支払日が3日以上繰り上がる場合)は繰り下げ」と定めることも可能です。
<毎月払い、一定期日払いの原則の例外について>
「毎月払い」、「一定期日払い」の原則にも例外があります。次の賃金については、この2つの原則がどちらも適用されません。
1)臨時に支払われる賃金
2)賞与
3)1ヶ月を超える期間の出勤成績によって支給される精勤手当
4)1ヶ月を超える一定期間の継続勤務に対して支給される勤続手当
5)1ヶ月を超える期間にわたる事由によって算定される奨励加給又は能率手当
これらの賃金は、毎月かならず金額が算定されるわけではありませんので、「毎月払い」と「一定期日払い」の原則からは除外されています。
裏を返せば、「毎月払い」と「一定期日払い」の原則は「給与」に適用されると考えていただければ良いでしょう。
会社が従業員に賃金を支払う上での「5つの原則」について、第48回のコラムから紹介をしてきました。
基本的なことなので見落としがちですが、レアケースが発生した際は、念のため「賃金支払いの5原則」に違反していないかを確認してみてください。
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経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。
(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。
川島孝一(カワシマコウイチ) 人事給与アウトソーシングS-PAYCIAL担当顧問
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